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親友をオカズにシてしまった side:征人
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しおりを挟む粗方食べ終わった頃、奏汰さんがお茶を飲みながら俺に視線を向けてきた。
「――――で、征人君は僕に何か相談したいことがあるんだって?」
「え」
突然言われたことに、はっと智大を見ると、ぺろりと舌を出して「ごめん」って小さく言った。
はぁ。
もう勝手に。
まぁ、奏汰さんに相談したいとは、思っていたけど。
「えっと……」
「話しにくいことなら、俺とちーちゃん、向こうに行こうか?」
そう言って、啓さんが立ち上がろうとしてる。
「あ、いえ、いいんです。うーん……」
しかし、なんて言えばいいんだ。
いきなり、「勃たなくて」なんて言えないし。
「……あのね、パパ、まさがね、『勃たない』って言ってて」
「ちょー!?」
「膝抱えて泣いてたんだよ」
「いや、泣いてないし!?」
なんてことをぶちまけるんだ…智大!!
俺がどう話そうか悩んでるうちに、核心言いやがった。
「勃たない、ねぇ…」
半分、笑われるんじゃないかって思ってたけど、意外と奏汰さんと啓さんは真剣に考え始めてくれた。
「何か原因とか思いつかない?」
「あ、えと、原因は……よくわかんなくて」
「こういうのって、結構精神的な負荷から来ることもあるよね。……俺のゲイ仲間がさ、ずっとゲイだってこと隠そう隠そうとしてきて、それまで自慰はできていたのに、ある日突然なにやっても勃たなくなった、って、言ってたことあるよ。でも、ゲイであることを自分がちゃんと認めたら、元通りになった、って。まぁ、過度のストレスだよねぇ」
「そうなんですか…」
奏汰さんはウンウンうなずきながら聞いてたけど、唐突に啓さんにキスした。
……なぜ!?
「ん、う!?」
驚いたのは俺だけじゃなくて、啓さんも同じのようで、唯一、智大だけは何も動じずお茶を飲んでる。
「ちょっ……奏汰さん……っ」
「啓、その人と寝たの?」
「え!?」
「そのゲイ仲間さんと」
「え、え、や、あの」
「寝たんだ?」
「ね、寝てないっ。ほんと!ちょっと、舐めあっただけ……………で……………」
「ふうん」
……奏汰さんの目が怖い。
啓さん、泣きそう…。
舐めあった……って、お互いに、ってことだよな。
啓さん……やっぱり大人だ……。
「それで、征人君」
「あ、はいぃ」
「ちなみに、いつ頃から?」
「あ。えと……5月の中頃から…少しずつ。よく思い出したら、6月になった頃には、自慰でもイけなくなって」
「うん」
「それから、最近、付き合う子としようと思って、裸見ても触っても、何も感じなくて…」
「うん」
「……それで、今日、新しく付き合い始めた彼女としようと思ったら、やっぱり、勃たなくて、しかも、キスもできなくて」
「ふうん…」
「あ、でも、ここ来てシャワー使ってるときには勃ったんですよ!完全に!そのまましごいたら気持ちよくて、イけるかもと思ったら……いきなり萎えて……」
「それ、何か考えたり思い浮かべたりした?」
「えと………はい………。今日できなかった彼女……や、もう『元』ですけど、その人の体とか思い浮かべてました…」
「そう……」
滅茶苦茶恥ずかしいことをべらべら話した気がしたけど、なんていうか、奏汰さんが『お医者さん』の顔をしてるから、思ったほどの恥ずかしさはない。診察を受けているような…そんな感じで。
「……僕、お風呂行ってくる」
突然そう言って、智大が立ち上がった。なんだか、声が震えてる。
「智大」
歩き出した智大を、啓さんが追いかけてダイニングを出ていった。
「征人君」
「え、あ、はい」
智大のほうが気になって見ていたから、突然呼ばれて少しびっくりした。
「僕も専門ではないから、的確なことは何も言えないかもしれないし、検査をしたわけじゃないから、はっきりとした診断をつけてあげることもできないけど」
「……はい」
「おそらく、それは、征人君の身体に異常があって起きてることじゃなくて、むしろ、啓が言っていたことのほうが近いかもしれない」
「……それって」
俺がゲイだってこと??
それを俺が気づいてなくて認めてないかから??
顔に出ていたのかもしれない。
くすっと笑った奏汰さんは、穏やかな顔で「そうではなくて」と言った。
「ゲイか、そうではないか、というところじゃなくて、心が、何かを負担に思っているんだと思うよ。君が、無意識に、女性とのセックスや性的関わり合いを拒絶してるんだ」
「……無意識に……拒絶……」
心当たりは………ある。
別れた彼女がキスしようと近づいてきたとき、俺はそれを無意識に払い除けてた。…無意識に。
「心当たりがあるみたいだね」
「……はい。あの……、今日別れた彼女が、キスしようとしてきたのを、払い除けてしまって……」
「そう。身体が拒絶したんだね」
「そう……だと思います……」
でも、なんで。
「征人君、ちなみに、今日の彼女の名前はなんていうんだい?」
「え、名前?それは――――あ、れ?」
私、○○です。
好きです、付き合ってください。
「……なま、え」
え、なんで。
告白されたとき、名前言われたのに。
……欠片も、思い出せない。
「今までお付き合いした女性の名前は?」
「え……と、………………ごめんなさい」
「いや、僕に謝らなくていいよ」
奏汰さんはそう言って苦笑するけど。
でも、謝る言葉しか出てこない。誰に、対してと言うなら、今まで付き合って、関係を持った女子全てに。
誰の名前も、思い出せなくて。
「きっと、好きな子はいなかったんだね」
「…好き、っていわれて、付き合って、って言われて……付き合ってました」
「じゃあ、征人君が自分から好きになった子はいなかったんだ」
「……はい」
女子の身体が好きだとか、セックスが好きだとか。そういう好きは沢山あるのに、女子を一人の人として好きになったことは………ない。
「……奏汰さん、『好き』って、なんですか…?」
「これまた哲学的な話になったね。『好き』かぁ。深く考えるとわからなくなるよね。何なんだろうね、『好き』って」
…うん。わからない。わかりそうなのに、つっかえて、わからなくなる。
「僕にとっての、そういう意味での『好き』は、啓だけだね。好きだからキスもしたいしセックスもしたいし、いつも傍に居たいし、いてほしい。一緒にいるとそれだけで嬉しくなるし、抑えも効かなくなる。いい年なんだけどね。さっきみたいに、どうしようもない過去にまで嫉妬する」
「……嫉妬」
「他の人には感じないなにか、ってことになるのかなぁ」
……可愛い、とか。
なんかほっとする、とか。
笑顔が好きだか、とか。
優しい、とか。
全部、他の人には感じたことのない感情。
「シャワー使ってるときに勃起した、って言ってたけど、そのとき、何かなかったかい?」
「……あのときは、智大が、服を持ってきてくれて」
「うん」
「……風呂場のドアを開けたら智大がいて」
「……うん」
「…………照れて、赤くなって、慌てる姿が、…………可愛いな……って、おも、って」
そしたら、勃ってて。
「………ん。じゃあ、そういうことでしょ?」
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