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第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。
1 ここはどこですか?
しおりを挟む「……」
青い空が見える。
すごく高くてきれいな青色の空。
所々に白い雲が流れていて、優しい風が髪を揺らしていく。
体の下は深い緑のようで、心地良い草の匂いがした。
「……えーと」
なんで自分はここにいるんだろう。
なんで自分はここに寝転んでいるんだろう。
……考えていても答えは出なくて。
「どうなってんの?」
疑問のような独り言に、応える声は当然だけど無い。
ため息をついた。
わからない。
何もかもわからない。
ここに来る前、自分は何をしていたんだっけ?
思い、出せない。
視界に入る青い空には、時折、鳥の陰影が過ぎていく。
…わからないけど、ここは気持ちがいい。
こんなふうに草の上に寝るなんて、幼少の頃以来だ。…いや、もしかしたら、幼少の頃だってこんなふうには寝転ばなかったかもしれない。
なんとなく、手を動かしてみた。
…右も左も、ちゃんと動いてる。痛みはない。
手を動かしながら、首も左右に向けてみた。…うん、こちらも特に痛みとかはない。
どうやら怪我はしていないようだ。安心した。
だとすると、やっぱり自分の状況が気になる。
どうして俺はここで寝ているのか。
「夢とか」
夢の中でも寝てるとか、ありえなくはない。
確かめてみよう…と、なんとなくそっと、右の頬をつねってみた。
……痛い。けど、夢から覚める気配はない。
「ってことは、現実?」
ここに来る直前のことは何も覚えていない。どうやってここに来たのかも覚えていない。ってことは、俺はどこかで気を失ってここまで運ばれた?だとしたら、何かの事件に巻き込まれた?
もし、頭を打っていて、記憶の混乱があるとするなら?
「……俺は、杉原、瑛。す、ぎ、は、ら、あ、き、ら」
大丈夫。名前はしっかりと覚えている。
家族の名前も顔も…大丈夫だ。ちゃんと思い浮かべることができる。
忘れているのはここに来る直前のことだけのようだ。
「……っと、とにかく、連絡」
スマホで確認すれば、ここがどこなのかもわかるだろう。ありがとう、GPS。
「………ん?」
ポケットを探っていた手には何も触れなかった。
「ん!?」
思い切り飛び起きてしまった。
服についているポケットというポケットを全部探った。
不安が現実になる。
「な、なんでっ」
軽くパニックだ。
いつも持ち歩いていたスマホどころか、財布も、学生証もない。ついでにかばんも。
ここがどこなのか確認することも、誰かに連絡することも、自分のことを証明できるものもない。大金は入っていなかったけど、財布もないということは何も買えない。……食べ物も、飲み物も。
「……うそ」
呆然とした。
俺はただの高校生だ。特別なサバイバル技術なんて持ち合わせてはいないし、野草の知識もない。
…せめて、町が、あればいいのに。
「……そうだよ、町に行けば」
黙ってここでうなだれていても仕方ない。
立ち上がって周囲を確認してみた。
ぐるりと見渡した限り、人影はない。
草原が続き人工物は無く、奥の方には森らしき場所があった。
その森の手前に、草の生えてない場所を見つけた。
とりあえず歩き始めてから、自分の服装がいつもどおりの制服スタイルなことに気がついた。濃紺のブレザーに、学年カラーの赤のラインの入ったネクタイ。ワイシャツと、足元は履きなれたスニーカーだ。…ってことは、学校帰りだったんだろうか?
「ま、そのうち思い出すかな」
うんうん頷きながら、土がむき出しの場所に到着した。
「道…?」
街道と呼ぶにはあまりにも整備されていない。幅もそれほどないし、かなり凸凹している。
それでも、もしかしたら、と、希望を抱く。
道の両端を、交互に見比べた。
…それから、ため息が。
右も左も、道の先には何も見えない。
せめて太陽の位置で大雑把な時間や方角を計ろうと、視線を空に向けたとき、大きく目を見開いてしまった。
「太陽が……2つ?」
見間違いでもなんでもない。本当に、太陽が2つある。
いや、でも、そんなはずはない。多分、俺は頭を打っているから、その影響で視力に異常が出てるんじゃないのかな。
…太陽だけ2つに見えるなんて症状、聞いたこともないけど。
しかも、今俺は太陽を直視した。なのに、目が痛くない。外は普通に明るいけれど、太陽の輝き方が鈍い気もする。
「……参った」
太陽がおかしいとか、目がおかしいとか、もうそんなのはどうでもいい。
道から少し離れた草地に腰を下ろした。
水もない、食べ物もない。今の気温は快適だけど、今が朝なのか昼なのかもわからない。
一か八かで道を歩き進めることはできる。
でも、町にたどり着けるとは限らないし、誰かと出会うことができるかもわからない。
そもそもこれは、道じゃないかもしれない。ただの獣道だとしたら?どうやったって、人里にはたどり着けないだろう。
「……詰んだ」
よくわからない場所を移動するよりも、ここでじっとしていたほうがいいかもしれない。遭難したときの鉄則。現場から動くな、だ。闇雲に歩き続けるより、体力を残すことができる。
……あとは、誰かがここを通るように祈るだけ。祈りを聞いてくれる神様なんていないけど。でも、もしかしたら、気まぐれな神様だっているかもしれない。
無事に家に帰ったら、ばあちゃんのとこの神棚にお供え物をしよう…そうしよう。
――――俺、どうなるんだろう?
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