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リアルわたしエクスプレス
其ノ六
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光太郎とは知り合って一年にも満たないが、たまに二人で出かけたりもする。とはいっても、大抵は適当に時間を潰すだけで、いつもこれといった目的は特にないんだが。
光太郎との待ち合わせ場所は京都駅のJR改札口前。そこで合流したのちに、大阪へと下る予定。光太郎はどちらかと言えば人当たりが良く、友達も多そうなタイプだが、どうして休日にまで、こうして蘇芳に付き合ってくれるのかはよく分からない。
待ち合わせ場所に着くと、先に来ていた光太郎の隣に、なぜかいつもはいないはずのもう一人の姿があった。
「おっす、蘇芳先輩!」
ぶかぶかの学ランに身を包み、額にはハチマキを巻いた江野沢千絵。前回合った時とは異なり、髪は後ろで束ねられている。
蘇芳が怪訝そうな顔を見せると、江野沢は慌てて表情を繕った。
「こんにちは。今日は一日、よろしくお願いします」
「どうしてお前がここにいるんだ?」
「本日は、蘇芳先輩とご一緒させていただきたく参りました!」
面に似合わぬ気合の入った言いぐさと、力強く握られた拳。やけにやる気な彼女に、蘇芳も困り果てる。光太郎の方へと目を向けると、申し訳なさそうに拝み手をしていた。
「わりぃ。どうしてもってねだられたら断れなくて」
どうやら、光太郎が連れてきたらしい。
「蘇芳先輩のためなら、どんなことでも命に代えて遂行させていただきます。何なりとお申し付けください」
舎弟のごとき様相を見せる江野沢。それが、強面の蘇芳に取り入ろうとした結果だということは容易に想像できた。先日断ったはずの弟子入りの件を、彼女は未だに諦めていないらしい。
「はぁ、分かったよ。分かったから、もう少し普通にしてくれないか」
「普通にしてたら、ついていってもいいですか?」
光太郎にアポを取ってまで蘇芳の前に現れたんだ。おそらく、ここで断ったとしても、どの道ついてくる気だろう。なら、抵抗するだけ無駄でしかない。
「もう好きにしてくれ」
諦め混じりに告げると、江野沢の表情は一気に晴れた。
「はいっ!」
蘇芳たちはJR京都線を利用し大阪駅まで下った。大阪に着いてからは、思いつくままに街を散策した。目についた店に入って服を見たり、適当に入った映画館で話題の映画を見たり、たまたま見つけた有名店でたこ焼きを食べたり。江野沢の服装が悪目立ちしていたせいで、やけに視線を浴びているような気はしたが、彼女の楽しそうな顔に免じて今回は大目に見ることにした。
学校で暇を持て余している時とは違い、時間が経つのが思いのほか早く感じる。集合が昼過ぎだったせいか、早くも陽は傾き始めていた。
三人はいったん腰を落ち着けようと、近くの喫茶店へと入店した。エプロン姿の若い女性店員が蘇芳たちを出迎える。土曜日だからか、店内はかなり込んでいて、埋まっている席も多かった。
――俺、ちょっとトイレ行ってくるから、先頼んどいて。俺はホットコーヒーな。
光太郎がお腹を押さえて奥へと消えていく。
江野沢が窓際がいいというので、たまたま空いていた一番奥の席を陣取った。二人は机を挟んで対面に座る。
店員が水を持ってきてくれたタイミングで、コーヒー二つとカフェラテを注文した。江野沢は甘いものが好きらしく、あんみつも一緒に頼んでいた。
「そういえば蘇芳さんって、彼女とかいるんですか?」
前振りもなかったので、虚を突かれた。
「唐突だな、おい」
「そんなことないですよ。仲良くなるには恋バナが一番。世界共通の常識ですよ」
「そんな常識、今初めて知った」
「で、どうなんですか?」
江野沢はガツガツと切り込んでくる。やけに下世話に突っ込んでくるから、いやに鬱陶しい。
「いや、いねぇけど」
「そうですよね。蘇芳さんってなんか取っつきにくいイメージありますもん。なんかすごい尖ってますもん」
「悪かったな」
「いやほめ言葉ですよ。実際、そういうタイプが好きな人もいると思いますよ。ただ、蘇芳さんの場合はすぐに屋上に行っちゃうから、なかなか接点が持てないだけで」
江野沢の表情は今日一番生き生きとしていた。初めて出会った時や、今日最初に顔を合わせた時と比較すると、緊張が解けて自然な雰囲気を保っている。
「江野沢は、こういう話題が好きなのか?」
「もちろんです。恋バナは三度のご飯よりも大好きですよ。聞きますか? わたしが入手した、うちの学校の恋愛事情」
うれしそうにそう言うと、江野沢は校内のゴシップ話を惜しみもなく暴露してくれた。クラスの誰々と生徒会長が付き合っているとか、陸上部のキャプテンとバスケ部の一年生が嵐山花灯路のイルミネーション前でキスしてたとか、吹奏楽部の二年と卓球部の三年が体育倉庫裏でチョメチョメしていたとか。初々しい話もそこそこに、江野沢のイメージからはかけ離れた、かなり生々しい情報を惜しめもなく語っていたから、若干引いた。
「よくそんなに知ってるな。女子ってのは、みんなこうなのか?」
「そうですよ。みんな恋バナを主食に生きてるようなところはありますからね。わたしなんてむしろ、あまり詳しくない方で……」
女子の底知れなさを蘇芳は改めて実感させられた。
あいつら、男たちのいない所では何してるか分かんねぇな。
「蘇芳さんは、わたしを見てどう思いますか?」
「どうって、何だよ急に」
「わたしのイメージですよ。何となく聞いてみたいんです。思ったままでいいので教えてください」
くりくりとした丸い目で見つめてくる。
やけに瞳を輝かせて、期待を寄せてくるから、答えてやらなければいけない気がしてくる。
蘇芳は江野沢と過ごした短い時間を思い返した。
「最近会ったばっかだからまだなんとも言えないけど、最初はすごくポンコツそうなやつだなと思ってたら、いきなり学ランにハチマキで登場しやがったから、かなり、やばいやつだなって」
「ちょ、ちょっと蘇芳さん。わたしのイメージひど過ぎません」
江野沢は慌てたように両手を広げて上下に振っていた。
「実際そう思ったんだから仕方ねぇだろ。おまけに、なんか空回りしてる節があるし。でも実際話してみると恋バナ好きの普通の女子だったな。ただ、びっくりするくらい下世話で、他人の色恋に貪欲だったけど」
「結局ほとんど悪口じゃないですか」
店員が注文しておいた飲み物とあんみつを運んでくる。光太郎はまだ帰ってこない。
「まあでも、少し安心しました。……わたし、蘇芳さんの前だと、なぜだか分からないですけど割と自然体でいられるみたいで、結構素の自分を出しちゃってるのかもしれません。でも、わたし学校では、真面目で、優しくて、おしとやかで、上品なイメージで通ってるんですよ。自分で言うのもなんですが、箱入りのお嬢様で他の人とは別の世界に住んでいる高尚な人種だと思わたしてるんです。もちろん、蘇芳さんの見た通り、実際は全然そんなことないんですけどね」
イメージと真逆だったので若干驚きはした。
ただ、確かに言われてみると、言葉遣いがですます調であったり、飲み食いするときの仕草がやけに上品だったりと、納得のいく部分は節々に見られた。それまで全然そんな風に見えていなかったけれど、今日半日一緒に過ごしてみて、何となく分からなくもないように思える。
また、同じ学校に通っていて、同じ府に住んでいるのに、彼女の語りはどこか自分とは遠い所の話に感じられた。蘇芳が今までも、そしておそらくこれからも体験することがないような遠い世界のことのよう。
「へぇ。俺と真逆だな。俺は逆に周りから腫れ物扱いされてるから、そういうのはちょっとうらやましいぜ」
「そう言ってもらえるのはありがたいんですけど……」
若干うつむいた江野沢はどこか虚ろ気に、目の前に置かれたカフェラテを見つめていた。
「わたしは、正直それをあまりよしとはしていません」
カフェラテの泡がぷつぷつと弾けていく。
「わたしがお嬢様のような印象を持たれているのは、普段からそういう風に振る舞っているからなんです。わたしは昔から周りの大人たちから、人に優しくありなさい、先生の言うことを聞いて真面目に生きなさい、女の子ならおしとやかに上品に振る舞いなさい、と教えられて育ちました。もちろん、わたしも子供でしたから、そのことに何の疑いもなく、そういう風に振る舞うのが当たり前なんだと思ってましたし、そうすれば立派な人間になれるんだと勝手に信じていました。確かに、他人から立派だと言われるような人間にはなれたかもしれません。少なくとも周りからはそう評価されています。でも最近、段々それが重荷になってきてしまって」
江野沢の大きな瞳がこちらを向く。
「周りからの期待が、つらいんです。人からお嬢様みたいって思われてしまっているから、ついついそれに答えようとしてしまって。もちろん、そんなことやめてしまえばいいじゃないかと言われてしまえばそれまでなんですが、それだと期待外れだって落胆されるんじゃないかと思えてくるんです。もしそうなってしまった時の相手の顔を想像すると、なんだか申し訳ないというか、ものすごく怖くなるんです」
江野沢の気持ちが蘇芳には難解だった。蘇芳自身あまり周りに期待されてこなかったからかもしれない。
「正直、俺にはその感覚が分からないからなんとも言えないんだけどよ、もし期待を裏切ったら、そいつらとの関係はその後どうなるんだろうな」
「多分、何も変わらないと思います。でも、頭で分かってはいても、どうしても期待されてない自分を出すことに躊躇いがあるんです」
「つまり、江野沢は期待されてない自分を出したいって思ってるってことか? じゃないと、そこで悩まねぇよな」
「人って自分の欠点とか他人の噂話とか、何か踏み込んだ部分を共有して仲良くなるじゃないですか。でも、わたしが本来の自分を見せてしまうと、それはみんなが抱いているわたしのイメージとは違ってきちゃうんですよね。だからいつも一歩引いたところで立ち止まるしかないんです。そのせいで、いろんな人と社交辞令的には仲良くできても、本当の意味での友達って作れないんです」
江野沢は勢いよく立ち上がる。蘇芳に向かって前のめりで、向けられた眼光は何かを強く訴えかけているように瞬きをする。
「だから、わたしはそんな自分を変えたいんです。周りの期待とかを気にせずに生きて、いろいろな人ともっと深くかかわりたいんです。だから、他人に迎合することなく自分の道を行く蘇芳さんはわたしにとっての憧れで、わたしも蘇芳さんみたいに振る舞えるようになりたくて」
彼女が蘇芳に接触してきた意図がようやく分かったような気がした。
「だから、俺に弟子入りしたいだなんて言いだしたわけか
」
頷く江野沢。彼女はおそらく、蘇芳と触れ合えば、殻を破れない自分を変えられると本気で思っているらしい。
「でもな、仮に俺に弟子入りしたとして、俺みたいな人間になれるわけじゃないだろ。それに俺みたいな人間になったとして、江野沢の悩みは解決するのか? そんなことするくらいなら、今、俺にしてくれたような話を友達に直接してみた方がいいんじゃないか? 本物の江野沢を受け入れてくれる人はたくさんいると思うぞ。もちろん、全員がそうだとは限らないけれど、受け入れてくれなければ無理に仲良くする必要もないわけだしな」
江野沢はその場にゆっくりと座る。
「そんなこと……できません」
それはまるで、嵐の前の静けさのように。
湧水が緩慢とダムに流れ込む。そして、
そして、決壊する。
「そんなことできませんよ。わたしだって、蘇芳さんが言ってくれたみたいに本当の自分を伝えようとしたことくらいあります。でも、どうしてもできないんです。蘇芳さんにはなぜだか気楽に話せちゃってますけど、普段はそういうわけにはいかないんです。わたしにとって、素の自分を出すことはそれくらい大変なことで、だからこそ自分ではどうしようもないんです。だから、蘇芳さんを頼ってるんじゃないですか。わたしは自分と対極の自分を手に入れたいんです。対極の自分を手に入れられれば、素を出すことくらい造作もなくなると思うんです。そのために、わたしと対極にいる蘇芳さんに弟子にしてもらいたいって思ってるんです。だから、お願いします」
まくし立てるように投げられた言葉。蘇芳は呑まれたくなくて、一度コーヒーに口をつけた。
「まぁ、言いたいことは分かるけどよ、対極の自分を手に入れるより素の自分を出す方が簡単じゃねぇのか。少なくとも、俺にはそう思えて仕方ねぇ」
「普通の人がそう考えるってことは、わたしも理解しています。でも、わたしにとってはそうじゃないんです」
指摘してみるも効果はないようで、表情に揺るぎはない。多分、蘇芳が今すぐに思いつくようなことは、すでに考えつくしているのだろう。小動物のようなかわいらしい相好の裏に、何を言っても聞く耳を持ってくれそうにない頑固さが垣間見える。
「理解してもらえるとは思っていません。でも、こういう人もいるってことは知って欲しいです。……いや……でも、それって理解してくれってことなんじゃ……? いやでも理解するってことと知ってもらうってことは別のことで、ん? 一緒か、 ん? あぁぁぁ、もうよく分からなくなっちゃいました。とりあえずあんみつ食べます」
江野沢は手元のスプーンを握ると、ガツガツとあんみつを頬張った。自棄になったように、勢いよく掻きこむものだから、あんことか生クリームが顔中に飛び散ってしまっていた。彼女が自分の口から語った他者評価とはまるで結びつかない。
仕方ないから、蘇芳は備え付けの手拭き紙を二三枚取ると、彼女の口元を拭いてやる。
「ついてるぞ」
「へぇっ?」
触れた頬は、もちもちしていて柔らかい。蘇芳が拭ってやっている間も、江野沢は咀嚼を止める気配はなく、むしろ、何のこと? とでも言いたそうな表情をしていて呆れてしまう。
「お前、意外と食べ方下手なんだな」
「下手なんかじゃありませんよ。今日はたまたまです」
膨らんだ頬は、怒っているからなのか、あんみつが詰まっているせいなのかは分からない。
当初は正直、江野沢のことを変なやつで患わしいなと思っていた。けれどそれが、不器用なりにも自分を変えようと、もがいている結果だと分かって少しだけ見直した。気合の入った人間は好きだし応援したくなる。江野沢に共感するわけではないが、一生懸命殻を破ろうとする彼女の姿を見ていると、蘇芳を訪ねてきた彼女に一方的に帰れを促すのもどうかと思えてくる。仕方ないから、少しだけ付き合ってやってもいいかもしれない。そのうち満足するときがやってくるだろう。気が済むまで一緒にいてやるのも悪くない。
蘇芳は再び生クリームを頬につけた彼女の顔を見ながらそう思った。
光太郎との待ち合わせ場所は京都駅のJR改札口前。そこで合流したのちに、大阪へと下る予定。光太郎はどちらかと言えば人当たりが良く、友達も多そうなタイプだが、どうして休日にまで、こうして蘇芳に付き合ってくれるのかはよく分からない。
待ち合わせ場所に着くと、先に来ていた光太郎の隣に、なぜかいつもはいないはずのもう一人の姿があった。
「おっす、蘇芳先輩!」
ぶかぶかの学ランに身を包み、額にはハチマキを巻いた江野沢千絵。前回合った時とは異なり、髪は後ろで束ねられている。
蘇芳が怪訝そうな顔を見せると、江野沢は慌てて表情を繕った。
「こんにちは。今日は一日、よろしくお願いします」
「どうしてお前がここにいるんだ?」
「本日は、蘇芳先輩とご一緒させていただきたく参りました!」
面に似合わぬ気合の入った言いぐさと、力強く握られた拳。やけにやる気な彼女に、蘇芳も困り果てる。光太郎の方へと目を向けると、申し訳なさそうに拝み手をしていた。
「わりぃ。どうしてもってねだられたら断れなくて」
どうやら、光太郎が連れてきたらしい。
「蘇芳先輩のためなら、どんなことでも命に代えて遂行させていただきます。何なりとお申し付けください」
舎弟のごとき様相を見せる江野沢。それが、強面の蘇芳に取り入ろうとした結果だということは容易に想像できた。先日断ったはずの弟子入りの件を、彼女は未だに諦めていないらしい。
「はぁ、分かったよ。分かったから、もう少し普通にしてくれないか」
「普通にしてたら、ついていってもいいですか?」
光太郎にアポを取ってまで蘇芳の前に現れたんだ。おそらく、ここで断ったとしても、どの道ついてくる気だろう。なら、抵抗するだけ無駄でしかない。
「もう好きにしてくれ」
諦め混じりに告げると、江野沢の表情は一気に晴れた。
「はいっ!」
蘇芳たちはJR京都線を利用し大阪駅まで下った。大阪に着いてからは、思いつくままに街を散策した。目についた店に入って服を見たり、適当に入った映画館で話題の映画を見たり、たまたま見つけた有名店でたこ焼きを食べたり。江野沢の服装が悪目立ちしていたせいで、やけに視線を浴びているような気はしたが、彼女の楽しそうな顔に免じて今回は大目に見ることにした。
学校で暇を持て余している時とは違い、時間が経つのが思いのほか早く感じる。集合が昼過ぎだったせいか、早くも陽は傾き始めていた。
三人はいったん腰を落ち着けようと、近くの喫茶店へと入店した。エプロン姿の若い女性店員が蘇芳たちを出迎える。土曜日だからか、店内はかなり込んでいて、埋まっている席も多かった。
――俺、ちょっとトイレ行ってくるから、先頼んどいて。俺はホットコーヒーな。
光太郎がお腹を押さえて奥へと消えていく。
江野沢が窓際がいいというので、たまたま空いていた一番奥の席を陣取った。二人は机を挟んで対面に座る。
店員が水を持ってきてくれたタイミングで、コーヒー二つとカフェラテを注文した。江野沢は甘いものが好きらしく、あんみつも一緒に頼んでいた。
「そういえば蘇芳さんって、彼女とかいるんですか?」
前振りもなかったので、虚を突かれた。
「唐突だな、おい」
「そんなことないですよ。仲良くなるには恋バナが一番。世界共通の常識ですよ」
「そんな常識、今初めて知った」
「で、どうなんですか?」
江野沢はガツガツと切り込んでくる。やけに下世話に突っ込んでくるから、いやに鬱陶しい。
「いや、いねぇけど」
「そうですよね。蘇芳さんってなんか取っつきにくいイメージありますもん。なんかすごい尖ってますもん」
「悪かったな」
「いやほめ言葉ですよ。実際、そういうタイプが好きな人もいると思いますよ。ただ、蘇芳さんの場合はすぐに屋上に行っちゃうから、なかなか接点が持てないだけで」
江野沢の表情は今日一番生き生きとしていた。初めて出会った時や、今日最初に顔を合わせた時と比較すると、緊張が解けて自然な雰囲気を保っている。
「江野沢は、こういう話題が好きなのか?」
「もちろんです。恋バナは三度のご飯よりも大好きですよ。聞きますか? わたしが入手した、うちの学校の恋愛事情」
うれしそうにそう言うと、江野沢は校内のゴシップ話を惜しみもなく暴露してくれた。クラスの誰々と生徒会長が付き合っているとか、陸上部のキャプテンとバスケ部の一年生が嵐山花灯路のイルミネーション前でキスしてたとか、吹奏楽部の二年と卓球部の三年が体育倉庫裏でチョメチョメしていたとか。初々しい話もそこそこに、江野沢のイメージからはかけ離れた、かなり生々しい情報を惜しめもなく語っていたから、若干引いた。
「よくそんなに知ってるな。女子ってのは、みんなこうなのか?」
「そうですよ。みんな恋バナを主食に生きてるようなところはありますからね。わたしなんてむしろ、あまり詳しくない方で……」
女子の底知れなさを蘇芳は改めて実感させられた。
あいつら、男たちのいない所では何してるか分かんねぇな。
「蘇芳さんは、わたしを見てどう思いますか?」
「どうって、何だよ急に」
「わたしのイメージですよ。何となく聞いてみたいんです。思ったままでいいので教えてください」
くりくりとした丸い目で見つめてくる。
やけに瞳を輝かせて、期待を寄せてくるから、答えてやらなければいけない気がしてくる。
蘇芳は江野沢と過ごした短い時間を思い返した。
「最近会ったばっかだからまだなんとも言えないけど、最初はすごくポンコツそうなやつだなと思ってたら、いきなり学ランにハチマキで登場しやがったから、かなり、やばいやつだなって」
「ちょ、ちょっと蘇芳さん。わたしのイメージひど過ぎません」
江野沢は慌てたように両手を広げて上下に振っていた。
「実際そう思ったんだから仕方ねぇだろ。おまけに、なんか空回りしてる節があるし。でも実際話してみると恋バナ好きの普通の女子だったな。ただ、びっくりするくらい下世話で、他人の色恋に貪欲だったけど」
「結局ほとんど悪口じゃないですか」
店員が注文しておいた飲み物とあんみつを運んでくる。光太郎はまだ帰ってこない。
「まあでも、少し安心しました。……わたし、蘇芳さんの前だと、なぜだか分からないですけど割と自然体でいられるみたいで、結構素の自分を出しちゃってるのかもしれません。でも、わたし学校では、真面目で、優しくて、おしとやかで、上品なイメージで通ってるんですよ。自分で言うのもなんですが、箱入りのお嬢様で他の人とは別の世界に住んでいる高尚な人種だと思わたしてるんです。もちろん、蘇芳さんの見た通り、実際は全然そんなことないんですけどね」
イメージと真逆だったので若干驚きはした。
ただ、確かに言われてみると、言葉遣いがですます調であったり、飲み食いするときの仕草がやけに上品だったりと、納得のいく部分は節々に見られた。それまで全然そんな風に見えていなかったけれど、今日半日一緒に過ごしてみて、何となく分からなくもないように思える。
また、同じ学校に通っていて、同じ府に住んでいるのに、彼女の語りはどこか自分とは遠い所の話に感じられた。蘇芳が今までも、そしておそらくこれからも体験することがないような遠い世界のことのよう。
「へぇ。俺と真逆だな。俺は逆に周りから腫れ物扱いされてるから、そういうのはちょっとうらやましいぜ」
「そう言ってもらえるのはありがたいんですけど……」
若干うつむいた江野沢はどこか虚ろ気に、目の前に置かれたカフェラテを見つめていた。
「わたしは、正直それをあまりよしとはしていません」
カフェラテの泡がぷつぷつと弾けていく。
「わたしがお嬢様のような印象を持たれているのは、普段からそういう風に振る舞っているからなんです。わたしは昔から周りの大人たちから、人に優しくありなさい、先生の言うことを聞いて真面目に生きなさい、女の子ならおしとやかに上品に振る舞いなさい、と教えられて育ちました。もちろん、わたしも子供でしたから、そのことに何の疑いもなく、そういう風に振る舞うのが当たり前なんだと思ってましたし、そうすれば立派な人間になれるんだと勝手に信じていました。確かに、他人から立派だと言われるような人間にはなれたかもしれません。少なくとも周りからはそう評価されています。でも最近、段々それが重荷になってきてしまって」
江野沢の大きな瞳がこちらを向く。
「周りからの期待が、つらいんです。人からお嬢様みたいって思われてしまっているから、ついついそれに答えようとしてしまって。もちろん、そんなことやめてしまえばいいじゃないかと言われてしまえばそれまでなんですが、それだと期待外れだって落胆されるんじゃないかと思えてくるんです。もしそうなってしまった時の相手の顔を想像すると、なんだか申し訳ないというか、ものすごく怖くなるんです」
江野沢の気持ちが蘇芳には難解だった。蘇芳自身あまり周りに期待されてこなかったからかもしれない。
「正直、俺にはその感覚が分からないからなんとも言えないんだけどよ、もし期待を裏切ったら、そいつらとの関係はその後どうなるんだろうな」
「多分、何も変わらないと思います。でも、頭で分かってはいても、どうしても期待されてない自分を出すことに躊躇いがあるんです」
「つまり、江野沢は期待されてない自分を出したいって思ってるってことか? じゃないと、そこで悩まねぇよな」
「人って自分の欠点とか他人の噂話とか、何か踏み込んだ部分を共有して仲良くなるじゃないですか。でも、わたしが本来の自分を見せてしまうと、それはみんなが抱いているわたしのイメージとは違ってきちゃうんですよね。だからいつも一歩引いたところで立ち止まるしかないんです。そのせいで、いろんな人と社交辞令的には仲良くできても、本当の意味での友達って作れないんです」
江野沢は勢いよく立ち上がる。蘇芳に向かって前のめりで、向けられた眼光は何かを強く訴えかけているように瞬きをする。
「だから、わたしはそんな自分を変えたいんです。周りの期待とかを気にせずに生きて、いろいろな人ともっと深くかかわりたいんです。だから、他人に迎合することなく自分の道を行く蘇芳さんはわたしにとっての憧れで、わたしも蘇芳さんみたいに振る舞えるようになりたくて」
彼女が蘇芳に接触してきた意図がようやく分かったような気がした。
「だから、俺に弟子入りしたいだなんて言いだしたわけか
」
頷く江野沢。彼女はおそらく、蘇芳と触れ合えば、殻を破れない自分を変えられると本気で思っているらしい。
「でもな、仮に俺に弟子入りしたとして、俺みたいな人間になれるわけじゃないだろ。それに俺みたいな人間になったとして、江野沢の悩みは解決するのか? そんなことするくらいなら、今、俺にしてくれたような話を友達に直接してみた方がいいんじゃないか? 本物の江野沢を受け入れてくれる人はたくさんいると思うぞ。もちろん、全員がそうだとは限らないけれど、受け入れてくれなければ無理に仲良くする必要もないわけだしな」
江野沢はその場にゆっくりと座る。
「そんなこと……できません」
それはまるで、嵐の前の静けさのように。
湧水が緩慢とダムに流れ込む。そして、
そして、決壊する。
「そんなことできませんよ。わたしだって、蘇芳さんが言ってくれたみたいに本当の自分を伝えようとしたことくらいあります。でも、どうしてもできないんです。蘇芳さんにはなぜだか気楽に話せちゃってますけど、普段はそういうわけにはいかないんです。わたしにとって、素の自分を出すことはそれくらい大変なことで、だからこそ自分ではどうしようもないんです。だから、蘇芳さんを頼ってるんじゃないですか。わたしは自分と対極の自分を手に入れたいんです。対極の自分を手に入れられれば、素を出すことくらい造作もなくなると思うんです。そのために、わたしと対極にいる蘇芳さんに弟子にしてもらいたいって思ってるんです。だから、お願いします」
まくし立てるように投げられた言葉。蘇芳は呑まれたくなくて、一度コーヒーに口をつけた。
「まぁ、言いたいことは分かるけどよ、対極の自分を手に入れるより素の自分を出す方が簡単じゃねぇのか。少なくとも、俺にはそう思えて仕方ねぇ」
「普通の人がそう考えるってことは、わたしも理解しています。でも、わたしにとってはそうじゃないんです」
指摘してみるも効果はないようで、表情に揺るぎはない。多分、蘇芳が今すぐに思いつくようなことは、すでに考えつくしているのだろう。小動物のようなかわいらしい相好の裏に、何を言っても聞く耳を持ってくれそうにない頑固さが垣間見える。
「理解してもらえるとは思っていません。でも、こういう人もいるってことは知って欲しいです。……いや……でも、それって理解してくれってことなんじゃ……? いやでも理解するってことと知ってもらうってことは別のことで、ん? 一緒か、 ん? あぁぁぁ、もうよく分からなくなっちゃいました。とりあえずあんみつ食べます」
江野沢は手元のスプーンを握ると、ガツガツとあんみつを頬張った。自棄になったように、勢いよく掻きこむものだから、あんことか生クリームが顔中に飛び散ってしまっていた。彼女が自分の口から語った他者評価とはまるで結びつかない。
仕方ないから、蘇芳は備え付けの手拭き紙を二三枚取ると、彼女の口元を拭いてやる。
「ついてるぞ」
「へぇっ?」
触れた頬は、もちもちしていて柔らかい。蘇芳が拭ってやっている間も、江野沢は咀嚼を止める気配はなく、むしろ、何のこと? とでも言いたそうな表情をしていて呆れてしまう。
「お前、意外と食べ方下手なんだな」
「下手なんかじゃありませんよ。今日はたまたまです」
膨らんだ頬は、怒っているからなのか、あんみつが詰まっているせいなのかは分からない。
当初は正直、江野沢のことを変なやつで患わしいなと思っていた。けれどそれが、不器用なりにも自分を変えようと、もがいている結果だと分かって少しだけ見直した。気合の入った人間は好きだし応援したくなる。江野沢に共感するわけではないが、一生懸命殻を破ろうとする彼女の姿を見ていると、蘇芳を訪ねてきた彼女に一方的に帰れを促すのもどうかと思えてくる。仕方ないから、少しだけ付き合ってやってもいいかもしれない。そのうち満足するときがやってくるだろう。気が済むまで一緒にいてやるのも悪くない。
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社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
『【朗報】ボッチの僕、実は世界一の財閥の御曹司だった。〜18年の庶民修行を終えた瞬間、美少女11人が「専属秘書」として溺愛してくる件〜』
まさき
青春
「あんたみたいなボッチ、一生底辺のまま卒業ね」
学園の女王、高飛車な生徒会長、そして冷徹な美少女たち……。
天涯孤独でボッチな僕、佐藤(※苗字のみ使用)は、彼女たちからゴミを見るような目で見られ、虐げられる日々を送っていた。
だが、彼らには決して言えない秘密があった。
それは、僕が世界一の資産を誇る**『世界最強財閥』の唯一の跡継ぎであること。
そして、18歳になるまで一切の援助を受けずに生き抜く【庶民修行】**の最中であること。
そして運命の誕生日、午前0時。
修行終了を告げる通知がスマホに届いた瞬間、僕の世界は一変する。
「おめでとうございます、お坊ちゃま。これより『11人の専属秘書候補』による、真の主従関係を開始いたします」
昨日まで僕を蔑んでいた学園の美少女たちが、手のひらを返して膝をつく。
彼女たちの正体は、財閥が僕のために選りすぐった、愛が重すぎるエリート秘書たちだった――。
「ずっとおそばでお仕えしたかったんです……」
「昨日までの暴言は、修行を完遂させるための演技。今日からは全身全霊で甘やかさせていただきますね?」
24時間体制の過保護な奉仕、競い合うような求愛、そして財力による圧倒的なざまぁ。
ボッチだった僕の日常は、11人の美女たちに全肯定され、溺愛し尽くされる甘すぎる生活へと塗り替えられていく。
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同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
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