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第3章 ダンジョン編
飲んだくれの魔女
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陽が陰り、太陽の代わりに人工物の光が町を照らすこの時間は、酒場が最も賑わうかきいれ時である。
給仕の娘が注文を受けては忙しく走り回り、料理を届けていく。今日は特に人が多い。いつもよりがやがやと酒場の中は、注文も多かった。
そんな時だからか、給仕の娘はいつもなら絶対にしない失敗をした。両手に皿を持ち、料理を運んでいる足が、駆け足になっていたという事もある。
「あっ!」
忙しなく動いていた給仕の視界が揺らぐ。足をもつれさせたと気が付いたときには既に遅く、重力に従って、身体ごと皿が床に落ちようとしていた。
給仕は、床にぶつかる痛みと、聞こえてくるであろう皿の割れる音に備えてギュッと目を瞑る。
「……?」
しかし、予想に反して皿の割れた音は聞こえず、逆にポフッ、という気の抜けた音が給仕の耳に届いた。
おそるおそる目を開けてみると、大きな胸とメイド服が飛び込んできた。
「大丈夫?」
「は、はい。ありがとうござ――」
お客様に迷惑をかけたと思った給仕が、精一杯の笑顔を浮かべようとして、固まった。
(……綺麗な人)
スラリと伸びた鼻に、美しい桜色の唇。切れ目がちな瞳は、クールな印象を抱かせて、実に大人の女性らしい。
自分のようなカサついて硬い肌とは無縁なくらいに身体も柔らかかった。
十人いれば十人が振り返るような容姿の女性を見て、なぜ今日がこんなにも混んでいるのか悟った。
(ああ。みんなこの人が目当てなんだ)
よくよく見渡してみれば、女性の冒険者よりもむさ苦しい男のほうが多い。その大半も、喋りながらチラチラとメイドの女性を窺っているのがバレバレである。
(そりゃこんなに美人ならね)
同性である給仕でさえも見惚れてしまったほどだ。男などイチコロだろう。
「ねえ、聞こえてる?」
「は、はひ!? な、なんでしょう!」
「ぼーとしてるけど、料理運ばなくていいの?」
「あ!! そうでした!」
「これ、ちょっと形か崩れたけどちゃんと受け止めたから」
「あ! 重ね重ねありがとうございます!」
「いいのよ。じゃ、頑張ってね」
メイドの女性は給仕に料理を返すと、そのまま自分の席へと戻っていった。
料理が遅れたことを謝ってから、厨房に戻る途中にチラリと女性の方へ視線を向けると、これまた美人な女の人が傍にいた。
(綺麗な黒髪。ローブがなんか変わっているけど、あの人が主人なのかな?)
美人の主人に美人のメイド。まさに物語のような組み合わせだった。
(――と、いけないいけない。集中集中)
また同じミスをしないためにも、給仕は頭を振って気持ちを切り替えると、駆け足で仕事に戻っていった。
******
「あ、メイドちゃんお帰りー」
クレハが酒場での情報収集から戻ってくると、机の上には大量のエールがこれでもか、というほどに並べられていた。
驚くべきことに、机を埋め尽くさんとするほどのエールは、全て空き瓶となっていた。
「……フィア様。またこんなにお酒を飲んだんですか?」
「ちょっとよ、ちょっと! ほんのすこーし、酔うくらいしか飲んでないわよ」
顔を真っ赤にして、ジョッキを振り回すフィアを見たクレハは、深いため息を吐く。
クレハがフィアに助けられ、ついて回るようになって早数日。
助けられてすぐの時は、伝説にもなっている偉大な魔法使いだということもあり、それなりに尊敬していた。
だが、そんなものはすぐに崩れた。
思いつきで行動してはクレハを振り回すだけではなく、昼間からお酒を飲むんでは寝過ごしたりする。
ここ数日で、クレハの中での英雄像はボロボロになってしまった。
「もうこれ以上はダメです。明日にも支障がでます」
「えーメイドちゃんのケチー」
「ケチでいいです。そんなことよりも、例の話をしましょう」
酔っ払いにいつまでも付き合ってられないとばかりに、クレハは話を進めていく。
「はいはい。えーと……ほい」
フィアが指を鳴らすと、二人の周囲から音が消える。
展開されたのはかなり強力な防音結界であり、外からの音を遮断するだけでなくこちらの声も聞こえなくする優れた魔法だ。
「で、どうだったの?」
残っているお酒をチビチビ飲みながらフィアが尋ねると、クレハは小さく首を振った。
「ここにもリリアお嬢様らしい人物の情報はありませんでした」
「なるほど。これで三つ目の町も駄目だったわけね」
フィアが机を叩き、空中に地図を出現させると赤い×マークを付ける。
その地図には、北に王都が描かれている。王都を南に下ると、広大な魔の森が地図一杯に広がっており、魔の森を迂回した西にマルセイユ領が、東にドーントレス領が存在している。
現在クレハたちがいる町は、王都から見て南西側にあるタルミナの町にいた。
アージス家が魔の森に向かったという情報を元に、リリアがマルセイユ辺境伯の元へと向かったのではないかと、クレハが予測を立てたのだ。
その予測に従い、フィアの転移魔法を使ってマルセイユ領に行くと、確かにリリアはマルセイユ領にいた。
だが、既にリリアが発った後だった。
「まさか入れ違いだとはねー」
「私の体力回復など待っているべきではありませんでした」
「でも、無事だってわかったからいいじゃない」
「それは……まあ、そうですね」
「それよりも、私としては先祖返りを起こした獣人の伴侶があんな美人なことに驚いたよー。まさに美女と野獣だね」
「マルセイユ伯は大変な愛妻家だと聞いていたので、後妻をとったと聞いた時には聞き間違えかと思いました」
クレハたちが辺境伯の屋敷を訪れた丁度その日に、新しい後妻が王都からやってきた日だと聞いたときはかなり驚いた。
王都から連れてくる際には、色々と問題があったらしいが、マルセイユ辺境伯はそれら全てを解決して、後妻を向かい入れたらしい。
「孕まされて、それでも領主を想って身を引いた女性らしいし、幸せになってほしいね」
「本当にその通りです」
軽い馴れ初めを聞いた時は、その物語のような話にクレハは不覚にもときめいてしまったのは内緒である。
「だからこそ、こうしてマルセイユ領から王都へ続く町で情報収集しているのですが……」
「まったく情報が集まらないっと。いやーまいったね。これだけ人目を忍んでいるってことは、町みたいな人の集まる場所には寄らないつもりなのかもね」
「それは、困りますね。フィア様の魔法でどうにかならないのですか?」
「んーできなくはないけど、あまりオススメしないかな」
ひょうひょうとしているフィアの顔が、珍しく困ったようなものに変わる。
「なぜです? 躊躇う理由などないと思います」
「勘だけど、いまリリアちゃんを護衛しているのは私の知り合いなのよ」
「なら、なおのこと問題ないのでは?」
「いやーその二人ってかなり強いの。だから私が超広範囲の探知魔法なんて使えばすぐに気付かれて、リリアちゃんごと雲隠れされちゃう。そうなったら、余計に見つけるのが難しくなると思うよ」
「上手くはいかないってことですね」
クレハはあからさまに落胆してしまう。
「まあ、焦らずいこう。私たちが見つけられないのと同じで、王都の人間たちも見つけられてないからね」
「……私としては、早くリリアお嬢様の元気な顔を見たいです」
「元気な顔ねぇ」
フィアが、頬杖をつきながらニヤニヤと嫌らしい笑みをクレハに向ける。
「リリアちゃんのこと、本当に好きみたいね?」
「当り前です。リリアお嬢様は私が信を捧げるに足る唯一の人物なのですから」
「その好きってさ、こっちのほう?」
片手で丸を作ると、穴の中に指を入れて出したり入れたりする動作を繰り返す。
一瞬、なんのことだか分からずに首を傾げたが、その意味がなんなのか理解できたクレハは、思わず湯気を出す勢いで顔を真っ赤にして、テーブルを叩く。
「違います! 私のリリアお嬢様に対する気持ちはそんな下世話なものではありません! それに私とリリアお嬢様は同性です!」
「そこ気にするところ? 私もそうだけど無駄に寿命が長いと性に対して結構おおらかになるよ? 同性愛くらいの関係ならエルフではよくあると思うけど」
「…………」
フィアの言葉に、クレハは押し黙ってしまう。
クレハは五十を少し超えた程度と、エルフの中でもかなり年若い。エルフの性事情など教えられる前に里を飛び出してしまった為、エルフの性事情については詳しくないのであった。
「好きなら押し倒しちゃえばいいのに。あんまりヘタレていると、後悔するよ?」
「別に……ヘタレてなど」
「獲られてから、無くなってからじゃ遅いの今頃リリアちゃんだって、男の子とパコパコ腰を打ちつけ合っているかもしれないよ? あ、これ経験則ね」
「リリアお嬢様がそんなことするわけありません!」
「わからないよぉ? 清純そうな子は、案外コロッと流されちゃうからね」
「……もしそんなことになっていたら、私はその男性の性器を切り落とします」
極めて真顔で言い切るクレハに、フィアは苦笑する。
「リリアちゃんと付き合う男性は大変そうだね」
「当然です。私が仕えるようになる相手でもあるんですから」
つまり、リリアと付き合うとうるさい小姑がおまけに付いてくるわけである。
リリアを娶るであろう未来の旦那に、心の中で合掌しながらジョッキを呷ると、中身がないことに気が付く。
「あり? もうなくなっちゃった。仕方ない。すみませーん! エールもう一杯!」
フィアが張っていた結界を解き、ジョッキをぶんぶんと振る。
「まだ飲む気ですか!? ダメだって言ったじゃないですか!」
「いーのいーの。ほら、メイドちゃんも付き合ってよ」
「……倒れる前に止めますからね」
「わかってるわかってる。あ、エールの大二つお願い! あとは焼き鳥とそれから――」
次々と注文していくフィアに、顔を引きつらせながらもクレハは結局最後まで付き合ってしまうのであった。
給仕の娘が注文を受けては忙しく走り回り、料理を届けていく。今日は特に人が多い。いつもよりがやがやと酒場の中は、注文も多かった。
そんな時だからか、給仕の娘はいつもなら絶対にしない失敗をした。両手に皿を持ち、料理を運んでいる足が、駆け足になっていたという事もある。
「あっ!」
忙しなく動いていた給仕の視界が揺らぐ。足をもつれさせたと気が付いたときには既に遅く、重力に従って、身体ごと皿が床に落ちようとしていた。
給仕は、床にぶつかる痛みと、聞こえてくるであろう皿の割れる音に備えてギュッと目を瞑る。
「……?」
しかし、予想に反して皿の割れた音は聞こえず、逆にポフッ、という気の抜けた音が給仕の耳に届いた。
おそるおそる目を開けてみると、大きな胸とメイド服が飛び込んできた。
「大丈夫?」
「は、はい。ありがとうござ――」
お客様に迷惑をかけたと思った給仕が、精一杯の笑顔を浮かべようとして、固まった。
(……綺麗な人)
スラリと伸びた鼻に、美しい桜色の唇。切れ目がちな瞳は、クールな印象を抱かせて、実に大人の女性らしい。
自分のようなカサついて硬い肌とは無縁なくらいに身体も柔らかかった。
十人いれば十人が振り返るような容姿の女性を見て、なぜ今日がこんなにも混んでいるのか悟った。
(ああ。みんなこの人が目当てなんだ)
よくよく見渡してみれば、女性の冒険者よりもむさ苦しい男のほうが多い。その大半も、喋りながらチラチラとメイドの女性を窺っているのがバレバレである。
(そりゃこんなに美人ならね)
同性である給仕でさえも見惚れてしまったほどだ。男などイチコロだろう。
「ねえ、聞こえてる?」
「は、はひ!? な、なんでしょう!」
「ぼーとしてるけど、料理運ばなくていいの?」
「あ!! そうでした!」
「これ、ちょっと形か崩れたけどちゃんと受け止めたから」
「あ! 重ね重ねありがとうございます!」
「いいのよ。じゃ、頑張ってね」
メイドの女性は給仕に料理を返すと、そのまま自分の席へと戻っていった。
料理が遅れたことを謝ってから、厨房に戻る途中にチラリと女性の方へ視線を向けると、これまた美人な女の人が傍にいた。
(綺麗な黒髪。ローブがなんか変わっているけど、あの人が主人なのかな?)
美人の主人に美人のメイド。まさに物語のような組み合わせだった。
(――と、いけないいけない。集中集中)
また同じミスをしないためにも、給仕は頭を振って気持ちを切り替えると、駆け足で仕事に戻っていった。
******
「あ、メイドちゃんお帰りー」
クレハが酒場での情報収集から戻ってくると、机の上には大量のエールがこれでもか、というほどに並べられていた。
驚くべきことに、机を埋め尽くさんとするほどのエールは、全て空き瓶となっていた。
「……フィア様。またこんなにお酒を飲んだんですか?」
「ちょっとよ、ちょっと! ほんのすこーし、酔うくらいしか飲んでないわよ」
顔を真っ赤にして、ジョッキを振り回すフィアを見たクレハは、深いため息を吐く。
クレハがフィアに助けられ、ついて回るようになって早数日。
助けられてすぐの時は、伝説にもなっている偉大な魔法使いだということもあり、それなりに尊敬していた。
だが、そんなものはすぐに崩れた。
思いつきで行動してはクレハを振り回すだけではなく、昼間からお酒を飲むんでは寝過ごしたりする。
ここ数日で、クレハの中での英雄像はボロボロになってしまった。
「もうこれ以上はダメです。明日にも支障がでます」
「えーメイドちゃんのケチー」
「ケチでいいです。そんなことよりも、例の話をしましょう」
酔っ払いにいつまでも付き合ってられないとばかりに、クレハは話を進めていく。
「はいはい。えーと……ほい」
フィアが指を鳴らすと、二人の周囲から音が消える。
展開されたのはかなり強力な防音結界であり、外からの音を遮断するだけでなくこちらの声も聞こえなくする優れた魔法だ。
「で、どうだったの?」
残っているお酒をチビチビ飲みながらフィアが尋ねると、クレハは小さく首を振った。
「ここにもリリアお嬢様らしい人物の情報はありませんでした」
「なるほど。これで三つ目の町も駄目だったわけね」
フィアが机を叩き、空中に地図を出現させると赤い×マークを付ける。
その地図には、北に王都が描かれている。王都を南に下ると、広大な魔の森が地図一杯に広がっており、魔の森を迂回した西にマルセイユ領が、東にドーントレス領が存在している。
現在クレハたちがいる町は、王都から見て南西側にあるタルミナの町にいた。
アージス家が魔の森に向かったという情報を元に、リリアがマルセイユ辺境伯の元へと向かったのではないかと、クレハが予測を立てたのだ。
その予測に従い、フィアの転移魔法を使ってマルセイユ領に行くと、確かにリリアはマルセイユ領にいた。
だが、既にリリアが発った後だった。
「まさか入れ違いだとはねー」
「私の体力回復など待っているべきではありませんでした」
「でも、無事だってわかったからいいじゃない」
「それは……まあ、そうですね」
「それよりも、私としては先祖返りを起こした獣人の伴侶があんな美人なことに驚いたよー。まさに美女と野獣だね」
「マルセイユ伯は大変な愛妻家だと聞いていたので、後妻をとったと聞いた時には聞き間違えかと思いました」
クレハたちが辺境伯の屋敷を訪れた丁度その日に、新しい後妻が王都からやってきた日だと聞いたときはかなり驚いた。
王都から連れてくる際には、色々と問題があったらしいが、マルセイユ辺境伯はそれら全てを解決して、後妻を向かい入れたらしい。
「孕まされて、それでも領主を想って身を引いた女性らしいし、幸せになってほしいね」
「本当にその通りです」
軽い馴れ初めを聞いた時は、その物語のような話にクレハは不覚にもときめいてしまったのは内緒である。
「だからこそ、こうしてマルセイユ領から王都へ続く町で情報収集しているのですが……」
「まったく情報が集まらないっと。いやーまいったね。これだけ人目を忍んでいるってことは、町みたいな人の集まる場所には寄らないつもりなのかもね」
「それは、困りますね。フィア様の魔法でどうにかならないのですか?」
「んーできなくはないけど、あまりオススメしないかな」
ひょうひょうとしているフィアの顔が、珍しく困ったようなものに変わる。
「なぜです? 躊躇う理由などないと思います」
「勘だけど、いまリリアちゃんを護衛しているのは私の知り合いなのよ」
「なら、なおのこと問題ないのでは?」
「いやーその二人ってかなり強いの。だから私が超広範囲の探知魔法なんて使えばすぐに気付かれて、リリアちゃんごと雲隠れされちゃう。そうなったら、余計に見つけるのが難しくなると思うよ」
「上手くはいかないってことですね」
クレハはあからさまに落胆してしまう。
「まあ、焦らずいこう。私たちが見つけられないのと同じで、王都の人間たちも見つけられてないからね」
「……私としては、早くリリアお嬢様の元気な顔を見たいです」
「元気な顔ねぇ」
フィアが、頬杖をつきながらニヤニヤと嫌らしい笑みをクレハに向ける。
「リリアちゃんのこと、本当に好きみたいね?」
「当り前です。リリアお嬢様は私が信を捧げるに足る唯一の人物なのですから」
「その好きってさ、こっちのほう?」
片手で丸を作ると、穴の中に指を入れて出したり入れたりする動作を繰り返す。
一瞬、なんのことだか分からずに首を傾げたが、その意味がなんなのか理解できたクレハは、思わず湯気を出す勢いで顔を真っ赤にして、テーブルを叩く。
「違います! 私のリリアお嬢様に対する気持ちはそんな下世話なものではありません! それに私とリリアお嬢様は同性です!」
「そこ気にするところ? 私もそうだけど無駄に寿命が長いと性に対して結構おおらかになるよ? 同性愛くらいの関係ならエルフではよくあると思うけど」
「…………」
フィアの言葉に、クレハは押し黙ってしまう。
クレハは五十を少し超えた程度と、エルフの中でもかなり年若い。エルフの性事情など教えられる前に里を飛び出してしまった為、エルフの性事情については詳しくないのであった。
「好きなら押し倒しちゃえばいいのに。あんまりヘタレていると、後悔するよ?」
「別に……ヘタレてなど」
「獲られてから、無くなってからじゃ遅いの今頃リリアちゃんだって、男の子とパコパコ腰を打ちつけ合っているかもしれないよ? あ、これ経験則ね」
「リリアお嬢様がそんなことするわけありません!」
「わからないよぉ? 清純そうな子は、案外コロッと流されちゃうからね」
「……もしそんなことになっていたら、私はその男性の性器を切り落とします」
極めて真顔で言い切るクレハに、フィアは苦笑する。
「リリアちゃんと付き合う男性は大変そうだね」
「当然です。私が仕えるようになる相手でもあるんですから」
つまり、リリアと付き合うとうるさい小姑がおまけに付いてくるわけである。
リリアを娶るであろう未来の旦那に、心の中で合掌しながらジョッキを呷ると、中身がないことに気が付く。
「あり? もうなくなっちゃった。仕方ない。すみませーん! エールもう一杯!」
フィアが張っていた結界を解き、ジョッキをぶんぶんと振る。
「まだ飲む気ですか!? ダメだって言ったじゃないですか!」
「いーのいーの。ほら、メイドちゃんも付き合ってよ」
「……倒れる前に止めますからね」
「わかってるわかってる。あ、エールの大二つお願い! あとは焼き鳥とそれから――」
次々と注文していくフィアに、顔を引きつらせながらもクレハは結局最後まで付き合ってしまうのであった。
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