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第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。
23 愛しい存在① ◆クリストフ
しおりを挟むタリカから半日ほどの距離にある宿場町ベルグ。
このあたりにしては比較的大きな宿場町で、様々な種族や冒険者達も多い。それだけ流通も盛んであり、地方にしては珍しく様々なものが揃う。
今日の昼前寝込んでいたアキの調子もよさそうで、少し早めに馬を走らせた。それもこれも、ベルグでアキの身の回りのものを少し揃えておきたかったからだ。
アキと二人でベルグの中をただぶらりと歩くのもよさそうで、少しでも早く到着したかった。
ベルグの町並みが見えた頃、アキの様子がおかしくなった。体は左右に揺れ、瞳がぼぅっとすることが多くなった。
「どうした?疲れたか?」
顎を取り上向かせたが、頬が少し赤い。目元には力がはいっていないようで、とろんとしている。
「具合が悪いのか?」
答えはない。表情が、つらそうなものになる。
「――――」
…ああ。『コトノハ』の力は時間切れか。
アキが目を閉じた。呼吸が早い。
額に触れるとかなり熱を持っていた。
ぐったりともたれかかる体を今までより慎重に抱き直す。
「兄上」
俺の声に視線を流してきた兄上は、俺の腕の中でぐったりするアキを見て顔色をなくした。
「兄上、すまない。熱が上がってるようだ。俺だけ先行させてもらう」
「ああ。こちらは気にすることないから、早く行くんだ」
無言でうなずきだけを返し、ヴェルの腹を軽く蹴る。それだけで俺の意思を読み取り、速度が増した。
「すまないな」
ヴェルの首を撫でれば、頭を上げて応えてくれる。
「アキ…」
ベルグについたら二人で出かけようと思っていた。城に戻るまでの僅かな時間を、二人きりで楽しみたかった。
今朝熱を出していたアキ。
慣れないことばかりで負担がかかっていたことは、わかっていたはずなのに。
浮かれすぎた。
二人で出かけることを、アキが喜んでくれたから。
気遣えず、気付くことができず、このざまだ。
「アキ…すまない」
暫く走ると街の喧騒が近くなった。
流石に手綱をやや引き、速度を落とす。
ベルグは商人たちの街だ。
田舎にしては珍しく、品揃えもいい。
国境からは距離があるものの、異国の者や、討伐や護衛を依頼として受ける冒険者たちも多く滞在している。
その街中を進んでいると、アキの瞳が薄っすらと開いた。周りを見てから、また目を伏せる。それから、少し、俺を見て…何かを考え始めた。
……よかった。意識ははっきりしているようだ。
そのまま街道を進み、目的の宿屋の前でヴェルをとめた。
「じっとしてろよ」
アキの頭をなでてからゆっくりと体を離す。
支えがなくなっても座っていられるのを確認してから、ヴェルから降りた。
馬用の柵に手綱を結び、アキに手を伸ばした。
アキは俺の意図をすぐ理解し、俺の手を取ろうとしたが、グラリと体が傾き、半ば落馬するように腕の中に収まった。
アキは俺の腕の中でほっと息をついている。その様子を確認してから、宿の中に入った。
「いらっしゃい………あ」
店番の女性は俺の姿を確認すると、すぐに深く頭を下げた。
「お待ちしておりました。殿下」
「挨拶はいらない。早く休ませたいんだ。部屋の鍵を出してくれ」
女性は俺の腕の中で荒い呼吸を繰り返すアキを見て、顔色が悪くなっていく。
急いで後ろの棚から鍵を取り出し渡してくれる。
「後で氷水とタオルをお持ちいたします」
その言葉に頷きだけを返し、階上にむかった。
アキは赤い目元のまま、視線を周りに流している。
指定された部屋の鍵を開け、ベッドに向かった。
体に負担をかけないように静かにアキをベッドに降ろした。その途端、アキからため息が漏れてくる。
「――――」
何かを言いかけたとき、唇を塞いだ。
馬上でどんなに体温を感じていても、足りなかった。口づけたかった。触れたかった。
だが、今のアキに負担はかけたくない。
そう思っていたのに、アキが俺に抱きついてきた時に思考が止まった。
アキも欲しがっている。
そう感じたらとめられなくなった。
舌を潜り込ませ丹念に咥内を愛撫する。
重なった唇の隙間から、熱い吐息が漏れ出るの聞きながら、アキの下腹部に手を這わす。何度か擦るうちに手の下で硬く反応していくのを感じた。
首に回る腕に力が込められる。
もう少し、もう少しだけ。
アキの喉がコクリと鳴った。
それでも口づけをやめられない。
アキの腕には更に力が入り、俺を引き寄せる。腕から伝わる体温も高い。
見様見真似でズボンの前を寛げ、下着の上からアキの中心を揉みしだいた。
「は、あ、あっ」
空気を求めるように唇が離れた。
「イきたいか?」
耳元に唇を寄せ、息を吹き込みながら囁いた。
アキの体が震える。
「ん、ぁ…、イき、たい…っ」
それがアキの望みなら。
口元に、どうしても笑みが浮かんでしまう。
手の動きを早める。
布地の上からでも鈴口がよくわかる。
そこをぐりぐりと刺激すれば、下着の布地は湿り気を増す。
アキの体がしなる様に震えた。
……宿屋の壁はそれほど厚くなく、艶めいた嬌声が部屋の外に漏れてしまう。それは、不本意だ。アキの全ては俺のもので、その声も誰にも聞かせたくはない。
嬌声の上がりそうなアキの唇を再び塞いだ。
「ん……んふ…っ」
くちゅくちゅ音を出しながら唇を貪り、手の中の起立したそれに吐精を促した。
「い………っ、ぁ、っ」
短い吐息のあと、ビクビク体が震えた。
布越しに熱いものが吐き出されていくのを感じる。
「アキ」
胸を大きく上下させて荒い呼吸を繰り返すアキの目元に、宥めるように口づける。
そのタイミングで部屋の戸を叩く音がした。
足元に用意されていた毛布をアキにかけ、戸口に向かった。
そこには氷水とタオルが入った桶を持った、心配顔の店番の女性が立っていた。
「あと必要なものはありますか」
「大丈夫だ。もうじき、他の者も到着するだろうから、よろしく」
女性からそれを受け取り、戸を閉めた。
振り向くと、アキが俺を見ていた。
「…クリス…?」
「熱があるんだ」
ベッド脇のテーブルの上に桶を置き、椅子に座った。
アキは何故か驚いたように体を起こす。
「え…、じゃあ、クリスが寝なきゃ」
一瞬、何を言われたのか理解できなかったが、すぐに苦笑してしまう。
やんわりとアキの体をベッドに倒し、改めて毛布をかけ直した。
「俺じゃない。お前が、だよ。アキ」
「え?」
どうやら自覚がなかったらしい。
桶の中のタオルを絞りアキの額に乗せると、ほっとしたようなため息が漏れた。
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