184 / 560
第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。
24 神殿に行きました。
しおりを挟む神殿に行くためには一度城を出なきゃならない。
俺が自分で歩くのはご法度。ずっと、クリスに抱かれて移動。
「神殿長さん、ずっとアキラさまに会ってみたいと言ってましたよ」
クリスの隣にはラルフィン君。
あのあとすぐ部屋に来たラルフィン君に、神殿に行きたいことを話したら、喜ばれました。
俺達の後ろからは、オットーさんザイルさんコンビと幼馴染ズがついてきてる。
俺は相変わらずの三角巾。
すれ違う人たちの好奇な視線が刺さる。そういえば、俺のこととか、どんなふうに伝わってるんだろう。
人の視線って疲れる。
知らず知らずため息をついていた。そしたら、クリスが額にキスをしてくれた。大丈夫。それだけで浮上できる。
神殿はお城の隣りにあった。白くて、お城とは違った荘厳さがある。
ラルフィン君は躊躇わずに重厚な扉を開けた。
中に入ると広い廊下があって、受付っぽい場所がある。
「あら、ラル君と……殿下じゃないですか!」
受付のおねえさん、クリスを見て驚いた。そんなに驚くこと?
「こんにちは、ミーシャさん。神殿長さんに殿下が来たこと伝えてもらえますか?」
「ええ、いいわよ」
受付のおねえさんがどこかに行ってしまうと、クリスは歩き出した。基本的に廊下は一本道。
廊下の奥の扉を、ラルフィン君が開けてくれる。
「……すごい」
その部屋はとても広く、一番奥まったところには想像よりも遥かに大きく、優美な姿の像が設置されていた。多分、女神像だ。
「女神アウラリーネ様だ」
クリスが静かに教えてくれた。
「やっぱり女神像……」
部屋の中にいる俺たち以外の人は、膝をついて胸の前で手を組んでいる。
キリスト教の教会を想像してたけど、この部屋にはほとんど長椅子は置かれていなかった。入口近くに何個か設置されているだけ。
多分、お祈りをするときの基本の姿勢が膝をつくものなんだろう。
「クリス…おろして」
「大丈夫か?」
「うん。お祈りしたい」
クリスが静かにおろしてくれた。
俺の右手をとって、目だけで促してくれる。
クリスが膝をつく。俺も同じようにする。そしたら、オットーさんザイルさんコンビも、幼馴染ズも、同じ姿勢をとった。
『女神の慈悲を求む者たちに一時の安らぎを』
歌うような、不思議なラルフィン君の声。それと同時に、キラキラが少し舞う。
右手で三角巾を取って、左手を握り、そのまま胸元まで引き上げた。左手にも力を込めて、しっかりと組み、目を閉じる。
俺を見守るクリスの視線は感じていた。
それが正しいのかどうかはわからないけど、直されないってことはきっと正しい。
お祈りの作法なんて知らない。
けど、俺を癒やしてくれたのは女神様の力だ。クリスとラルフィン君がいなければ、女神様の力で癒やされることもなかったけれど。
――――女神様、ありがとうございました。
今俺が生きているのは、女神様の力を二人が惜しげもなく使ってくれたから。
女神様がいてくれたから、俺は今も、大好きなクリスの傍にいることができる。どんなに感謝の気持を込めても足りない。
――――私のもとに来るか?
ふと、そんな声が聞こえた気がした。
いいえ、行きません。今は、まだ。俺はクリスの傍にいることを選んだから。
自然と、そんな風に言葉が胸の中に浮かんだ。
疑問にも思わず、その『声』に応える自分がいる。
――――そうか。いつでも来るといい。愛子よ。
柔らかな声。
愛子ってなんだ…って思って目を開いた。
そしたら、目の前にキラキラが舞っていた。
「……え」
クリスかラルフィン君か…って思って二人を見たら、驚いたように俺を見ていた。
え?なんで??
「……まさか、私の任期中に3人目の『例外』に会うとは…。殿下はそんなに私を驚かせたいんですか?」
突然かけられた声に、クリスが立ち上がった。
「オリバー神殿長」
それから俺を支えて立たせてくれて、三角巾を戻してくれる。
「えっと…クリス?」
「アキ、この方はヒューベルト・オリバー神殿長。この神殿を任されている、最高位の神官だ」
一番偉い人ってことじゃん。
「オリバー神殿長、こちらはアキラ・スギハラ。俺の婚約者です」
「ええ。一度お会いしたかった。立ち話もなんですので、場所を移しましょう」
この人、すごく優しそう。
クリスはすぐに俺を抱き上げて、神殿長さんの後ろについた。
ラルフィン君は神殿長さんに並んで、なにか楽しそうに話してる。
案内されて入ったのは、執務室のような部屋。オットーさんザイルさんコンビと幼馴染ズは、廊下で待機中。
ソファに降ろされた俺の両隣に、クリスとラルフィン君が座った。
246
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる