【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第4章 怪我をしたら更に溺愛されました。

25 『例外』と『女神の加護』

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「さて…改めまして、王都の神殿を任されているヒューベルト・オリバーです。スギハラ様」
「アキラ・スギハラです。よろしくお願いします。アキラって呼んでください。……あの、神殿長さん」
「何でしょう?」
「さっきおっしゃっていた『例外』って、なんのことでしょうか…?」
「ああ」

 穏やかな微笑みのまま、神殿長が説明してくれた。

 一人目の『例外』はクリス。神官になるための儀式のときに、自分の血を供物として女神像に捧げたんだって……。
 え、なにそれ状態なんだけど、本人は素知らぬ顔。信仰心が薄い代わりに魔力があったからそれで補った…とか、聞いたことあったけど、補い方に問題があるんじゃないだろうか。

 二人目の『例外』は、予想通りラルフィン君のことだった。本来なら結構長い時間をかけて修行したり勉強したり、積み重ねていくらしいんだけど、彼がこの神殿に来たときには、既に無自覚な神官になってたんだって。だから、最初から低位神官スタートで、しかも、15歳のときには既に癒やしまで使える高位神官になったのだとか。

 ……なんというか、すごいね、二人共。

「殿下は15歳で神官になってから、各地で浄化や祈りを行ってきましたからね。それが積み重なって、本来なら神殿で修行しながら身につけることを、殿下は実戦の中で身につけていかれた」
「…ラルに聞きました。高位の力を使えると。そのおかげでアキを失わずに済みました」
「全く……。貴方は全然神殿に来ませんからね…。前代未聞づくしですよ。これからはせめて、一月に一度はお出でなさい。女神様もお喜びになりますから」
「怒られそうですけどね」

 クリスの言葉に神殿長さんはふふ…と笑うだけで、肯定も否定もしなかった。

「そして、三人目はスギハラ様………アキラ様ですよ。失礼ですが、どこかで神官をされていたことは?」
「いえ…ないです。女神様にお祈りしたのもさっきが初めてで」

 日本の神様には祈ってたけど。

「では、きっと、貴方は女神様の加護を受けてこの世にお生まれになったのですね。貴方が先ほど祈りを捧げた際に現れた光は、明らかに『浄化の光』です。――――貴方が望むのなら、すぐにでも下位神官として迎えることができますよ?浄化の光を可視化できるのは、相当の力を持っている証拠ですから」
「俺が……ですか?」
「ええ」

 ちらりとクリスを見た。
 大体、「この世に生まれた」と言われても、俺はこの世界の生まれじゃない。女神様との関係性なんて、無いに等しいはずなのに。

 俯いてしまった。
 女神様には感謝してる。でも、それと、俺が神官になることは、何か違う気がして。

「そんな顔するな」

 クリスに抱き寄せられた。
 俯かせていた顔を上げたら、優しいクリスの瞳と会う。

 俺、どんな顔してるだろう。
 クリスは俺をなだめるときのように、額や目元に何度かキスをしてくれた。

「オリバー神殿長。アキは神殿にいれませんよ。神官をさせるつもりもない。…もちろん、本人がどうしてもと望むのなら話は別ですが。今日はアキの大怪我を治癒していただいた女神様に感謝を伝えに来ただけですし」
「殿下、私を睨まないでください。アキラ様を殿下から奪い取るような真似はいたしませんよ」

 神殿長さんは苦笑してた。
 クリスが睨んでるようには…見えないけど。

「怪我のことはラルフィンから聞いております。ただ、聞いた限りでは、アキラ様の怪我は致命傷になり得るものだと感じましたが…」

 心臓がドクン…って、変に強く打った。
 怪我のことは受け入れたつもりでいるんだけどなぁ。こういうふうに人に言われると、やっぱりひどい怪我だったんだなぁ…って、再認識するというか…。

「正直、ラルに癒やしてもらいながらも、あの怪我がほぼ名残もなく治癒できている現状がまだ信じられません。なんとか傷口を塞げたとしても、欠損は生じると思ってましたから。癒やしが万能ではないことくらい、俺もわかっています」
「ふむ…。怪我をされた場所を見せてもらえますか?」
「アキ……いいか?」
「ん……」

 小さくうなずいたら、クリスがシャツのボタンを何個か外して、ベストの方も緩めた。それから、ほんの少しだけ、左肩を神殿長さんに見せる。

「……本当に、怪我を?」
「はい。僕が駆けつけたときには、ご報告した通りの怪我でした」

 クリスはすぐに俺の服を整えた。
 なんか変な緊張したよ…。

「ラルフィンが傍にいてよかった。殿下がご自身の癒やしの力に気づかれてよかった。…そうとしか言えない奇跡ですね。本来ならありえない回復だ…。二人の力は特別なものですからね。……あとは、やはり、アキラ様ご自身が、自覚がなかったとしても女神様の加護を受けていたからなのでしょう」
「……ああ……、そういうことか……」

 俺を抱きしめるクリスが、納得した…と声を漏らす。

「アキに治癒の効果が表れやすいのはそのためか。……なら、俺は今以上に女神様に感謝を捧げなければならないですね」
「アキラさまを連れて行こうとしていたのも、女神さまですけどね」
「ラルフィンがそんなことを言うのは珍しいね」
「……だって、僕、アキラさまのことを癒やしたいのに、女神さま、僕に『諦めろ』っておっしゃったんですよ。夢で!『連れて帰るから』って!もうもう意地になりましたもん。そしたら女神さまも、根負けしたみたいで…」

 夢……なんだよな?
 なんか、ラルフィン君の話し方だと、本当に目の前で女神様と会話してる風なんですけど…。

「ラルらしい」
「全く…。本当にラルフィンはラルフィンのままだね」
「お二人とも…僕を何だと思ってるんですか……もぅっ」

 ちょっと頬を膨らませたラルフィン君が可愛い。
 二人が笑うから、俺もつられて笑ったけど、はふ…って少し息が苦しくなった。
 そしたら、クリスは無言で俺を足の上に抱え直す。

「オリバー神殿長、今日は会えて良かった。アキがそろそろ限界なので戻ります」
「ええ。またいつでもお出でください、アキラ様。殿下と一緒に」
「はい。ありがとうございます」

 同じ『長』がつくのに、本当にあの男とは全然違う。神官って聖職だからかなぁ。高いお布施とか料金をだまし取って金の亡者な自称聖職な人もいるというのに。

 まだ聞きたいことはたくさんあったけど、ほんとにそろそろやばい。はぁ…。体力ないなぁ。

 みんなで挨拶して、俺とクリスとオットーさんとザイルさんはお城に戻った。ラルフィン君たちとは神殿でお別れ。明後日またきてくれる。





 ほんとはね。
 ラルフィン君の夢の話は聞き流していいものではなかったんだけど、今の俺には気づけなかった。

 ただただ、クリスの腕の中が気持ちよかった。

 結婚式のときに贈るものも…イメージついたし。

 あとは体力と魔力の維持に努めましょー!


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