【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。

57 ちゃっかりイノシシ(魔物)肉ゲット

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「アキラ様」

 声をかけられて振り返ったら、エアハルトさんが立っていた。

「馬車に戻りませんか?」
「うん……」

 馬車で待つように、クリスに言われたけど。
 せめて、ここで待っていたいなぁ…って。
 どうしてもクリスたちが走っていった方向に視線を向けてしまう。
 そしたら、エアハルトさんは笑って頷いてくれた。

「では、馬車をこちらに回しましょう。門の近くなら、村の外でも怒られないでしょう?」
「…ん。お願いします」

 近づくな、って注意されてたけど、俺から近づいたわけじゃないし、今のエアハルトさんはまともに見える。
 そもそも、俺をこの人の近くに残したのはクリスだから、それなりに信頼?されてるんだろうし。戦闘能力は申し分ないし。

「あ、あの…」

 エアハルトさんが馬車に向かったとき、門番の私兵さんたちが、どこかおどおどした様子で俺に話しかけてきた。

「も、申し訳ありません。殿下はどちらに…?」
「えーと……人助け?」
「は、はぁ……」

 わからない、って顔。
 まぁ、そりゃそうだ。

「向こうの方で馬に乗った人が魔物に追いかけられているようなので、助けに行ったんですよ?」

 俺が指さした方をその人たちは見るけれど、人影なんて多分見えない。

「……?」

 案の定、首をかしげて訝しげな顔をする。
 俺が言ったことに対しても、そもそも俺に対しても、疑問の塊みたいな顔。
 だからって、わざわざ、「第二王子の婚約者です」って名乗るつもりもない。今まで自分からそう名乗ったことも、ない……はず?大概、クリスが、俺の紹介の頭に「自分の婚約者」ってつけてた気もするし。

 説明する気もなくて、ずっと北側を見ていたら、エアハルトさんが馬車を門の外まで運んで?来た。
 その馬車の後ろから、さっき見えたぬいぐるみを抱いた女の子がついてきてる。

「リノ、門を出たらだめだよ」

 門番さんな私兵さんが、その女の子の前に膝をついて目線を合わせた。
 リノちゃんっていうのか。

「おとうさんは?」
「狩りに出てるから、もう少しで戻ってくるよ」
「うん!りの、ここでまっててもいい?」
「門の中で待っててほしいな。外は危ないから」

 …リノちゃん、何故か俺を見上げた。

「お兄ちゃんはいいの?りのとおなじ、子どもでしょ?」

 おう……。
 五歳くらいの女の子に『同じ子供』と言われた。
 や、流石に……。
 最初、クリスだって、十五歳くらいに思ったって言ってたけど、そこまで子供に見られなかったというか…。

「ええ…っと、リノよりもお兄さんは大人だからね?」
「そうなの?」

 こてんと首を傾げた様子は可愛いけど、なんか、色々と削られてく気がするから、そんな無垢な瞳で俺を見ないで…。
 エアハルトさん、微妙に笑いをこらえてるの、はっきり見ましたからね!
 内心とても涙してたら、感じていた魔物の気配はふと消えた。
 あ、終わったんだ。
 それから、また北側に視線を戻したら、馬に乗った人の姿がぼんやり見えてきた。

「終わったみたい」

 なんとなくエアハルトさんに言ったら、笑って頷いてくれた。

「殿下とその騎士団の皆さんが苦戦するなんてありえませんよ」
「だと、いいんだけど」

 俺だって信じてるけど、近くにいないと不安は不安だし。……やっぱり一緒に行けばよかったかな……。

「おとうさん、かえってくる?」

 きゅっと右手を握られて下を見たら、リノちゃんが俺をじっと見ていた。
 ……門番さん、仕事して。

「多分、そろそろ戻ってくるよ?」

 今走ってきてる人がそうなら、だけど。

「あ」

 門番さんな私兵さんたちにも、ようやく見えたらしい。
 …ん。二人の後ろから、クリスたちも近づいてる。よかった。

 そんなに時間もかからずに、クリスたちと村の人と思われる二人が戻ってきた。

「おとうさん!!」
「リノ!?どうして……」

 もう声も届くところ。
 ……だから、ちょっと、気が抜けてたんだよね。

「アキ!!!」

 クリスに叫ばれたのと、気づいたのがほぼ同時とか、俺、肝心なときに役立たずだな…!!

 飛来してた鳥型の魔物に気づくのが遅れたんだ。
 認識したときにはもう結構近くまで来ていて、カラスをでかくしたような魔物の鋭い鉤爪が、リノちゃんを捕えようとしていた。
 何も間に合わないから、両手でリノちゃんを抱き寄せて腕の中に守った。
 来るであろう衝撃に目を固く閉じてたんだけど、その衝撃が来ない。そのかわり、魔物の断末魔のような叫びが聞こえてきて、魔物の方を見た。

「うわ」

 目の前に、身体中に小石のようなものがのめり込んでいて、脳天には矢が突き刺さって息絶えてるデカカラス(仮名)がいたから、色んな意味でリノちゃんをまた抱き込んださ。
 見せちゃだめだよ。魔物でも。

「リノ!!」

 お父さんらしき人がようやくたどり着いて、魔物の死骸を見せないように抱き上げた。
 よかった。

「おとうさん、おかえりなさい!」

 よかったよかったって見上げてたら、今度は俺が抱き上げられた。

「怪我は?」
「ないよ」
「…そうか」

 ほっとしたような緩んだ表情のクリスが、俺の額と頬にキスをしてくる。

「馬車で待ってろと言ったはずだ」
「心配で」
「まったく………」

 どうやら、神業のような反応速度で、エアハルトさんの土魔法がデカカラスの胴を貫いて、馬上からオットーさんが矢を放ち、脳天を貫いたらしい。剣だけじゃなくて弓矢も行けたのか……オットーさん。万能すぎじゃないですか。

 リノちゃんのお父さんともう一人の人は近くまで狩りに出て、小型の食べれる魔物を狙ってたらしい。その時に、流れ弾もとい流れ矢が、運悪く中型魔物にあたったとか……。
 ちなみに、追いかけていた中型魔物は、イノシシっぽいやつで、三体のうち二体を村での食料にしてもらうのに引き渡して、残りの一体は俺たちの食料にするからって確保したらしい。
 うん。みんな、傷一つなく、あっという間だったって…。
 デカカラスは例によってエアハルトさん作デカ穴に葬られました。

 なんか集まってしまった村の人から感謝とかされて、ご飯食べてってーとか言われてたけど、やんわり断ってエーデル伯爵領の中心地に向かう。
 とりあえずの旅の終わり、もう少しだ。




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