【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。

98 魔力暴走

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「……っ」

 どうして気づかなかったんだろう。
 俺が拘束されてるベッドのすぐ隣には、四人の全裸の男たちがいた。そいつらに囲まれて真ん中にいるのは、俺と同い年か、少し幼いかもしれない少年で。

「………っ、…、…ぇ」

 吐き気がこみ上げる。
 少年の瞳はもう何も映していない。
 濁り、開ききった瞳。
 男根を入れられてる口の端からは、白濁のものが溢れ出てる。
 不自然なほど開かされた下肢。
 身体は、色々な体液に塗れて、その中でも血の色だけが妙に浮き出て見えて。

「…………、ん、な」

 少年は、多分、もう、亡くなってる。
 なのに、犯している男たちは気づかないのか、虚ろな目のまま腰を振り続けていた。
 でも、その男たちの目には見覚えがあった。
 あまりにも同じで。
 ミルドさんがしていた、昏く淀んだ瞳に。

 酷い。
 なんで、こんなこと。

「全く……頭の悪い奴らは加減というものを知らぬから困ったものだ。怯えずとも良い。お前は私だけの花嫁だ。お前は私のカタチだけを覚えればいい」

 ニタニタと笑いながら、男の指が胸を滑り落ち、腹部を触った。殊更臍をいじり、下腹部へ落ちていく。

「………や、め…っ」

 ベルトがナイフで切られた。
 そのナイフが腹部に当てられて、ヒヤリと汗が流れ落ちる。
 刃の部分がす…っと肌を撫でた。
 ピリッとした痛みが走る。
 ナイフは下腹部へと動かされ、ズボンの合わせのところを切り裂いていく。

「………っ」

 自分の魔力がかなり少なくなっているのはわかってた。けど、やらなきゃ。やらなきゃ、駄目だ。

「…………っ、っ」

 男の手が腰骨に触れてきて、限界だった。
 残りわずかでもいい。魔力を全身に巡らせて、自分の周りに膜を巡らせる。指が動くのだから、鎖だって焼き切れる。

 ――――そう、思ったのに。

「……!?な、んで……!?」

 魔力が形にならない。集めても霧散してしまう。

「魔法は使えないよ。ここは魔法師棟だ。魔法師を諌めるための魔封じの魔導具もしっかり用意してあるのだから」

 男はそう言うと、うっとりと俺の首につけられた道具を触る。

「そう……その表情だ。美しい。絶望するといい。そして私を受け入れるのだよ。大丈夫。怖くない。私に、愛して、抱いてと、啼いて縋るようになるだけだ」

 こんな状況になって初めて、俺が無意識でも自分の魔法って力に頼っていたことがわかった。
 これがなかったら、俺は本当に、何もできないただの子供なんだ。

「さあ。気持良くなる薬を飲もうか。それとも私の力で身体を開かれるのがいいかい?でも私はこの黒曜石のような瞳を見ながらお前を犯したいのだよ」

 どれだけクリスに守られていたのか、とか。

「だから、お前が眠っている間は手を出さなかったんだ」

 どれだけ周りのみんなが優しかったのか、とか。

「ほら、口を開けて」

 どれだけ自分が無力だったのか、とか。

「強情だね。………ああ、口移しがいいかい?でも舌を噛まれるのは嫌だからね……。ああ、下の口から飲みたいかな?そのほうがとても良く効くだろうしね」

 でも、何もできない自分だけど、クリスのことを好きになった気持ちは本物で。
 クリスのためになにかしたかったのも本当で。
 クリスの足かせになりたくないのも本当、で。

 クリス。
 大好き。
 クリスだけ。






『お別れは自分の口で言うもんじゃ』
『後悔しないようにな』





 後悔したくない。
 だから、ごめん。クリス。約束、破るから。
 男の手が、また俺の下肢に伸びてくる。
 これだけ見られて触られて、それだけでも許しがたいのに。
 千切れたベルトに、貰ったばかりのお揃いの羽根の飾り。
 クリス、クリス、って、思えば思うほど、その羽根に温もりが宿る気がする。
 男の手が下着にかかる。
 触られたくない。
 見られたくない。
 クリス、お願いだから。
 助けて。
 俺、きっと冷静じゃいられないから。
 男の鼻息が気持ち悪い。
 自分の意志で引き起こすのは初めてだけど。
 身体の表面にあふれる魔力は封じられてるけど。
 でも、ある。
 身体の奥に。
 俺と、クリスの魔力が混ざったものが。
 だから、これを――――暴走、させれば。
 自分の意識は保てないかもしれないけど。また、クリスに心配をかけてしまうかもしれないけど。でもどうしても。嫌なんだ。クリス以外に触られるの。死にたくなるくらい、嫌なんだ。
 思考が加速する。
 俺に触れてくる男の動きがひどく緩慢に見える。
 だから、多分、実際には、ほんの数秒の出来事。
 ずるりと、下着を引き下ろされたとき、思考が止まって。

「やだ――――触るなぁぁ!!!」
「――――っ!?」

 俺の中で、魔力が爆発した。





 それは、魔力封じでどうにかなるものでなく。
 俺の意思でコントロールできるものでもなく。
 叫び声と同時に爆発したように溢れた俺の魔力は、首と手に付けられた枷を焼き払い、文字通りの爆発を引き起こした。















 くりす

 おれは、ここだよ
























「何事だ!?」

 突如、王城の一区画で起きた、建物一つが瓦礫と化した爆発。
 魔物の襲撃にざわめく王城が、更に慌ただしくなる。

 瓦礫となったのは魔法師棟。

 今そこに向うのは二人。
 慌てふためく人々の間を縫うように、全力で駆けていた。






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