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第3章 遠征先でも安定の溺愛ぶりです。
50 だんだん腹が立ってきた。
しおりを挟むいつまでもクリスの姿を目で追っていたかったけど、そうも行かなくて。
残りの2体のうち、1体は 少し高いところを旋回してる。残りの1体は、どうやら俺をめがけて下降してきてるみたいで。……なんで俺?一番弱そうだから?
…なんて、考えてる場合じゃない。
クリスのサポートはないけど、わかってる。
体内の魔力は、すぐに魔法へと変換される。
下降を続けるワイバーンに、魔法師たちが魔法を放っているけど、意味のないものばかりで鱗に弾かれて霧散していく。…身体にあてることができてると評価すべきか、避ける必要もないほどに弱いと思われていると、解釈すべきか。……残念なことにワイバーンの言葉はわからない。クリスのコトノハの力が、発動していたとしても。
とにかく今は、他人のことなんてどうでもいい。
もう放てる…ってときに、ワイバーンの口が開いた。ワイバーンってブレス攻撃あるんだったっけ!?って、ちょっと焦ったけど、落ち着け、俺!!
「まずは……羽根……!!」
放った氷塊は狙い通り、羽根を覆った。
片側が動かなくなったことで、ワイバーンの巨体は空中で制御を失い、落下していく。
「クリス!!!2体目落とした!!」
「ああ!!!」
張り上げた声に、応えてくれる。よかった。ちゃんと届いた。
けど、ここからが本番…って言わんばかりの死闘になった。
最初に落とした奴は、手はず通り羽根に集中攻撃をかけてぼろぼろにしたのに、氷の拘束が無くなった途端、その羽根で飛ぼうとしたんだ。
俺は慌てて、「よけて!」って叫んで、もう一度氷塊を放った。
落とした2体目は、なんだかブレススキルが伸びているのか(個体差ってやつだよね、きっと)、周囲に向ってブレスを吐くから、口にも氷塊をかけてみた。だけど、羽根と違って口の周りは力も強いようで、数分で氷が解除されてしまう。こんなの、繰り返してたら、魔力、いくらあっても足りなくなる…。
時々、ラルフィン君の範囲回復が発動してる。今一番危険なのは前衛組。俺は完璧な後衛だから、直接的な被害はない。だから、落ち着いて周りを見れる。
魔法師たちは無駄な魔法を使い魔力を消費してるようだし、魔法師長は口元に笑みを浮かべながら、威力の弱い魔法を連発してる。どこにむかって?……そんなことは知らない!なんでこの状況で笑ってられるわけ?皆、死と隣合わせの状況で必死に戦ってるのに、なんで、あんたたちはこんな状況でも力を発揮しないんだ。
だんだん腹立たしくなってきた。
冷静でいないとならなかったのに。
心が乱れれば精度が落ちる。
そこに、最初の1体に止めが刺されたのか、みんなの雄叫びが聞こえてきて、そっちに意識が向いてしまったものだから、放った氷塊はワイバーンの尻尾に弾かれ、氷塊を仕掛け損ねた羽根がじたばたと動き、俺めがけて巨体が地面を 這って来ていた。
俺がそれをしっかり認識したときには尻尾は眼前に迫っていて……、逃げることもできずに思わず目を閉じていた。……けど、想定していた衝撃はなくて、そのかわり大好きな腕の中に包まれていた。
「アキ、どこか怪我は?」
「ないよ。大丈夫。ありがと、クリス」
「そうか…、間に合ってよかった」
尻尾はギルマスが抑えていた。
もう、なに、この人たち。恰好良すぎるでしょ!!
「アキ」
呼ばれてクリスを見たら、デコを叩かれたよ。なんで。
「無理しすぎだ。魔力がかなり減ってる」
「ん……」
「少し下がって休め。前線がこっちに移動するから」
「うん……」
「あともう少しだ。お前が倒れたら戦線が崩壊する。少し、自重してくれ」
「ん……」
流石に大袈裟だと思ったけど、クリスが心配してくれてることがとにかく嬉しい。
「クリスも、怪我しないで」
「問題ない。お前がいれば、何も怖くないからな」
ほんの少しだけ、舌を絡める。いつもみたいに沢山ではないけど、クリスの魔力が俺の中に溶け込んでいく。
「行ってくる」
「うん」
そしてまた、クリスは駆け出した。
……本当に、疲れなんて微塵も見せないで。
間もなくして前線が移動してきた。
邪魔をしないように、俺はもう少し後ろに下がった。
それにしても。
今、ワイバーンに攻撃をしてるのは前衛の人たち。エルさんとかは、さらっと魔法を織り交ぜたりしてるけど、基本はみんな近接戦。
なのに、ワイバーンの目はずっと俺を捉えている。最初に攻撃目標にしたものから目を離さない…みたいな仕様でもあるのか、この世界。普通のゲームなら、ダメージをたくさんいれた人に、意識が向くはずなんだけど。
意味のわからない不安に襲われて、俺はまた少し前衛から離れた。
そうやって目の前のワイバーンにばかり意識を集中していたから、『それ』に気づくのが遅れた。…ワイバーンはもう1体いたのに。
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