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なんで怒るのかわからない
しおりを挟む昼過ぎのお茶の時間にハリーが戻ってきた。
実りの多い視察だったのか、表情が生き生きとしてる。
「学院ができてまだ三年…四年?と聞いてたけど、あれはいいね。リーデンベルグの学院は十二歳からだろ?」
「だね」
「ここの学院も学院生としては十二歳からだけど、三歳から通えるんだ」
「…三歳、って」
「三歳頃に魔力暴走を起こすことが多いらしいから、その子達に遊びの中で魔力操作を教えているらしい。全て王弟妃殿下の発案らしい」
納得した。
さすがハルの元になった方だ。
ハルも子供にとても心を砕いてた。
うんうんって頷いていたら、ハリーの手が僕の頬に触れた。
「エリアスはなにしてたの?」
「えと…、お昼前はお茶会に誘われて」
緊張したけど楽しかったこととか、ミアと二人で昼食を摂ったこととか話した。
そしたらハリーの眉間にしわが寄ってく。
「ハリー?」
「イレミアスとずっと二人だけだったんだ?」
「え、いや、王妃様も、王弟妃様もいらっしゃったけど…」
「それ以外はイレミアスと二人きりだったんだよね?」
ハリーがどんどん僕との距離を詰めていく。
「じ、じょの、ひとも」
「使用人は数に入れないでしょ」
ハリーの綺麗な目が僕を見続ける。
僕の護衛騎士であるミアと二人でいて何が悪いの…とか、僕が誰と一緒にいてもハリーには関係ないでしょ、とか。言いたいことは色々あるけど、それを口に出せるような雰囲気じゃなかった。
「ハリー」
頬を撫でてた指が唇を撫でた。
その途端、ゾクリと僕の背中が粟立つ。
「可愛がってもらった?」
「…え?」
「イレミアスに、たくさん」
唇を撫でてた指が僕のシャツの上を這って、二人にいじられて敏感になった先端をつまみ上げてきた。
「ひ…んんっ」
「こうやって、いつものように」
「あ、や、やっ」
「大好きな台詞を囁いてもらいながら、イレミアスの手に触られて、感じて、奥の一番感じるところまで差し出した?」
「あ、いた……っ、はりい、いたぃ、い…、ぁ、んんっ」
ハリーの豹変の理由がわからない。ただわかるのは、ハリーが怒ってるってこと。
なんで突然……って、僕の頭の中はぐちゃぐちゃになった。
「殿下、お弄れはおやめください」
ちぎれそうなくらい痛くて涙が流れたとき、ハリーの手をミアが止めた。
「……イレミアス、前々から思っていたけど、私は一切譲る気はないんだよ」
「それは、自分もです」
「護衛は護衛らしく口出ししないでほしいな。それに私は王族だよ?子爵家の次男の君が、何故私の行動を止めるのかな」
「殿下がだれであっても、自分はエリアス様の護衛です。…エリアス様が泣かれているのに、静観できるわけもありません」
「エリアスは少し痛みがあるほうが感じるんだよ。痛いと涙しながら、もう勃たせている。エリアスは痛みで快楽を得る好き者で、淫乱なんだ」
「殿下っ」
ハリーの言葉に僕の顔がものすごく熱くなった。
確かに、僕の股間部分は膨らんでる。服越しの痛みしか与えられてないはずなのに、涙が出るくらい痛いのに、僕の体は何故か快感を拾ってる。
「や……やだ…っ」
ハリーの手から逃げて、椅子の上で足を抱えた。
たしかに僕は気持ちのいいことが好き。でもそれは、書物通りに抱かれるのが大好きなだけ。ハルと同じことをされて満たされてるだけ。ミアやハリーの声でクリフトの台詞を囁かれれば、あっという間に達してしまう。
でも、こんな、書物と全く関係ないことで、しかも痛みを与えられて感じてしまうのは、違う。
こんな、こんなの、僕が、ただ、本当に、変態で、淫乱な、体になってしまったようで……。
「ちが……ちがうもん……っ、ちがう……っ」
僕は二人の前で小さな子供のように泣きじゃくってしまった。
足を抱えて、膝に顔を埋めてた。
近くで荒く椅子を動かす音と、明らかな舌打ちの音がする。
はっと顔を上げたら、ハリーは内扉から隣の部屋に戻っていくところだった。
その背中に僕は拒絶されたような気がして、余計に涙が出てくる。でも、追いかけることはできなかった。
「エリアス様…」
ミアは傍にいてくれた。
その場に膝をついて、僕を少しだけ見上げるような姿勢で、背中に手が触れてくる。
ミアがいつもと同じ優しい腕で僕を抱き寄せる。
でも僕は、そんなミアを抱き返すことができなかった。
もう自分がどうして泣いてるのかもわからない。
痛みも熱も、もう感じない。
ハリーが帰ってきて楽しかったのに。
なんでこんなことになってるんだろう。
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