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第3章 遠征先でも安定の溺愛ぶりです。
46 『殿下に媚びてる婚約者』
しおりを挟む遠征4日目です。
今日もいい天気です。
……とても、いい天気です。
「じゃあ、今日も一稼ぎしてこいな!」
ギルマスの掛け声とともに、冒険者さんたちが昨日と同じように森に入っていく。
クリス隊も、昨日と同じ編成で森に入っていく。
俺は、クリスの膝の上。…通常運転です。
絶賛、『殿下に媚びてる婚約者』実演中です。嫌です。許してほしいです。
「おお、おお。見てる見てる。ガン見されてるな、坊主」
「勘弁してください…ギルマス」
どうやら、少し離れたところから、クリスにべったりな俺は魔法師さんたちにとっても見られてるようで。
もし仮に俺が話しかけられても、つーんと無視して、クリスにぎゅーって抱きつけばいいそうですよ。それ誰状態なんですが。
「ほんっと、馬鹿だよなぁ…。あいつら。喧嘩ふっかけていい相手かどうかもわからねぇのかね?」
「一番偉いと思ってる連中だからな。…陛下よりも自分たちのほうが上だと思いこんでるんだよ」
「上があれだからな」
そうだね。あれだからね。小者すぎるあれだからね。
ストレスかかりまくってるから、クリスに抱きついた。堂々と。許されてるから!
クリスはちょっと笑うと、俺の頭にキスをして、髪をいじり始めた。
んー、気持ちいい。
むふむふしながら堪能してたら、ディーさんと、幼馴染ズの片割れの銀髪青年(未だに名前知らない)が、クリスのところに来た。
「殿下、お寛ぎ中申し訳ないですが、手合わせ願えませんか」
「お願いします」
クリスは二人をじっと見て、口元に笑みを浮かべた。
「ああ、構わない。一人ずつでいいか?」
「はい!ありがとうございます!!」
クリスは上機嫌で頷くと、俺を椅子の上に降ろして、キスの雨をふらしていく。
「ん…」
最後に唇にキスをして、頭をなでてきた。
「ちょっと行ってくる」
「うん」
クリスと入れ違いになるように、ラルフィン君が俺の隣りに座った。
「アキラさま、殿下が万が一お怪我されても、僕がすぐに治しますから、安心しててくださいね」
「うん。ありがと」
そういえば、クリスのお腹のとこの傷とかも、綺麗になってた。癒やしってほんとすごい…。
…とか思ったり話てる間に始まってたらしい。
キーン!!っていう金属音が聞こえてきてた。
最初はディーさんらしい。大剣。いかにも力強そうな、筋力任せのような剣。でも、重みがあるから破壊力は抜群のはず。
対してクリスは、比較的細身の剣なんだけど、なんというか、すごく柔らかい。あー、剣が、というわけじゃなくて、扱い方?が。柔軟で、しなやか。そういえば、俺、こんなふうにクリスの剣技見るの初めてかも?
力で攻撃してくる相手に対して、柔で受け流す。立ち位置はあまり変わってない。
何度か剣が交わるうちに、跳ね飛ばされたのは重そうな大剣の方。ディーさん、手を抑えて膝をついた。
そこにすかさず突っ込んでいったのは銀髪の青年。双剣を手に、力ではなく素早さ重視の攻撃を仕掛けていく。手数が多い分、銀髪さんのほうが有利?……と思ったけど、早々に片方の剣が落とされた。素早さには素早さを、って感じで、クリスの剣さばきが凄すぎる。それから間もなくして、もう片方の剣も落とされた。
そこで終わり……かと思ったら、ギルマスが笑いながら二刀流参戦。クリスの表情はとても楽しそうだけど、真剣味を帯びた。
ここではじめてクリスの立ち位置が変わった。剣で押し負けたり、ふっとばしたり、距離を詰めて相手の懐に入って一振り――――したけど、ひらりひらりと躱し。
「やはり凄いですね……。私も手合わせしたくなってきました」
って、俺達の傍らでクリスたちの様子を見てたオットーさんが、それはそれは羨ましそうに呟いた。
「してきたらいいんじゃないですか?」
「…みんながいないときに私だけが稽古をつけてもらったら、恨まれるんですよね…」
「あー…、それは……なんとも……」
クリスに贔屓されてるように見えるのかもね…。集団とは難しい。
「まあ、おいおいお願いしてみますよ。……ああ、決着ですね。引き分けかな」
「え」
ちょっと視線をそらしてる間に終わってしまったらしい。
二人共かなり息が荒くて、お互いに剣を取り落してる。
「なんでお前が入ってくるんだ」
「見てたら動きたくなったんだよ!」
「まったく……」
悪態をつきながらも、クリスは楽しそう。いいなぁ。俺もあんなふうにやってみたい。…剣を持つところから覚えなきゃ、だけど。
「「殿下、ありがとうございました!!」」
「ああ」
頭を下げた幼馴染ズに、クリスはいくつかアドバイスみたいなものを伝えてた。
それからこちらに戻ってきたクリスは、オットーさんが差し出した果実水を飲み干すと、ラルフィン君とは反対側の俺の隣に座り、ひょいっと俺を膝の上に乗せてきた。
「ラル、お前の幼馴染たち、俺の兵団に誘ったんだが」
「断りましたよね?」
「ああ。断られた」
「ですよね。でも、殿下、だめですよ。ディーもエルも、僕の大切な幼馴染なので。いくら殿下でも、あげれません」
「わかってるよ」
ラルフィン君、でも嬉しそう。クリスに認められた、っていうのが嬉しいのかな。クリスもクリスで楽しそうだけど。断られるのわかってたぽいし。
「じゃ、僕いきますね!また後で!!」
手を振りながら、ラルフィン君は幼馴染ズの方に駆け出した。
二人に抱きつくようにとまって、ディーさんと、銀髪さん――――エルさんに、キスをしてた。
「!!」
自分のキスシーンは色んな人に見られてるけど、人様のキスシーンは見るの初めてで。
なんか、めちゃくちゃ動揺した。それから、納得もした。
普通に恋人なんじゃん、って。
……2人ってところは、スルーしよう。そうしよう。
「アキ」
「ん…、なに?」
「キスしていい?」
「なんでっ」
「あてられた」
「意味わかん……んんっんっ、んぅ」
とばっちりは、こっちに来ました。
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