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生徒会長学校侵略編
刃と闇と薔薇
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昼の体育館なのに、やけに静かだ。窓からの日差しが壁に反射して、なんだか言葉では表しにくい、不思議な気分になってしまう。
──まあ、そんな気持ちを一瞬にしてぶち壊してくるのが、僕の隣にいるんだけど。
「さっさと爆弾解除して、教頭の所に帰りますわよ。ほんと、今日は運が悪いですわね……」
さっきから不機嫌な顔を維持しつづけるびわさん。無意味にもずっと長い髪の毛を手でクルクル回している。
「そういえばメロ、昨日プラムさんと一緒に夜から張り込みをしてたと言っていましたわね? じゃあこの事を未然に防ぐ事も出来たんじゃないですの?」
「彼女の計画内容までは全く解明出来なかった。知っていたのは、彼女もある力を持っていた事くらいでさ、ここまで大がかりな事をするとはね……」
「それでも、今こんな事が起こってるという連絡メールくらいは送れた筈ですわ」
「それが、夜中には電波妨害が施されていて、それが登校時間まで続いていた。……でも仮に、読んだ所で信じてくれると思う? 一般的に考えて有り得ない状況だし、ただのいたずらにしか思わないだろうからさ」
「そうですわね。でも、何だか論破された感が凄くてムカつきますわ……でも、爆弾くらいは楽勝で見つけられますわ。大体こういうのは、真ん中の鉄骨の上に隠されているものですわ。それでは……」
びわさんは何の拍子も無しにポケットからどデカいチェーンソーを取り出した。そしてスタータグリップを上下に引き、チェーンソーに生命を灯す。
「行きますわ、微・クリムゾン・チェーンっ!!」
チェーンソーを横に振りかざすと、光の波動が生まれ、それは鉄骨に向かって放たれた。しかし、爆弾が落ちてくるような気配は全く感じられない。
「…あ、あら? おかしいですわね…」
「爆風とか考えて、上に設置はしないでしょ? こういうのは、床にあるフタの中のコンセントに隠されているんだ……ほらあった」
見つけたのは、ザクロの好きなゼリービーンズ位の小さな爆弾だった。よく見ると小さな穴があり、中にボタンらしき物が見える。針やつま楊枝がないと解除出来なさそうだ。
「びわさん、針とか持ってない?」
「…その事を知っている上で、私にあんな事をさせたんですの?」
「え、そんなつもりないよ。もしかしたらな~って思ったから止めなかっただけさ」
「──もおっっ!! いつもそんな態度だから、私はあなたの事を良い目で見ることが出来ませんわ!! ホント、昔のアイツを思い出してムカムカしますわ!!」
「ちょっと、落ち着いてよ、びわさん……」
さっきまでの表情とは打って変わって、怒りで満ちている表情になってしまったびわさん。すぐ怒って……なんだか僕にも、似たような子が居たような気がする……。
そんな事考えている場合じゃない。チェーンソーをこちらへ向けて、一歩、また一歩と足を動かしている。僕もそれに合わせるように、一歩、また一歩と後進をする。
「…決着をつけましょう。前に戦った、あの決着を」
「きょ、今日はボタン持ってきてないよ?」
「構いませんわ。貴方をボコボコにする事しか考えていませんのでぇっ!!」
正気を無くしたびわは、激しい音を立てて、僕を本気で切ろうと、チェーンソーを振りかざした。いや、切るなんて表現じゃ済まない、切り込みに来ている。
彼女が振りかざした場所には、傷跡が深く入っている。これを体で受けるなんて、考えただけで血の気が引く。
「びわさんタイムタイム! 確かに僕の言い方が悪かった! 謝るよ!」
「何も反省してない癖にっ! 貴方はいつも口だけで、態度では何も示してないですわっ!! それにいつまでも"さん"付けで呼んで……私はメロの事を呼び捨てにしてるのに……貴方も少しくらいは気に掛けてくれませんの!?」
びわさんの目は本気だ。まるで獲物を狙う狼のように、殺気で溢れている。
「頼むから落ち着いてよぉ…」
僕の嘆きも、彼女には届かない。こんな事してないで、爆弾を解除しなくちゃ行けないのに……。
「彼女の心に寄り添えてないから、キミはダメなんじゃないのか?」
突如、ステージから現れたのは、薔薇を口に咥えながら話す、エレガントな雰囲気の男。
「キミは一体…?」
「ボクは十的チャップ。生徒会の会計担当をしている者なのさ」
「生徒会…邪魔は入ってこないで欲しいですわっ!!」
びわさんはステージから降りてきたチャップに向かって、チェーンソーを構えて突進を始めた。しかし…。
「物騒な真似はやめてくれないか、法桑びわ」
チャップは加えていた薔薇を、チェーンソーに向かって投げ出した。すると、薔薇の茎はみるみると成長していき、チェーンソーの刃を絡みつかせた。
そして驚く事に、茎が刃を締め付け、チェーンソーの速度は落ちていき、ついには停止してしまった。
「な、何ですのこれ!? 薔薇がこんなに硬いはずありませんわ!?」
「細くて弱くては、生きていけない。だから、硬い心生きていかないと。もちろんそれは品種改良を重ねたもので、木くらいの硬さになるようにしているのさ」
幾ら品種改良とは言え、ここまで硬くなることなどあり得るのだろうか? まさか、これもライトニングパワーの…。
だが今は爆弾処理が先である。気を取られる前に…。
「…とにかく、僕たちは急いでるんだ。早く爆弾を解除しな」
「とっくに解除しているのさ。火薬は入ってるから、無闇に触ったら爆発するかもだけどさ」
「…え?」
驚きの事実に、僕は口が塞がらなかった。状況を理解するのに、五秒はかかった。
「ボクは確かに生徒会の一員。だけど、会長の意見には全く賛成出来ない、今回の作戦にボクは乗らない事にしたのさ。あの洗脳音波だって、耳栓で回避した。だからボクは正常ってコトさ」
「それなら、こんな所で道草食ってる場合じゃない。僕達は急いで戻らないと…」
「何も土産なしに帰らせるわけないのさ」
チャップは綺麗な音で指を鳴らした。すると、次々と扉が閉まっていき、更に鍵がかかるような音までした。
「ちょっと! こんなに暑いのに密封状態になったら、熱中症で倒れてしまいますわ!」
「じゃあ、扇風機も付けてあげるのさ」
再びチャップは指を鳴らすと、天井に下がっている扇風機が作動し、微妙に涼しくなった。指パッチンでどうやって動かして…まさかこれもライトニングパワーの力!?
「これで戦いのリングは整ったのさ」
「何故だ! 僕たちに構う必要などないはずだろう!?」
「今の心じゃあ、生徒会長に立ち向かえる訳ないのさ。だから、特訓、とでも言うべき?」
チャップはステージから一回転して降り、華麗に着地を決めた。そして、薔薇を口に咥えながら、手を腰に当て、決めポーズをした。
「びわは武器を封じられた以上、戦えないね。だから、魚唄メロ、キミとの一騎打ちだ。君のダークパワーがどれだけの力なのかを、この眼で確認させて欲しいのさ」
「…ダークパワーの力、舐めないで欲しいね。びわさん、下がっていて」
「…仕方ありませんわね。本当はこんなの望んでいませんけど…貴方に託しますわ」
びわさんが安全な場所に行くのを見守りながら、手にダークパワーを集中させていた。
薔薇とは言え、いも天ビームで直ぐに枯らしてみせる。
「さあ、準備は整ったのさ。いつでも来てくれ」
「…………」
「沈黙、静止、か……ならばこちらから。 薔薇波ッッッ!!」
チャップは咥えていた薔薇を手に持ち替えた。その瞬間、薔薇はミルミルと伸びていき、波状に僕の方へと向かってきた。
「いも天ビームッッッ!!」
だがこちらも怯んではいない。手に貯めていたダークパワーを解放し、向かってくる薔薇へと放った。すると、呆気なく薔薇は黒くなり、灰へと変わってしまった。
「……なんだ、口程じゃないみたいだね」
「隙を見せる姿、全く…成長してないのさ」
「うわぁっ!?」
油断を見せてしまったその瞬間、後ろから薔薇がスルスル伸びてきて、左腕を絡まれてしまった。そして、みるみると伸びていくツタが四肢を絡み、動かせなくなってしまった。
「もう一本、薔薇は事前に仕掛けておいた。これ以上動いたら、トゲが刺さるのさ。君は視野が狭い。2つ以上のことを考えることが出来ないのか?」
「……ッ! 何を……」
「君は他人の気持ちに気づくことが出来ないらしい。心理を読み切った様に思い込み、自己解決してるだけなのさ。だから、いつまでも方桑びわは君が嫌いなんだ」
──急になんだ、この説教は……。
「今まで君は、法桑びわとどういう関係を築いてきた? まさか、友人と答えるワケないよね?」
「……」
「黙っているのも無理ないよねぇ。法桑びわとは敵対関係だと思ってるからねぇ?」
「っ!」
言い返す言葉も思いつかなかった。びわさんとは、仲のいい友人、と言える関係など作れていただろうか。答えは悔しいが、秒で出てしまう。Noだ。
常にバチバチしていて、嫌な所だけを見ていて、本心なんか考えたことも無かった。いや、考える余裕もなかったのかもしれない。
「法桑びわは、少しくらい心を開いてもいいかな、なんて思ってるんじゃない? どうなのさ、法桑びわ?」
「……メロなんか大嫌いですわ。これからも、この先も、ずぅーーーーーーっと、大嫌いで構いませんわよ。…会った時はそう感じていましたわ。最近は少しでも嫌いな人にはならないようにしていたのですが。まだまだ努力不足だったみたいですわね……」
「──そんな……」
何も反論できなかった。
僕がびわさんにやってきた事、全て間違いだった。最初はカキナ君に接近して、同じダークパワーを持つ者同士として友達になる事が目的であって、びわさんはその中継的存在として友達になろうと思っていた。
だが、びわさんの反感的な態度に、苛立ちを覚えてしまった。だから、友達になろうという感覚は疎か、余り話したいと思わないようになってしまっていたのだ。
仲良くなっても、すぐにどこかに行ってしまう気がしたから、”友達”という感覚を忘れようとしていたんだ。このダークパワーだって、元々は僕の物じゃないから……。
「……ちょっとは反省してる様に見える。キミ達の中の悪さは生徒会でも度々話題になってたから、いい機会だと思って。ギスギスした関係のままでは、会長に勝てない。そう思って、こんな事をしちゃったのは素直に謝ろう。さあ、仲直りするのさ」
びわさんは少し俯いて、僕の前まで歩いてきた。もしかして僕、今とても酷い顔をしているのかもしれない。
「……ごめんなさい。僕はびわさ…いや、びわの気持ちなんか全く考えてなかった。本当の友達なんて要らないって考えで、避けようとしていた。昔、色々あって……本当にごめんなさい…」
「……私も、素直に気持ちを言えなくて申し訳ないですわ。貴方にも貴方の考えがあるのは分かりました。…良ければ、昔の話、聞かせてもらえません? 貴方の心を隙間を少しでも埋めてあげれたらいいですわ」
「うん……わかったよ、びわ。でも、またいつかにしてくれないかな? もう体が…」
ツタの締まりが緩まり、解放された途端、膝から足を崩してしまった。
「メロっっっ!」
びわは僕の肩を支え、倒れるのを防いでくれた。感じたことのない温かい温もり…不思議だよ。
「…仲直り確認、と。時間は残されてない、早くあのバカ会長を阻止するのさ」
「場所はわかってるんですの?」
「ああ。会長が次に行くのは…屋上さ」
僕とびわは驚きを隠せなかった。ただえさえダークパワーを使いこなせていないカキナが生徒会長と戦おうとしているなんて……プラムだけで大丈夫かなぁ…。
「二人は休んでいるといい。体力が回復し次第、また戦場に戻るのさ」
「でも、チャップさんはどうするんですの?」
「勿論、会長のトコに行く。今の会長は横暴かつワガママ。止める人が必要なのさ。他の生徒会メンバーだって、洗脳されてあんな事をしているのを、ボクはただ指を咥えて見ていられないのさ。人と人の関係を修復する手伝いをするのが、僕の生徒会での役目だから、さ」
「チャップ…」
生徒会の生き残りが居たのは予想外だった。そして、彼の後ろ姿はとても輝いているように見えた。こんなにも頼もしく、力になってくれる。尊敬に近い存在かもしれない。
「それでは、また会おう、さ」
チャップは薔薇を咥えながら、体育館を後にした。先程の勢いが嘘だったかのように、シン、と静まり返った。
「──歩けますの?」
「うん、大丈夫だ…イテテ…」
蛇に巻き付かれたような感覚がずっと続いたものだから、体が言う事を聞いてくれない。
「動いちゃダメですわよ! 回復するまで、付き添ってあげますわ…」
「ああ、ありがとうね…」
びわの言う通り、ここで安静にすることにした。彼がいれば、きっとプラムとカキナくんの助けになるだろうと信じているからだ…。
──────────────────────────────────────────
「な、何しに来た!?」
放送室に入って来たのは、私の兄映日、イチジクだった。
「貴様のやり方は気に食わない。今すぐやめた方がいいことを、この兄が教えておこう」
「黙れ!! そもそもこの学校に必要のない兄がここに存在することがおかしい! 何故止める? 兄貴だってこの学校を破壊したいんであろう? 学校崩壊を望むなら、このやり方でも問題ないはずだ!!」
「…フン、ここまでバカな妹だとは思ってなかった。どうやら、俺の出る幕ではなかったようだ…屋上にでも行くがよい」
兄貴はそう言葉を残した後、大人しく部屋から出て行った。何がしたい、私を挑発しに来たのか?
クソ…まあいい。私が目指すのは屋上だ。最終作戦はそこで行おう、決まったならさっさと行動しようではないか……。
「おい校長、さっさと行くぞ…眠ってんのかよクソ…」
──まあ、そんな気持ちを一瞬にしてぶち壊してくるのが、僕の隣にいるんだけど。
「さっさと爆弾解除して、教頭の所に帰りますわよ。ほんと、今日は運が悪いですわね……」
さっきから不機嫌な顔を維持しつづけるびわさん。無意味にもずっと長い髪の毛を手でクルクル回している。
「そういえばメロ、昨日プラムさんと一緒に夜から張り込みをしてたと言っていましたわね? じゃあこの事を未然に防ぐ事も出来たんじゃないですの?」
「彼女の計画内容までは全く解明出来なかった。知っていたのは、彼女もある力を持っていた事くらいでさ、ここまで大がかりな事をするとはね……」
「それでも、今こんな事が起こってるという連絡メールくらいは送れた筈ですわ」
「それが、夜中には電波妨害が施されていて、それが登校時間まで続いていた。……でも仮に、読んだ所で信じてくれると思う? 一般的に考えて有り得ない状況だし、ただのいたずらにしか思わないだろうからさ」
「そうですわね。でも、何だか論破された感が凄くてムカつきますわ……でも、爆弾くらいは楽勝で見つけられますわ。大体こういうのは、真ん中の鉄骨の上に隠されているものですわ。それでは……」
びわさんは何の拍子も無しにポケットからどデカいチェーンソーを取り出した。そしてスタータグリップを上下に引き、チェーンソーに生命を灯す。
「行きますわ、微・クリムゾン・チェーンっ!!」
チェーンソーを横に振りかざすと、光の波動が生まれ、それは鉄骨に向かって放たれた。しかし、爆弾が落ちてくるような気配は全く感じられない。
「…あ、あら? おかしいですわね…」
「爆風とか考えて、上に設置はしないでしょ? こういうのは、床にあるフタの中のコンセントに隠されているんだ……ほらあった」
見つけたのは、ザクロの好きなゼリービーンズ位の小さな爆弾だった。よく見ると小さな穴があり、中にボタンらしき物が見える。針やつま楊枝がないと解除出来なさそうだ。
「びわさん、針とか持ってない?」
「…その事を知っている上で、私にあんな事をさせたんですの?」
「え、そんなつもりないよ。もしかしたらな~って思ったから止めなかっただけさ」
「──もおっっ!! いつもそんな態度だから、私はあなたの事を良い目で見ることが出来ませんわ!! ホント、昔のアイツを思い出してムカムカしますわ!!」
「ちょっと、落ち着いてよ、びわさん……」
さっきまでの表情とは打って変わって、怒りで満ちている表情になってしまったびわさん。すぐ怒って……なんだか僕にも、似たような子が居たような気がする……。
そんな事考えている場合じゃない。チェーンソーをこちらへ向けて、一歩、また一歩と足を動かしている。僕もそれに合わせるように、一歩、また一歩と後進をする。
「…決着をつけましょう。前に戦った、あの決着を」
「きょ、今日はボタン持ってきてないよ?」
「構いませんわ。貴方をボコボコにする事しか考えていませんのでぇっ!!」
正気を無くしたびわは、激しい音を立てて、僕を本気で切ろうと、チェーンソーを振りかざした。いや、切るなんて表現じゃ済まない、切り込みに来ている。
彼女が振りかざした場所には、傷跡が深く入っている。これを体で受けるなんて、考えただけで血の気が引く。
「びわさんタイムタイム! 確かに僕の言い方が悪かった! 謝るよ!」
「何も反省してない癖にっ! 貴方はいつも口だけで、態度では何も示してないですわっ!! それにいつまでも"さん"付けで呼んで……私はメロの事を呼び捨てにしてるのに……貴方も少しくらいは気に掛けてくれませんの!?」
びわさんの目は本気だ。まるで獲物を狙う狼のように、殺気で溢れている。
「頼むから落ち着いてよぉ…」
僕の嘆きも、彼女には届かない。こんな事してないで、爆弾を解除しなくちゃ行けないのに……。
「彼女の心に寄り添えてないから、キミはダメなんじゃないのか?」
突如、ステージから現れたのは、薔薇を口に咥えながら話す、エレガントな雰囲気の男。
「キミは一体…?」
「ボクは十的チャップ。生徒会の会計担当をしている者なのさ」
「生徒会…邪魔は入ってこないで欲しいですわっ!!」
びわさんはステージから降りてきたチャップに向かって、チェーンソーを構えて突進を始めた。しかし…。
「物騒な真似はやめてくれないか、法桑びわ」
チャップは加えていた薔薇を、チェーンソーに向かって投げ出した。すると、薔薇の茎はみるみると成長していき、チェーンソーの刃を絡みつかせた。
そして驚く事に、茎が刃を締め付け、チェーンソーの速度は落ちていき、ついには停止してしまった。
「な、何ですのこれ!? 薔薇がこんなに硬いはずありませんわ!?」
「細くて弱くては、生きていけない。だから、硬い心生きていかないと。もちろんそれは品種改良を重ねたもので、木くらいの硬さになるようにしているのさ」
幾ら品種改良とは言え、ここまで硬くなることなどあり得るのだろうか? まさか、これもライトニングパワーの…。
だが今は爆弾処理が先である。気を取られる前に…。
「…とにかく、僕たちは急いでるんだ。早く爆弾を解除しな」
「とっくに解除しているのさ。火薬は入ってるから、無闇に触ったら爆発するかもだけどさ」
「…え?」
驚きの事実に、僕は口が塞がらなかった。状況を理解するのに、五秒はかかった。
「ボクは確かに生徒会の一員。だけど、会長の意見には全く賛成出来ない、今回の作戦にボクは乗らない事にしたのさ。あの洗脳音波だって、耳栓で回避した。だからボクは正常ってコトさ」
「それなら、こんな所で道草食ってる場合じゃない。僕達は急いで戻らないと…」
「何も土産なしに帰らせるわけないのさ」
チャップは綺麗な音で指を鳴らした。すると、次々と扉が閉まっていき、更に鍵がかかるような音までした。
「ちょっと! こんなに暑いのに密封状態になったら、熱中症で倒れてしまいますわ!」
「じゃあ、扇風機も付けてあげるのさ」
再びチャップは指を鳴らすと、天井に下がっている扇風機が作動し、微妙に涼しくなった。指パッチンでどうやって動かして…まさかこれもライトニングパワーの力!?
「これで戦いのリングは整ったのさ」
「何故だ! 僕たちに構う必要などないはずだろう!?」
「今の心じゃあ、生徒会長に立ち向かえる訳ないのさ。だから、特訓、とでも言うべき?」
チャップはステージから一回転して降り、華麗に着地を決めた。そして、薔薇を口に咥えながら、手を腰に当て、決めポーズをした。
「びわは武器を封じられた以上、戦えないね。だから、魚唄メロ、キミとの一騎打ちだ。君のダークパワーがどれだけの力なのかを、この眼で確認させて欲しいのさ」
「…ダークパワーの力、舐めないで欲しいね。びわさん、下がっていて」
「…仕方ありませんわね。本当はこんなの望んでいませんけど…貴方に託しますわ」
びわさんが安全な場所に行くのを見守りながら、手にダークパワーを集中させていた。
薔薇とは言え、いも天ビームで直ぐに枯らしてみせる。
「さあ、準備は整ったのさ。いつでも来てくれ」
「…………」
「沈黙、静止、か……ならばこちらから。 薔薇波ッッッ!!」
チャップは咥えていた薔薇を手に持ち替えた。その瞬間、薔薇はミルミルと伸びていき、波状に僕の方へと向かってきた。
「いも天ビームッッッ!!」
だがこちらも怯んではいない。手に貯めていたダークパワーを解放し、向かってくる薔薇へと放った。すると、呆気なく薔薇は黒くなり、灰へと変わってしまった。
「……なんだ、口程じゃないみたいだね」
「隙を見せる姿、全く…成長してないのさ」
「うわぁっ!?」
油断を見せてしまったその瞬間、後ろから薔薇がスルスル伸びてきて、左腕を絡まれてしまった。そして、みるみると伸びていくツタが四肢を絡み、動かせなくなってしまった。
「もう一本、薔薇は事前に仕掛けておいた。これ以上動いたら、トゲが刺さるのさ。君は視野が狭い。2つ以上のことを考えることが出来ないのか?」
「……ッ! 何を……」
「君は他人の気持ちに気づくことが出来ないらしい。心理を読み切った様に思い込み、自己解決してるだけなのさ。だから、いつまでも方桑びわは君が嫌いなんだ」
──急になんだ、この説教は……。
「今まで君は、法桑びわとどういう関係を築いてきた? まさか、友人と答えるワケないよね?」
「……」
「黙っているのも無理ないよねぇ。法桑びわとは敵対関係だと思ってるからねぇ?」
「っ!」
言い返す言葉も思いつかなかった。びわさんとは、仲のいい友人、と言える関係など作れていただろうか。答えは悔しいが、秒で出てしまう。Noだ。
常にバチバチしていて、嫌な所だけを見ていて、本心なんか考えたことも無かった。いや、考える余裕もなかったのかもしれない。
「法桑びわは、少しくらい心を開いてもいいかな、なんて思ってるんじゃない? どうなのさ、法桑びわ?」
「……メロなんか大嫌いですわ。これからも、この先も、ずぅーーーーーーっと、大嫌いで構いませんわよ。…会った時はそう感じていましたわ。最近は少しでも嫌いな人にはならないようにしていたのですが。まだまだ努力不足だったみたいですわね……」
「──そんな……」
何も反論できなかった。
僕がびわさんにやってきた事、全て間違いだった。最初はカキナ君に接近して、同じダークパワーを持つ者同士として友達になる事が目的であって、びわさんはその中継的存在として友達になろうと思っていた。
だが、びわさんの反感的な態度に、苛立ちを覚えてしまった。だから、友達になろうという感覚は疎か、余り話したいと思わないようになってしまっていたのだ。
仲良くなっても、すぐにどこかに行ってしまう気がしたから、”友達”という感覚を忘れようとしていたんだ。このダークパワーだって、元々は僕の物じゃないから……。
「……ちょっとは反省してる様に見える。キミ達の中の悪さは生徒会でも度々話題になってたから、いい機会だと思って。ギスギスした関係のままでは、会長に勝てない。そう思って、こんな事をしちゃったのは素直に謝ろう。さあ、仲直りするのさ」
びわさんは少し俯いて、僕の前まで歩いてきた。もしかして僕、今とても酷い顔をしているのかもしれない。
「……ごめんなさい。僕はびわさ…いや、びわの気持ちなんか全く考えてなかった。本当の友達なんて要らないって考えで、避けようとしていた。昔、色々あって……本当にごめんなさい…」
「……私も、素直に気持ちを言えなくて申し訳ないですわ。貴方にも貴方の考えがあるのは分かりました。…良ければ、昔の話、聞かせてもらえません? 貴方の心を隙間を少しでも埋めてあげれたらいいですわ」
「うん……わかったよ、びわ。でも、またいつかにしてくれないかな? もう体が…」
ツタの締まりが緩まり、解放された途端、膝から足を崩してしまった。
「メロっっっ!」
びわは僕の肩を支え、倒れるのを防いでくれた。感じたことのない温かい温もり…不思議だよ。
「…仲直り確認、と。時間は残されてない、早くあのバカ会長を阻止するのさ」
「場所はわかってるんですの?」
「ああ。会長が次に行くのは…屋上さ」
僕とびわは驚きを隠せなかった。ただえさえダークパワーを使いこなせていないカキナが生徒会長と戦おうとしているなんて……プラムだけで大丈夫かなぁ…。
「二人は休んでいるといい。体力が回復し次第、また戦場に戻るのさ」
「でも、チャップさんはどうするんですの?」
「勿論、会長のトコに行く。今の会長は横暴かつワガママ。止める人が必要なのさ。他の生徒会メンバーだって、洗脳されてあんな事をしているのを、ボクはただ指を咥えて見ていられないのさ。人と人の関係を修復する手伝いをするのが、僕の生徒会での役目だから、さ」
「チャップ…」
生徒会の生き残りが居たのは予想外だった。そして、彼の後ろ姿はとても輝いているように見えた。こんなにも頼もしく、力になってくれる。尊敬に近い存在かもしれない。
「それでは、また会おう、さ」
チャップは薔薇を咥えながら、体育館を後にした。先程の勢いが嘘だったかのように、シン、と静まり返った。
「──歩けますの?」
「うん、大丈夫だ…イテテ…」
蛇に巻き付かれたような感覚がずっと続いたものだから、体が言う事を聞いてくれない。
「動いちゃダメですわよ! 回復するまで、付き添ってあげますわ…」
「ああ、ありがとうね…」
びわの言う通り、ここで安静にすることにした。彼がいれば、きっとプラムとカキナくんの助けになるだろうと信じているからだ…。
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「な、何しに来た!?」
放送室に入って来たのは、私の兄映日、イチジクだった。
「貴様のやり方は気に食わない。今すぐやめた方がいいことを、この兄が教えておこう」
「黙れ!! そもそもこの学校に必要のない兄がここに存在することがおかしい! 何故止める? 兄貴だってこの学校を破壊したいんであろう? 学校崩壊を望むなら、このやり方でも問題ないはずだ!!」
「…フン、ここまでバカな妹だとは思ってなかった。どうやら、俺の出る幕ではなかったようだ…屋上にでも行くがよい」
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