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学園で元婚約者に遭っちゃったし
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魔法学園の上空に突如として現れた黄金竜。魔法使いたちは何の前触れもなく姿を見せた竜をただただ見上げるだけで……、とかいうどこかのB級映画並みの展開になる、なんていうこともなく。
魔法学園側も戸惑ったが、こちらも戸惑った。
なんていうか、主にわたしが。
今日は朝から色々とあった。そもそもレイアと優雅に空のお散歩をしていて、なぜだかレイルとの関係性について相談? というか話を聞いてもらっていてからの、ルーンの登場と卵窃盗事件の発覚。しかもその犯人がゲームのヒロイン、フローレンスとか。彼女たち犯人を追って捨てたはずの故郷、シュタインハルツまでレイアと一緒に飛んできて、そろそろお日様も傾き始めた時刻。
そんな時間にわたしは、会いたくもない男と対峙しているわけで。
まあ、なんていうか、王太子ヴァイオレンツとばったりシュリーゼム魔法学園で出くわしちゃったというか、ちょうど彼の訪問時にわたしたちがお邪魔しちゃったというか。
レイアの背中にずっと乗っていると先にも進めなさそうだったから、覚悟決めて降りたんだよね。
「そなた……リーゼロッテ……。どうして……死んだはずでは」
まあ普通の反応だよね。
魔法学園の敷地内に現れた黄金竜を前に、学園関係者らはそれなりに動揺した。一応結界は張ってあるものの、そこまで大仰なものではなく、レイアがいればあっさりと破ってしまえる程度のもの。もとより、黄金竜の襲来を想定して張られた結界ではない、と思う。
ちなみにわたしも動揺した。
なんか一人を取り囲むように人の輪ができているなあ、とか思っていたらヴァイオレンツだったんだもん。
「ええと……それは、まあいろいろとあって」
わたしはヴァイオレンツから若干視線を逸らせて口ごもる。
なんて答えたらいいのかな。死んだふりして国を脱出しようとしていたところを黄金竜の双子に拾われました、とか言えるか。
「たしかそなたは埋葬途中に、竜か何かに襲われたはず」
そういえばフェイルとファーナはあのときうっかり口から炎を吐いちゃったとか言っていたっけ。
と、ここでレイアが魔法で竜から人間の姿へと変化した。
ヴァイオレンツと、彼の従者や魔法学園の関係者らが一斉に驚いた表情になる。
黄金竜が人間に変身するシーンなんてそうそう見れるものじゃないから、その反応はわかる。わたしはもはや見慣れたけど。
「この娘は黒竜に襲われたところをわたくしの身内が偶然に助け、連れ帰ったの。どうやらその前から毒に侵されていたようで、わたくしが看病した後こうして回復をしたの」
うわ、レイア話盛りすぎ。というかこの国に黒竜出たらそれはそれでいろんな人が発狂しちゃうよ。ほら、現に目の前のヴァイオレンツ含むお付きの人たちも目を見張ったし。
レイアは「大丈夫。人間たちには気づかれることなくきちんと対処したわ。だから、今でもこの国は平和でしょう」と続けた。
たまに思うけど、レイアも結構すてきな性格していると思う。
レイアが大真面目に話すから、とりあえずはそれが真実としてヴァイオレンツたちの頭の中に染み込んだみたい。
「いま、この娘はわたくしが保護しているわ」
レイアはわたしの肩に手を置いた。
「リーゼロッテを送り届けに来た、というわけではないのだな」
「ええ、そうね。彼女は完全にわたくしの付添ね」
「ていうか、ヴァイオレンツ様はどうしてここに?」
わたしは気になっていたことを尋ねた。
「フローラに会いに。魔法の研究に熱心なことはよいことだが、さすがに寂しい」
ああそうですか。そんな理由だと思っていました。
「それで。貴様はなんの用があって突然この、シュリーゼム魔法学園に現れた?」
「わたくしの友人の大切な宝物が盗まれました。盗みを働いた犯人がこの学園に逃げ込んだわ。わたくしは彼らを追ってきたの。シュタインハルツの王太子に用があるわけではないわ」
レイアはよく響く声で語った。
レイアの語った内容に、一同に動揺が広がる。特に学園関係者たちはそれぞれ顔を見合わせて声を出し合う。にわかには信じられない様子で。
「今日、ここに二人の人間が帰ってきたでしょう。彼らを出しなさい。聞けば、この学園を卒業したフローレンス・アイリーンと学園の教師アレックス・ハルミンだというじゃない」
「まさか!」
「アレックス教師が」
「いや、確かに彼らは学術調査で辺境へと赴いていた」
「まさか竜の至宝を盗むとは」
「にわかには信じられない」
それぞれ思ったことを口にするから収拾がつかなくなる。
「それは、確かなのか?」
ヴァイオレンツがずいっと一歩前に出る。
「ええ、もちろん。わたくしの友人の証言に間違いはないわ。彼女は魔法を使ってその時の様子をわたくしと、ここにいるリーゼロッテにも見せてくれたわ。彼女も驚いていた。犯人が、わたくしの友人から彼女の宝物を奪った人間が、彼女と過去に関わった者たちだったから」
「黄金竜であられるこちらのご婦人が嘘を言っていると考えている不届き物はいないわよねぇ。人間よりもはるかに高い魔力を有する黄金竜の使う魔法が間違っている、なんてまさか考えていないですよねぇ」
と、ティティがいつもよりも威圧的な声を出した。
ふよふよと、わたしとレイアの周りを一周し、半透明の透き通った姿をしたティティは背自分が精霊であることを誇示しているのか、髪の毛がちりちりと炎のように揺らめている。
「炎の精霊……」
だれかが呟いた。
「ともかく、フローレンスの元へ案内なさいな」
レイアの美しい声が響き、人々がハッとしたように動き出した。
この場にいる全員が、黄金竜から妙齢の女性へと姿を変えたレイアを目撃している。
魔法学園の偉い人がレイアを案内し、わたしとティティも一緒に中へ入ることにする。ついでにヴァイオレンツも付いてきた。
彼はずっと険しい顔をしている。
自分の愛する人が盗みを働いた、なんて聞かされたら無理もないか。映像を観たわたしだってどうしてってずっと思っているのに。
ついこの間まで学んでいた学舎に若干の懐かしさを感じつつ、わたしは建物の中を歩いていく。ティティは物珍しそうにふわりと天井付近まで浮き上がったり、窓から外を眺めたり、基本自由。
お偉いさんは、授業の行われる教室棟ではなくて教員の研究室が集まる、研究棟へとわたしたちを案内した。
魔法学園側も戸惑ったが、こちらも戸惑った。
なんていうか、主にわたしが。
今日は朝から色々とあった。そもそもレイアと優雅に空のお散歩をしていて、なぜだかレイルとの関係性について相談? というか話を聞いてもらっていてからの、ルーンの登場と卵窃盗事件の発覚。しかもその犯人がゲームのヒロイン、フローレンスとか。彼女たち犯人を追って捨てたはずの故郷、シュタインハルツまでレイアと一緒に飛んできて、そろそろお日様も傾き始めた時刻。
そんな時間にわたしは、会いたくもない男と対峙しているわけで。
まあ、なんていうか、王太子ヴァイオレンツとばったりシュリーゼム魔法学園で出くわしちゃったというか、ちょうど彼の訪問時にわたしたちがお邪魔しちゃったというか。
レイアの背中にずっと乗っていると先にも進めなさそうだったから、覚悟決めて降りたんだよね。
「そなた……リーゼロッテ……。どうして……死んだはずでは」
まあ普通の反応だよね。
魔法学園の敷地内に現れた黄金竜を前に、学園関係者らはそれなりに動揺した。一応結界は張ってあるものの、そこまで大仰なものではなく、レイアがいればあっさりと破ってしまえる程度のもの。もとより、黄金竜の襲来を想定して張られた結界ではない、と思う。
ちなみにわたしも動揺した。
なんか一人を取り囲むように人の輪ができているなあ、とか思っていたらヴァイオレンツだったんだもん。
「ええと……それは、まあいろいろとあって」
わたしはヴァイオレンツから若干視線を逸らせて口ごもる。
なんて答えたらいいのかな。死んだふりして国を脱出しようとしていたところを黄金竜の双子に拾われました、とか言えるか。
「たしかそなたは埋葬途中に、竜か何かに襲われたはず」
そういえばフェイルとファーナはあのときうっかり口から炎を吐いちゃったとか言っていたっけ。
と、ここでレイアが魔法で竜から人間の姿へと変化した。
ヴァイオレンツと、彼の従者や魔法学園の関係者らが一斉に驚いた表情になる。
黄金竜が人間に変身するシーンなんてそうそう見れるものじゃないから、その反応はわかる。わたしはもはや見慣れたけど。
「この娘は黒竜に襲われたところをわたくしの身内が偶然に助け、連れ帰ったの。どうやらその前から毒に侵されていたようで、わたくしが看病した後こうして回復をしたの」
うわ、レイア話盛りすぎ。というかこの国に黒竜出たらそれはそれでいろんな人が発狂しちゃうよ。ほら、現に目の前のヴァイオレンツ含むお付きの人たちも目を見張ったし。
レイアは「大丈夫。人間たちには気づかれることなくきちんと対処したわ。だから、今でもこの国は平和でしょう」と続けた。
たまに思うけど、レイアも結構すてきな性格していると思う。
レイアが大真面目に話すから、とりあえずはそれが真実としてヴァイオレンツたちの頭の中に染み込んだみたい。
「いま、この娘はわたくしが保護しているわ」
レイアはわたしの肩に手を置いた。
「リーゼロッテを送り届けに来た、というわけではないのだな」
「ええ、そうね。彼女は完全にわたくしの付添ね」
「ていうか、ヴァイオレンツ様はどうしてここに?」
わたしは気になっていたことを尋ねた。
「フローラに会いに。魔法の研究に熱心なことはよいことだが、さすがに寂しい」
ああそうですか。そんな理由だと思っていました。
「それで。貴様はなんの用があって突然この、シュリーゼム魔法学園に現れた?」
「わたくしの友人の大切な宝物が盗まれました。盗みを働いた犯人がこの学園に逃げ込んだわ。わたくしは彼らを追ってきたの。シュタインハルツの王太子に用があるわけではないわ」
レイアはよく響く声で語った。
レイアの語った内容に、一同に動揺が広がる。特に学園関係者たちはそれぞれ顔を見合わせて声を出し合う。にわかには信じられない様子で。
「今日、ここに二人の人間が帰ってきたでしょう。彼らを出しなさい。聞けば、この学園を卒業したフローレンス・アイリーンと学園の教師アレックス・ハルミンだというじゃない」
「まさか!」
「アレックス教師が」
「いや、確かに彼らは学術調査で辺境へと赴いていた」
「まさか竜の至宝を盗むとは」
「にわかには信じられない」
それぞれ思ったことを口にするから収拾がつかなくなる。
「それは、確かなのか?」
ヴァイオレンツがずいっと一歩前に出る。
「ええ、もちろん。わたくしの友人の証言に間違いはないわ。彼女は魔法を使ってその時の様子をわたくしと、ここにいるリーゼロッテにも見せてくれたわ。彼女も驚いていた。犯人が、わたくしの友人から彼女の宝物を奪った人間が、彼女と過去に関わった者たちだったから」
「黄金竜であられるこちらのご婦人が嘘を言っていると考えている不届き物はいないわよねぇ。人間よりもはるかに高い魔力を有する黄金竜の使う魔法が間違っている、なんてまさか考えていないですよねぇ」
と、ティティがいつもよりも威圧的な声を出した。
ふよふよと、わたしとレイアの周りを一周し、半透明の透き通った姿をしたティティは背自分が精霊であることを誇示しているのか、髪の毛がちりちりと炎のように揺らめている。
「炎の精霊……」
だれかが呟いた。
「ともかく、フローレンスの元へ案内なさいな」
レイアの美しい声が響き、人々がハッとしたように動き出した。
この場にいる全員が、黄金竜から妙齢の女性へと姿を変えたレイアを目撃している。
魔法学園の偉い人がレイアを案内し、わたしとティティも一緒に中へ入ることにする。ついでにヴァイオレンツも付いてきた。
彼はずっと険しい顔をしている。
自分の愛する人が盗みを働いた、なんて聞かされたら無理もないか。映像を観たわたしだってどうしてってずっと思っているのに。
ついこの間まで学んでいた学舎に若干の懐かしさを感じつつ、わたしは建物の中を歩いていく。ティティは物珍しそうにふわりと天井付近まで浮き上がったり、窓から外を眺めたり、基本自由。
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