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第1章 魔法を使ったら王子サマに溺愛されました。
33 時間は守りましょう…
しおりを挟む「クリス」
背中に回っていた手が、俺の知る力で抱きしめてくれる。
引き寄せられるままに何度もキスをした。
息が上がって、甘えるような声が出てしまう。…恥ずかしいとは思わない。だって、してほしい、って、思ってるから。
「ん……んっ」
舌が容赦ない。
誘ったのは明らかに俺だけど。
「クリス、時間…食べたら出発、って」
「待たせておけばいい」
それってだめでしょ!?って思いながら、やめられない。
「んっ、ぁ、ぁっ」
クリスが腰を揺らした。
キスだけで高ぶってしまう俺のそこは、クリスの腰の動きに引きずられるように硬さを増してしまう。でも、服越しの刺激がもどかしい。
……や、もどかしいとか、そんな欲求不満のような、もっとちゃんとしてほしい、みたいなことを考えてる場合じゃないでしょ、俺。
「だめ、だ、って…」
「欲しいだろ?」
クリスの目に情欲の色が見える。…俺を、抱いたときの目だ。その目を見てるだけで、体が震える。あの熱を思い出してしまう。
このまま委ねてしまえば、凄く気持ちよくなれることを俺は知ってる。それに、心も満たされることもわかってる。
「今日も泊まっていくか?」
耳元の声、だめっ!
ぶるっと体が震えて、腰をクリスに押し付けてしまう。
駄目だ駄目だって思ってるのに、身体の方から落とされそう。そうなったら、俺はもう抵抗できなくなる。
「…やだっ」
別に、目茶苦茶お城に行きたい、ってわけじゃないけどさ。でも、お兄さんやみんなに迷惑をかけることはしたくない。
「俺は抱きたい」
「……クリス……」
心がぐらぐら揺れてしまう。
だって、欲しいって、思ってしまうから。
「クリス、し――――」
したい、って、言おうとしたのと、ドアにノックの音が響くのが重なった。
「クリストフ、もう皆準備できてるんだけどね?いつ降りてくるのかな」
…って、お兄さんの声。
扉をすぐに開けてこないのは、色々察してくれているんだろうけど、それはそれで…恥ずかしい…っ。
「兄上」
「ちなみに、もう一泊したいっていうのは却下だからね。さっさと降りてこないと、クリストフの分の報告書だけ倍にするけどいいのかな?それじゃ、待ってるからね」
お兄さんは階下に向かったぽい。
クリスが舌打ちした。…珍しい。
「…今朝は腹の虫で、次は兄上だなんて…」
クリスが何を言わんとしているのか気づいて、顔が一気に熱くなった。
「アキ」
クリスが体を起こした。
唇に触れるだけのキスをされて、少し、息が整う。でも、体は熱いまま。
先に立ち上がったクリスが、俺の肩に濃紺のマントをかけてきた。
「それで隠せるから」
「え」
「今すぐにでも楽にさせたいんだが、これ以上兄上を怒らせるのはまずい」
…あれ、怒ってたのか…。怒れば怒るほど優しい口調になったり、丁寧な話し方になる人…いるよね。
マントの前を止めたら、体がすっぽり隠れてしまう。うん、確かに、これなら…気づかれないだろうけど、この状態で馬に乗るの?
クリスはそんな俺の心情に気づいているのかいないのか、鎧系装備を身に着け、足元に残っている荷物を肩にかけると、俺のことも抱き上げてきた。
「歩く…よ?荷物、あるし…」
「俺の楽しみを奪うな」
楽しみ、なのか。楽しそうなのは思い違いじゃなかったらしい…。
暴れる気力も、ましてや歩く気力もそもそもなくて、されるがまま。俺、この宿の中で歩いたのって、どれくらいだろ?なんか、ずっと、クリスに横抱きにされてる気がする。
そのまま宿を出ると、お兄さんを筆頭に、皆さん準備万端で待っていた。
あううう、ごめんなさい…皆さん…。
クリスは特に気にした風もなく、堂々と歩き進んでる。
「遅いよ」
「すまない」
お兄さんにそんな風に軽く返すと、すぐにヴェルのもとに向かった。
「ヴェル、おはよう」
クリスに抱えられたままヴェルを触ると、彼女も俺にすり寄ってくれた。
「クリストフ、これ使って」
お兄さんがヴェルの上に、薄めのクッションのようなものを置いた。
「ああ。それがあれば少しは楽だな。ありがとう兄上」
「お前のためじゃないよ?」
「わかってるよ」
お兄さんが笑いながら肩をすくめた。
クリスはお兄さんに笑って答えると、俺をそのクッションもどきの上に座らせてくれた。
「あ」
尻がゴツゴツしない…!
クリスが肩にかけていた荷物は、ヴェルに引っ掛けるように固定した。
それから俺の後ろに乗り、俺の位置を微調整してくれる。
最後にお兄さんが馬にまたがり、ようやく出発。
時間厳守って大事ですよね。ごめんなさい。以後気をつけます…。
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