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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。
76 新婚旅行に行こう
しおりを挟むメリダさんへのお土産は、花の形のブローチを見つけたので、それにした。
小さな宝石もつけられるみたいで、迷わず青色と黒色の宝石をあしらってもらう。
それから、ティーナさんには花柄の手触りのいいハンカチにした。食べ物は毒味とかの関係があって大変だから、って。
俺にとって、旅行に行ったら親しい人にはお土産を!っていうのは常識の範囲なんだけど、こっちにはお土産という習慣がないらしい。
なので、クリス自身は特に何も用意することはなくて、俺の様子を楽しそうに眺めてるだけだった。
メリダさんやティーナさんにお土産があって、お兄さんや陛下にないのは駄目かと思ったけど、「気にするな」と言われたので、気にしないことにした。
そもそも、今回のこれは、魔物被害に関連した遠征なわけで、要は『仕事』なんだよね。
最初から旅行気分だったけど。
そこでふと思って、気になったことを聞いてみた。
「クリス、お兄さんとティーナさん、新婚旅行行かないのかな」
忙しそうだけど。
結婚式直後にはお休みがあったようだけど、旅行にはでていなかったし。
「新婚旅行?」
「うん」
「うん?」
「ん?」
クリスの反応に傍らのクリスを見上げたら、「?」がいっぱい浮かんだ顔をしてた。
あれ?
「もしかして、新婚旅行ない?」
今度はリアさんに矛先を向けてみた。
リアさんは少し困ったような顔をして、頷いた。
「一部の貴族がたまに『旅行』はするようだけど、婚姻式を結んだ後に特別な旅行に出るという話は聞かないわ」
「え」
びっくりしすぎて、後ろの護衛についてくれてる二人にも聞いていた。
「もしかして、ない?」
「ありませんね…。そもそも、私の所では旅行に行くこと自体がありませんでした」
「自分がいたところでもないですよ。旅行に出れるほどの蓄えがあったわけでもないので。婚姻の後も同様です」
……なんと。
平民出身の二人が言うんだから、一般的なものじゃないのか。
それなりのお金とそれなりに自由にできる時間のある富裕層――――貴族とか、一部の大商人であれば、二、三日の旅行に出ることもある、と。
もちろん、遠出することはある。
でもそれは、行商であったり、依頼であったり、生活に直結すること。だから、旅行じゃない。
「知らなかった……」
「でも、これが『普通』だから、こちらではあまり困らないというか、不満はないのよ」
なるほど。
住む地域どころか、世界が違うんだもんな。価値観が違いすぎるのは仕方ない。
「新婚旅行っていうのは、どういうものなんだ?」
「えと……」
腰を抱かれて、歩きながらこめかみにキスされて。
「婚姻式を挙げたあと、数日間二人だけで旅行に出るんです。普段行けない少し遠くのところとかに。二人の特別な思い出をこれからも沢山作っていこう、そんな思いを込めながら」
あ。
女性らしい観点でリアさんが説明してくれた。
「なるほど……」
それを聞いたクリスは、何やら真剣に考え始めた。
「それに――――殿下」
リアさんは、ふふっと笑って、クリスの耳元に顔を寄せた。
「――――ですよ?」
「それはいいな」
「はい」
……内緒話。
なに。
なんなの。
クリス、凄く笑顔だし。
リアさん、不敵な笑みだし。
仲間外れ感、半端ない。
ちょっとむっとしてたら、何故かクリスに片腕抱きされた。
往来です。
注目の的になってますけど!
「ちょ」
「アキが可愛い」
「はぁ?」
「そろそろ戻ろうか。昼食の前に風呂に入ろう」
「戻るのはわかったけど…」
だからって、こんなに人目のあるところで、抱き上げなくてもいいじゃん…。
「オットー、昼食後は全員自由時間でいい」
「わかりました」
「街を見て歩きたい者もいるだろ」
「………ぬるすぎて城に戻ったら叩き直しから始めないとなりませんね」
呆れ気味に言うオットーさん。雰囲気的には、手をパキパキいわせてるみたいな。
クリスは「任せる」って言って笑う。
ディックさんは顔を引き攣らせていたけど。
リオさんとか、泣かないかな……。
「アキ、どこに行こうか」
「ん?」
「来年。たっぷり休みをとるから」
「んん?」
クリスがすごく楽しそうなんだけど。
何の話だ?
「港町の方に行こうか。国内もいいが、他国もいいな。何ヶ月もかかるような場所にはいけないが、近隣であれば十分回れるはずだ」
「んーと?」
「……新婚旅行、だろ?婚姻式の翌日に出発しよう」
「あ」
話繋がってたのか!
そんでもって、色んな場所、連れて行ってくれる、って?
「へへ……楽しみ」
「ああ」
俺に触れてる手に力が込められる。
「予定をたてよう。時間はいくらあっても足りない。アキが行きたい場所、気になる場所、全部書き出そう」
「うん」
国内のことも俺ほとんどわかんないからなぁ。
地図を見ながら色々考えるのはすごく楽しそうだ。
「……春の二の月が待ち遠しいな」
「うん!」
楽しい。
色々あったけど、こうやって過ごせるのが凄く嬉しいし。
嬉しい気持ちを言葉で表しきれなくて、人目はたくさんあったけど、クリスの首に抱きついていた。
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