だから僕は男の娘じゃないっ!

飛永英斗

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生徒会長学校侵略編

決戦前の準備

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 雲が浮かんでいる様子を見続けて、約十分が経過。

 屋上には、心地よい風が肌に染み渡り、制服の中まで涼しくなる。そして、町全体が見渡せるのは、幾つになっても気分が上がるものだ。



 「…爆弾なんて隅まで探してもなかったし。会長のは嘘だったのかな」

 「な、なかっただけマシなんじゃない? もしかしたら、実は爆弾は一つだけしかなくて、それを言い忘れてしまったのかもしれないし」

 「そんな大切なことを忘れるなんて、相当焦ってないと言えない。でも、それも一理あるのが困る」


 
 プラムはこんな時でも焦りを見せないで、冷淡な表情で街を見る。学校が静かだと、町全体も寂しそうに見える。活気の言い学校と言われていたが、こんなのでは町の自慢が一つ消えてしまう。

 まあ、本来学校は学ぶためのものだから、これがあるべき姿なのかもしれないけど、あんなやり方は良くない。目を覚まさせないといけないよね。



 「…そろそろ、テネダッドD-83の効果が出始めたんじゃない?」

 「いや、至って普通に感じるけど…」

 「なら、ちょっと試してみる?」



 そう言うとプラムは僕と距離を置いて、片手に力を込めた後、刃渡り五十㎝程の刀を生成した。そして僕に向かって走って来…いやいや待って!!


 「アンタも刀をイメージして手に力を込めて。テネダッドD-83があれば一瞬で出来上がる」

 「う、うん!」


 プラムに言われた通り、眼を閉じて、刀を連想する。前にラノベで呼んだあの…!!


 気が付いたら僕は、片手に刃渡り七十㎝程の刀を握っていた。そしてプラムが振り下ろした刀を素早く受け流す。鈍い音が空気を伝って振動する。


 「…そんな感じ。いも天ビームは一気にダークパワーを消耗するから、普段はそれで戦うといいよ」

 「あ、ありがとう、プラム」

 「ちゃんとカキナにも薬が効いているのが分かった事だし、お互いいざという時まで体力を温存させておこっか」


 
 そしてまた、町を見渡した。再び風が吹き、汗を伝って体に染み込んでくる。

 左には風で髪をなびかせたプラムが、疲れも見せずに冷淡な表情を続けている。確か昨日の夜から活動しているんだっけ、体力どうなってんの…。



 「カキナは柔軟性が高いんだ。呼び捨てやタメ語で話してって言ってもすぐに応じてくれるし」

 「周りが変わった人しか居ないからね。自然とそうなってくるものだよ。…でも、本当にタメ語で話していいの? 僕の方が後輩なのに」

 「…まぁぶっちゃけた話、私学校にあんまり来てないから、友達もそんなに居ないんだよね。だから私は後輩だろうと友だちみたいに接してほしいの。単純な理由でしょ?」


 確かに、学校でプラムを見かけたことはあまりないかもしれない。気にしてなかっただけなのかもしれないけど、家の事情とかで学校にあまり来れないのかな…。

 ──何か変な空気にしちゃった。僕から何か話を持ち掛けなきゃな…えっと…。



 「そ、そうだ。音楽でも聴かない? 僕、いつも有線イヤホンを胸ポケットに入れてるんだ。戦いの前にリラックスさせようよ。はい、これ片耳に付けて」

 「ふぇ、え…えぇ?」

 「──そんなに驚いてどうしたの? いちごもびわも、メロくんだってやるし、変な事じゃなくない?」
 
 「メロも!? 何でメロがそんな…まぁ、それなら…ありがと」



 プラムは何故か恥ずかしそうにイヤホンを受け取り、片耳に装着した。硬かった表情も少し和らいできたようにも見える。今流行りの音楽、いちごから教えてもらったけど、プラムは好きかなこういうの…。


 「…面白いね、カキナは」

 「え、何?」

 「何でもない。…結構いい曲だね、これ」


 何かを隠すような声色で、プラムはそう言った。そしてまた、屋上で風がスーッと通り過ぎた。



 ※


 同時刻。


 家庭科室内にいる私、螺風らふうランスは、ただ待つことしか出来ませんでした。何気に名前を公表するのは初めてかもしれません。

 生徒の皆さん方が無事かどうか、待つ者も辛いものです。何かしてあげたいけれども、私の役目はこの家庭科室で待つ事。これを放棄してしまっては皆様に迷惑が掛かる可能性が…。




 「教頭はいるか。荷物だ」

 「貴方は……!!」

 

 開く素振りも見せなかったドアが急に開いたかと思うと、その先に居たのは、イチジク団の団長でした。肩にはなんと、オデンさんを背負っています。この二人が何故…?


 「偶然階段を通りかかった時に、倒れているのを発見してだな、通行の邪魔にならないようにわざわざ届けに来てやったぞ。爆発する際に危険物が居ては困るからな」

 「か、感謝しま…そういえば、貴方は会長のお兄さんでしたね。今までの行動を見るに何か不可解な点等がありましたか?」

 「そんなもの知らん。アイツとは口も開いてなければ顔も合わせないからな…だが、アイツの部屋でこんな物を見つけた」


 オデンさんを調理台の上に乗せた後、ポケットからUSBを取り出し、私の方に向けて投げました。すかさず掴みます。…USBよりも、蛇口の下に顔を向けられているオデンさんの方が気になりますが…。


 「それは、妹が作った脳波強制学習マシンのデータがコピーされている物USBだ」

 「だった…とは?」

 「私がこう見えても頭がいい。周波で洗脳された人間を元に戻すプログラムに書き換えた。人の心を書き換えてまで侵略しようとするなんて、私の美学に反する…まあ、今話す事ではない」


 …そういえば彼は、天才と呼ばれる程の頭脳を持っていたのを思い出しました。普段はあまり良い印象は持ってませんが、今回に限っては頼りになるかもしれませんね…。


 「あと少しで、生徒たちが下校する時間だ。それまでに、校門にある脳波強制学習マシンのUSB差込口にこれを刺して来るのだな。…何故来る際に刺してこなかったか、って顔だな。貴様にも出番をくれてやろうと思ったから、それだけだ」


 わ、私の為にそんな事をしてくれたのですか…何か裏がありそうな気がしますが、皆様の力になれるのなら、この提案に乗っても良いと思います…。


 「…承知しました。団長さんはこの家庭科室で待機していて貰えますか?」

 「フン、そんなもの嫌に決まっているだろう。コイツと同じ空間で過ごすなど…いい加減目を覚ましたらどうだ」


 不満そうな表情の団長さんは、ついに蛇口を捻り、オデンさんの顔に向けて水を出してしまいました。


 「…フガガッッ!? 鼻に水が…止めろバカ!! …い、イチジク!? テメェ何の真似だ!?」

 「貴様を永遠の眠りから覚まさせてやったのだ。感謝しろ」

 「ふざけんな! 俺はまだ死んでねぇ!! …いちごは無事か!?」

 「現在、いちご様からの連絡は入っていませんが…」


 それを聞いたオデンさんは、頭を抱えながら顔を曇らせてしまいました。それを見て、私もいちご様が大丈夫か、不安になってしまいます。

 オデンさんは直ぐにポケットのスマホを取り出し、電話を掛けました。恐らくタラバさん辺りでしょうか。…しかし、中々繋がらないようです。


 「どうやら、電波妨害が施されているようだな」

 「クソ…いや、アイツ等ならきっと何とかしてくれる。信じていれば、きっと…」

 「──コイツも目覚めた事だ、下校時間になる前に早く行動に移したらどうだ、教頭」

 「…その通りですね。後は任せます。では」


 
 二人を家庭科室に残して、私は校門の前へと向かい始めました。団長さんはただUSBを渡しただけとは到底思えませんが…でも、信じてみましょう。

 生徒達の楽しい学校生活を続ける為に…唯一まともな大人も私しかいないから…教頭、そしてモモミ様の執事であるこの私が何とかしなければ!!

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