【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。

24 愛しい存在② ◆クリストフ

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「……俺、また熱出した?」

 申し訳なさそうな声を出すアキの頬に指を添える。

「ああ。やはり無理させてしまったみたいだ。すまない」

 アキは困ったような顔をしたが、すぐに表情を変えた。

「クリス、言葉が」

 困惑した表情。

「ん?」
「………あれ…?………もしかして、クリスのキスって」
「気づいたか」

 思わず苦笑してしまった。
 そのことも含めて、城でゆっくりと話したかったのだけど。
 仕方ないので、とりあえずは説明した。話せる範囲で、アキの疑問を解消できる内容で。……これ以上のことは、城についてからゆっくり、時間をかけて話そう…そう、心に決めて。
 話は終わり…というように、俺はアキを眠らせた。ほぼ強制的に。

「アキ…」

 寝顔を見ながら明日の行程を思い浮かべる。…多少変更が必要かもしれない。休憩を多めに組んで、城への到着を遅らせるか、少し遠回りになるが半日ほどで到着できる別の街に宿を取るか、諦めて野営とするか…。
 この街で馬車を手配することもできる。
 だが、馬車となると、隊を二分させなくてはならないだろうし。
 …中々いい案は浮かんでこない。
 温くなったタオルを交換しているとき、ノックの音が響いた。

「クリストフ」

 返事をする前に控えめに開けられた扉から顔を出したのは、兄上だった。

「到着したんだな」
「ああ。他の者たちは夕食の準備に取り掛かっているよ」

 比較的大人数で移動する際、同行している兵士たちは宿屋の敷地内にある広場で野宿となる。今回、この宿の部屋を使うのは、俺と兄上だけだ。

「アキラは?」
「眠らせた」

 兄上はベッドに近づくと、アキの顔を覗き込んだ。

「……うん、やっぱり疲労がひどそうだね。あとは水分が足りてない」

 言われてから、気がついた。

「私達は軍の訓練や日頃の鍛錬で慣れてるから感じないけど、アキラはそういう意味では一般人だ。…もう少し気をつけてあげればよかったな」
「ああ。…俺の落ち度だ」

 俺がそう言うと、兄上は苦笑しながら肩をすくめる。

「クリストフだけの問題じゃないでしょ。全員が気づけなかったんだから」
「…だが」
「あんまり暗い顔してたら、今度はアキラのほうが気にするよ」

 兄上はそういうと、俺の肩をぽんと叩いてくる。

「私がアキラを見てるから、クリストフは行っておいで」
「?どこに?」

 弱ってるアキのそばから離れるなんて考えられず、兄上が何を言っているのか理解できなかった。

「どこって……買い物してくる予定だったんだろ?」
「……ああ」
「さっさと行ってアキラのものを買ってきたらいい。アキラが目覚めて落ち着いたら夕飯を摂ればいいし。女将さんには伝えてきたから、アキラには食べやすいものを用意してくれる」
「アキの傍から離れたくない」
「だったら、私が買ってこようか?アキラが着るもの全て、私の好みでアキラに似合いそうなものを見繕ってくるよ?下着類も、全部」

 そこまで言われて、ぐ…っと詰まってしまった。上から下まで全部俺が選びたい。他の者が選んだものをその体に纏わせたくない。

「………行ってくる」
「うん。最初からそういえばいいのに」

 椅子から立ち上がった俺の代わりに、兄上が椅子に座り、ひらひらと手を振ってきた。

「頼んだ」
「はいはい」

 アキの頬を一撫でし、脱いだ鎧を無造作に床に放置してから部屋を出た。
 1階部分は受付と食堂になっており、他の宿泊客なのか、食事している者が数名いた。
 その光景を横目で確認しながら宿屋からでる。
 とにかく急ごう。
 でも、手は抜きたくない。

 アキの笑顔を思い浮かべながら店を回った。
 服には手触りの良いシャツと、鮮やかな青色の乗馬用の物を。革が硬すぎないブーツに、体を覆える紺色のマント。それに加え下着を何組か…と色々購入していくと、あっという間に大荷物になってしまった。
 まあ、苦ではない。

 あと何かないかと店を見ていたとき、それが目に入った。
 華奢な作りブレスレット。白金で作られた2連の細い鎖の所々に、小粒の青いサファイアと黒曜石があしらわれている。
 迷うことなく購入した。
 俺の色とアキの色。
 それが、あの細い手首で絡み合い揺れる様を、早く目にしたい。
 きっと喜んでくれる。
 俺が愛してやまないあの笑顔で、俺を見上げてくれる。

 ……ああ、本当に。
 誰よりも、愛おしい――――
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