秘めた思いと繋がり

しぎょく

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中川兄弟と生徒会会長

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 八年ぶりに再会が出来た、双子の兄浩。
 朝起きた時、ベッドに浩はいなかったけれど、浩がいたことは確かだった。

 「ひろ・・・・・・」

 ベッド脇に浩が書いたメモが置いてあった。
 『飯食ったらさっさと薬を飲め』というただそれだけだった。
 それでも僕は嬉しかった。
 八年も離れていて、この学園に来て運命の再会。部屋も同室だと思わなかった。
 一瞬誰かに仕組まれていたのではないかと思ったけれど、僕達が兄弟だという事はこの学園の書類には一切書いていないはずだ。だから、これは偶然の偶然が重なった奇跡だとしか思えなかった。
 浩は何処に行ったのだろう。多分僕が眠ってから部屋を出て行ったのだと思うけれど、それから戻ってきた形跡がなかった。
 この学園にいる限り、同じ寮で同じ部屋である限り浩には会える。
 今、この場にいないからと言って、騒ぐ必要はない。

 「おなか・・・・すいた」

 お腹がグーっと鳴った。体の調子がいい証拠だ。
 朝食をとる為、食堂に行った僕は、先に食事をしていた志気君たちに誘われ、一緒に食べる事になった。

 「聞いたよ志気に。ファボット君って、中川君の弟さんだったんだって?それも双子って、すごいね。」

 「え・・・・あ・・・・はい」

 どうやら志気君から話を聞いたみたいだ。

 「二卵性でよかったんだよな?」

 「はい、そうです。一卵性だったらすぐに分かったと思うのですが、僕たちは二卵性。双子といってもほとんど似ていませんが・・・・」

 僕と浩はあまり似ていない。
 男は母親に似るといわれているけど、僕たちは母に似ているのか、父に似ているのかよく分からない。
 僕と浩では髪の色も目の色も違う。体系も明らかに違うので、一緒なのは誕生日と血液型ぐらいとしか言えない。

 「ファボット君って誰似なの?お父さん?お母さん?」

 「その、どちらもです。兄の浩もそうです」

 僕の髪の色は父親似。目の色は母親似。浩はその逆だったりする。
 顔は多分、僕はよく周りから母に似ていると言われるので、母に似ていると思う。浩は、僕が覚えている限り、母に似ている所と父に似ている所のどっちも持っているはずだ。もう、父の顔などほとんど覚えていないので、はっきりとは分からないけれど、多分そう。

 「まぁ、八年も離れ離れになっていた兄弟がここで再会できて良かったと俺は思うよ」

 「もう、仲が良かった昔の僕達ではないですが・・・・会えただけでも嬉しいです。浩はどう思っているのかは分かりませんが、それでもいいです」

 二人の関係がギクシャクしていてもいい。きっと浩に分かってもらえたら僕はいいと思っている。
 浩が僕の事を嫌っていても、僕は浩の事が大好き。僕にとって浩はたった一人の兄弟。大切な兄。たとえ、どんなに深い溝があってもきっと埋めてみせる。

 「なぁ、さっきから話しているのはいいが、大丈夫なのか時間」

 「え?もうそんな時間?」

 食堂の時計を見ると、既に八時を回っていた。

 「澄君。まだ食べ終わってないからといって、別に急いで食べる必要はないぞ。体の事もあるし、ゆっくり食べなさい」

 僕が食堂にやって来たとき、二人は既に食べ終わっていたみたいだったけれど、僕が来たことでお茶の飲みながら一緒にいてくれた。
 基本食べるのがゆっくりで、迷惑をかけると思い、急いで食べようとした。でも、急いで食べるのは体にはあまりよくないので、結局ゆっくり食べる事になった。
 僕が食べ終わるまで二人は待っていてくれて、その上、部屋まで送ってもらった。

 「そういえば、てっきりファボット君は、中川君と一緒に来ると思っていたけど、一緒じゃなかったんだね」

 「朝起きたときに、いなかったので、僕が眠ってしまった後に何処かに行ったんだと思います」

 「そうか・・・・それは残念だな」

 「いいんです。僕は気にしていませんから」

 気にならないわけではないけれど、浩は浩。浩が好きなようにしたらいいと僕はそう思っている。だから、僕も好きなようにする。それがたとえ浩が嫌がっていたとしても。

 「分かった。それならいいが、体が大丈夫なら、行く用意して、待っていてくれ。こっちも用意が終わったら、迎えに来る」

 ぽんっと頭を手を乗っけるように僕の頭を叩いてから、志気君たちは部屋に戻っていた。
 部屋の中に入った僕は、帰っているのではないかと思い、ベッドを覗いてみたけれど帰って来た様子はなかった。
 ため息をつきながら、自分のベッドがある場所まで行き、薬を飲んでから、行く準備をした。
 朝飲む薬は眠たくなるような成分は入っていない。
 お昼も薬を飲まなくてはいけないけれど、お昼に飲む薬は眠たくなる成分が入っているので、厄介だ。
 もって行きたくないけれど、持っていないと何が起こるのか分からないので、仕方がなく鞄の中に入れた。
 用意は出来たので、志気君達が迎えに来てくれるのを待って、後は高等部の校舎に行くだけ。
 もし、僕がいない間に浩が帰ってきたらと思い、メモを残しておくことにした。
 そういえば、浩はちゃんと授業を受けているのだろうか。
 クラスも知らないし、いつも何処で何をしているのだろう。
 それに噂のことも気になる。

 コンコン

 きっと志気君達が迎えに来たのだろうと思い、勝手に入ってくればいいのにと思いながら、扉を開けた。

 「君が澄君ね。聞いていた通りだわ。とても可愛いわー。さぁ参りましょう、私のナイト様。貴方が今から行かなければならない場所へ」

 てっきり志気君達が迎えに来てくれたと思い、扉を開けてでたのに、扉をあけると、僕の目の前には見慣れない女性と、とても大きな、黒服を着てサングラスをかけた男の人が二人立っていた。
 女性は制服を着ていたので、この学園の生徒だと言う事がすぐに分かったけれど、この男性は一体何者なのだろう。それに、ここは男子寮。女子禁制の場所であるはずなのに、どうして女の人がいるのだろう。
 手を差し伸べられたけれど、手を取ってもいいのだろうか。
 何がなんだかまったくわけが分からない。
 後、ナイトって何。僕が、この人のナイト。ナイトって日本語で騎士のことだよね。どうして、僕がナイトなのか、理解できない。

 「さぁ、お前たち、澄君を丁重に下までご案内して頂戴。万が一澄君に手荒な事をするとお仕置きするわよ」
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