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第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。
19 やりなおしお茶会①
しおりを挟むいつの間にか、俺の服の中に夏物が含まれていた。長袖だけど、ちょっとシースルーなシャツで、通気性抜群らしい。
こちらの夏は、日本の夏ほどには暑くない。でも、エアコンはないし、扇風機もないから、結構暑く感じる。
隊服も見た目はほとんど変わらないけど、通気性のいいものに変わってるみたいだ。
うん。なんだ。こっちの人はあまり肌を見せない。というか、身分高い人は、って感じらしい。ギルマスは半袖着てた。俺も半袖がほしい。
ちなみに、俺の寝間着は甚平さんタイプの病衣から、クリス服に移行した。なんか、普通に戻ってきた感じ。
でも、そのクリス服、今まで長袖だったのに半袖なんだよね。部屋の中ではどんなに肌見せてもいいらしい(多分)。…まぁ、クリス服とは言いつつも、クリスの持ち物に半袖なんてなかったはず。クリス服に似せてわざわざ作ったのかも…。裾短めに……。
襟ぐりもなんだか広くて、はだけやすい。…痩せたせいも、あるとは思うけど。
「体調は?」
「大丈夫」
お昼も食べた。熱も出てない。
ベッドに座って、足をブラブラさせながら、今日の服を選んでたクリスをじっと見る。
選び終わったクリスは、それを手に持って俺のところに戻ってきた。
「アキ」
服をベッドの上に放って、顎をすくい取られる。目を閉じることなく、唇が触れ合った。
クリスの瞳はとてもきれい。
キスしたまま、クリスの指が俺の喉元や肩に触れる。確かめるように、ゆっくりと。
「ん……」
喉の奥に溜まったものを飲み込む。そしたら、身体がじんわりぽかぽかしてくる。魔力が流れてくるのと同時に、癒やしの力も流されてるみたい。方法が方法だけあるので、俺だけに使われる力。クリスに愛されてるって実感する瞬間。
「クリス…」
「綺麗な瞳だな」
唇が離れた直後、俺の目元をクリスがなでてきた。
「クリスの瞳もキレイだよ。俺、すごく好き」
「瞳だけ?」
クリスが目を細めた。その表情、好き。
「全部好き」
右手をクリスの首に巻きつけて、自分からキスをした。
「可愛いな」
「ん……、クリスに可愛いって言われるのも好き」
クリスがくすっと笑って、俺の腕を解いた。
「きりがないから着替えよう。そろそろメリダのお叱りが来そうだから」
「あ、うん」
着替え…着替えか。
怪我をしてから、クリス服を着たのが昨日。まともな服は今まで着ていなかったから、左手は通るのかな。
まあ、俺が考えなくてもクリスがどうにかしてくれるだろうから、問題ないとは思うんだけど。
ちなみに、クリスはもう着替えてる。…着替えてるというか、特別な格好はしないらしい。身内だけのお茶会だから。俺に何かあったときに動きやすい服装のほうがいいから。
お茶会でなにかあるとも思えないけどね。…普通は、ないよね。
……うん。お茶会。やりなおしお茶会。
楽しみだし、緊張もする。
約二ヶ月ぶりに部屋の外に出ることも。
「アキ」
声をかけられて現実に戻った。
促されて、手伝ってもらいながらクリス服を脱ぐ。…これ脱いだらあの下着だけになるとか…、うん、気にしたら負け。
脱ぐときは右手から。
着るときは左手から。
いい加減覚えた。
「…少し肉がついたな」
俺に肌着を着せる前に、クリスがまじまじと俺の身体を見てきた。……いつも見られてるけど、妙に恥ずかしい。
「……ちゃんと食べてるもん」
「そうだな」
またクリスが笑った。
そりゃ、まだまだ食べる量が少ないのはわかってるけどさ。
頭をポンポンされて、本格的に服を着せられた。
シャツは、例のシースルーのやつ。袖はふんわり。でも腕が透けて見える。ジャケットはいらないみたい。ベストだけ。もちろん、クリスの瞳の色。ズボンもね。足元は歩きやすそうな靴。
問題があるとすれば、ウエストが細くなってて、ベルトのサイズがギリギリだったことかな…。クリスの表情がちょっと強張ったけど、こればかりは仕方ない。
最後に左手を三角巾で吊れば終わり。
……あ、終わりじゃなかった。
右手にブレスレット、右の耳に月長石のイヤリングをつけてくれた。
右手の久しぶりの感触に、嬉しくなる。
「よく似合ってる」
「うん」
触れるだけのキスを繰り返していた。
そのうち、メリダさんが迎えに来てくれる。
「お似合いですよ」
「ありがとうございます」
へへ…と笑っていたら、クリスに抱き上げられた。
ほんとはね、歩きたかったんだけど。王城の中で庭までの移動でも、今の俺には距離がありすぎると判断された。三人から。ちょっと、過保護じゃないのとも思ったけど、今の俺に三人を説得できるような要素はなにもないのでおとなしくうなずいた。多分、三人の言ってることが正しいんだと思うし。
クリスに抱かれて、部屋を出る。…寝室をでるのは、本当に久し振り。
居間ですら変な懐かしさがあって、廊下に出たら、
「「アキラさん」」
って、オットーさんとザイルさんに呼ばれた。
「あ……」
二人に会うのは、あの日以来。
「よかった……お元気になられて」
「本当に……本当に……っ」
あああ。ザイルさんが泣き出してしまった。オットーさんも目元を少し潤ませて笑ってる。
「あの……、ありがとうございます。俺、結構もう元気なので、あまり心配しないでくださいね」
二人にもすごく心配かけたよね。できればまた、前のように接してもらいたいなぁ。
「またよろしくおねがいします」
クリスの腕の中から、頭を下げた。
「はい、こちらこそ」
オットーさんは笑ってうなずいてくれた。
ザイルさんはごしごし…って目元を拭いて、笑ってくれる。
「そろそろ行くぞ?」
「うん」
前回のお茶会は、メリダさんと護衛にはミルドさんがついてくれた。オットーさんとザイルさんは護衛ってことなんだろう。よかった。この二人ならすごく安心。
クリスに抱かれて移動しながら、廊下から見える外の景色が、すっかり夏のそれに変わっていて、本当に季節が移ったんだと実感した。
今向かっているのは、前回と同じ庭園。大丈夫って思っていても、近づくにつれて鼓動が早くなる。
……どうしても、赤い色がちらつく。
ついクリスの胸元を強く握りしめていた。
クリスは俺の様子に気がついていて、抱く腕に力が入る。
「大丈夫だ」
一言だけ。
うん。そうだね。大丈夫。クリスがいるんだから。
庭園に続く扉を、メリダさんが開けてくれた。
ザイルさんは廊下側に残るようで、庭園には出なかった。
低い木々がすっきりと刈り込まれ、緑の匂いがしていた。それから、同じように色とりどりの花。
そして、少し奥まったところで、空色のドレスを着たティーナさんが、待っていた。
「クリス、歩く」
「…ああ。わかった」
クリスは俺を静かに下ろすと、右手をとった。
少し震える足に気をつけながら、ゆっくりと、一歩一歩、ティーナさんの傍に歩いていく。
地面の感触。部屋の床とは違って、少し柔らかく感じてあるきにくい。それでも、一歩、一歩。
ティーナさんまであと少し…ってところで、クリスの手を離した。クリスは何も言わずに、俺の傍にいてくれた。
一歩、一歩。
「ティーナさん」
ようやく、声が届くところまで歩けた。
「アキラさん…!」
そしたら、突然、ティーナさんの細い腕に抱きしめられた。
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