伯爵令息は心トキメク恋がしたい!〜指南書は恋愛小説。R18ってなんですか?〜

ゆずは

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お茶会の続きは甘いクッキーで

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「エリアス様、ご昼食はこちらでどうですか?」
「え?」
「我慢の効かない人たちが主催をかっ攫って…………いえ、拉致、いえ、まあ、とにかく」

 ……昨日からよく見るこの侍女の人、王族の皆様方に容赦がない。いいのかな。不敬罪で捕まったりしない?

「大丈夫です。私の発言は殿下方に聞かれてませんし」
「え」

 な、なんで、思ってたことが伝わったんだろう?
 僕、声に出してたのかな。
 不安になってミアを見たら、困ったように笑われて、微かに首を横に振られた。

「お声にはでていませんよ。大丈夫です!」
「え、あ、はい」

 二回も大丈夫って言われた。

「主催がいなくなったので茶会自体はお開きなのですが、この場所はまだ使えますし、お城の護衛騎士は庭園の外で警護に当たっています。この場でなら誰の目も気にせずに様とお二人でお茶もお食事もできますよ?」

 その侍女さんは、笑顔を崩さずにそんな提案をしてくれた。
 それもいいかな。
 ミア、ずっと立ってるばかりだし。

「ミア、一緒にお茶しよ?」
「……………わかりました」

 ちらっと見上げて言ったら、ミアは更に困ったような顔をして笑って頷いてくれた。
 ミアが僕の隣に座ってくれる。
 王族との食事に誘われたら、ミアは同席できない。それがずっと嫌だった。
 侍女さんは新しいお茶の準備をしてくれる。
 僕とミアの前に新しい紅茶を置くと、「食事の準備をしてまいりますね」と、席を外した。

「ね、ミア、このお菓子すごく美味しかったよ」

 指でつまんだお菓子をミアの口元につけたら、苦笑したミアが口を開けてくれた。
 その口の中にお菓子を入れて、咀嚼する様子をじっと見つめる。

「……茶会は楽しくなかったですか?」
「え?」
「ずっと緊張されていたでしょう」
「そりゃ、緊張はするよ。僕にとって王族なんて関わることのない人たちなんだから」
「ハインリヒ殿下とは気安く付き合ってるじゃないですか」
「ハリーはね、いいの。幼馴染みみたいなものだし」

 もう一つミアの口に入れたら、指を舐められた。

「それより、やっぱり、王弟殿下と王弟妃様は、あの二人の元になった方々だよ!」
「そうですか?」
「うん。絶対!僕の勘は外れない、気がする!」

 力説したらミアがくすっと笑う。

「…また騒ぎ出したとか、馬鹿にしてる?」
「そんなことありませんよ」

 目を細めるミア。
 そんな表情にドキリとして、僕は慌ててお菓子の方に視線を移した。
 グラスの中に、細長いクッキーのようなお菓子が飾られてる。
 なんとなく手に持ったら、表面が少しザラッとしてて、口に入れたら甘みが広がった。どうやらザラザラしてたのは砂糖のようで、クッキーよりは固くてポリポリ音がする。

「初めて見るお菓子ですね」
「うん」

 もう一本手に持って、ようやく思い出した。

「ん!」

 僕は次の一本を口に咥えて、ミアに向かって突きだす。
 その仕草を見てミアも思い出したみたい。
 僕の反対側をパクって口に入れて、お互い無言で――――無言になるしかないんだけど――――、それを食べていく。

「……」

 間近に迫るミアの綺麗な瞳。
 今それはまっすぐまっすぐ僕だけを見てる。
 いつもキスなんてたくさんしてるし、それ以上にやらしいこともたくさんしてる。
 なのに、そんなときよりも胸がドキドキしてくるし、何故かすごく恥ずかしい。
 口にはお菓子を咥えてるから、鼻、鼻から息を吸うけど……、鼻息荒くない!?いま、今っ、僕、『ふが』って変な音ださなかった!?

「ぶ」

 吹き出したミアが、僕との間でクッキーを折った。

「エ、エリアス、さま…っ」

 眉間にしわを寄せて、目尻に涙をためながら笑うミアは珍獣並みに珍しいけど……。

「そ、そんなに笑うことないだろ……!」
「だって、『ふが』ですよ?『ふが』……って……っ」
「ううう~~!!!!」

 わかってる。
 僕が怒ってるのはただの照れ隠しで、顔は真っ赤だってこと、わかってる。

「そ、そんなに笑うこと無いだろ……っ!!は、恥ずかしくて、思わず変な息になっちゃったけど……!!」

 ふんふん!ってそれこそ鼻息荒く、長いクッキーを指でいじっていたら、ひょいとそれを取り上げられた。

「ミ」

 ミアと呼びかけた口に、クッキーを入れられる。
 ミアは笑顔で反対側に食いつくと、一口で距離を詰めてきた。

「んぅ」

 腰を抱かれる。
 座ってるのに体がくっつく。
 口の中のクッキーを咀嚼してると、ミアの舌で嬲られる。

 ――――ハルから仕掛けたのにクリフトに翻弄される結果にしかならにくて、主導権はあっさりと向こうがかっさらっていったっけ。

「…っ、ふぁ、ぁっ」

 噛み砕かれたクッキーをお互いに嚥下しても、僕の口は解放してもらえない。味すらも残らないくらい唾液を交わして、それも飲み込む。
 ……主導権なんて、あっさり取られた。
 それでも僕が「嫌だ」と一言口にしたら、ミアはすぐにひいてくれるけど。

「ん、くっ、ん、んん」

 それがわかってるから、僕は絶対に「いや」って言わない。
 僕のミアが僕から手を離すのなんて、絶対に許さないんだから。
 ……例え、ミアの好きな人がミアの前にいたとしても。








*****
「……ああ、やっぱり。殿下は『婚約者になる予定』と言ってたかしら?あらあら…これはどうなのかしら。もしかして、了承済み?三人で閨に……?……ふふ。いいわ。これはいいわ」

花垣の向こうからこっそりがっつり覗き見る例の侍女一名…(笑)
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