【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第6.5章 それでも俺は変わらない愛を誓う(side:クリストフ)

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 ゆっくりとヴェルを歩かせる。
 あれほど興奮状態だったヴェルは、時折アキを見ながら、ゆっくりゆっくり、歩を進めた。
 ……ああ。ヴェルが最初に気づいたんだ。だから、アキの傍に行かなければと暴れたのか。俺に、乗れと、促して。

「ヴェル、ありがとう」

 またちらりとこちらを見てから、前を向いた。

「アキ」
「ん……なに?」

 隙間などないほどに身体を寄り添わせているのに、それでもまだ近くに行きたいと言わんばかりに、アキは俺に身体を寄せてくる。

「……いや」
「なにさ」

 胸元でくすくす笑う。

「可愛いなと思って」
「……だって、離れたくないし、甘えていたいし……クリスの匂いがするし…」

 思わず頭に口付ければ、ちらりと俺を見上げてくる。

「してほしい?」
「ん」

 照れもなく小さく頷き、じっと俺を見る。
 まあいいか。
 最初からアキの目には俺しか入っていないようだし。

 顎を取って少し身体を屈め、口付ける。
 唇が熱い。
 鼓動が速いと感じるのは、熱のせいなのか。

「ん……」

 舌を潜り込ませれば濡れた音がする。
 それも気にせず、アキは気持ちよさそうに目を細め、鼻にかかる吐息を漏らす。
 状況がわかっているのが俺だけだというのに、やめられない。
 求めていた相手がようやく腕の中に戻ってきたんだ。やめられるはずがない。

「ふ……ぁ……っ」

 アキが纏う俺の色の羽織の下に手を入れる。
 薄い服越しに背筋をなぞれば、更に甘い声が上がる。

「ん……ぅ」

 コクリと喉がなった。
 もう一度唾液を含ませ飲ませる。
 喉が鳴ったのを確認し、唇を離した。
 濡れて艶めく唇を舐め、背から手を抜き頬に触れる。

「アキ」
「……なか、あつくなった」
「魔力か?」
「……うん、たぶん」

 とろりと溶けた目元に舌っ足らずな言葉。
 半年の間放置していた下半身に、あっさりと熱が溜まっていくのを感じたが、どうにもならない状況に意地で抑えつける。

「そろそろいいか?」
「……なにが?」

 アキの頭を撫でながら周りを見ると、オットーは笑いながら呆れた目を俺に向けているし、ザイルは顔を真っ赤にしながら泣いてるし、ミルドは手で顔を覆って……泣いているのか。何故かエアハルトは背を向けていた。

「アキラさん」

 笑顔を崩さないまま、オットーが声をかけた。
 アキは驚いたように振り向き、二人きりじゃなかった現状に気づいたようだ。
 耳も項も真っ赤に染め上げ、また俺を見上げた。

「クリス」
「俺しか見てなかったろ」

 真っ赤になった目元を撫でていると、わなわなと口元が震えだした。

「く……く……くりすの……ばかああぁぁぁ!!!」

 森の中の鳥が一斉に飛び立つほどの大絶叫が、辺に響いた。

 意味をなさない言葉を声にだしながら、アキは何度も俺の胸を叩いた。
 その間に落ち着いたのか、大きく深呼吸をしてから改めて振り返る。

「オットーさん」
「おかえりなさい、アキラさん」

 動揺した様子のないオットーに、アキの身体から力が抜ける。

「ただいま!」

 嬉しそうに、笑いながら。

「ヴェルが騒いでいた理由がわかりました。アキラさんが帰ってきたことに、いち早く気づいたんですね」
「ヴェルが気づいてくれたんだ」

 アキはそう呟くと、俺をまた見上げ、くいっと服を引っ張ってくる。

「じっとしてろよ?」
「うん」

 アキから手を離し、ヴェルから降りる。
 俺に向かって伸ばしてきたアキの手を取り、馬上から下ろした。
 片腕にアキを抱き上げ、ヴェルの前に移動する。

「ヴェル」

 アキがヴェルに手を伸ばせば、優しい目でアキを見たヴェルが、鼻先を押し当てていく。

「ただいま、ヴェル。帰ってくるのに時間、かかっちゃったよ。でも、もう、どこにも行かないから。ありがとう。俺のこと気づいてくれて。そうじゃなかったら、今頃グリズリーさんのお腹の中だったよ…俺」

 アキはそう言いながらヴェルの首筋に抱きついた……が、その時のヴェルの俺を見る目が、どこか勝ち誇ったかのように見えたのは……、気の所為だと思いたい。

「アキラさん」

 騎乗していた皆が、その場に降り、膝をついていた。
 アキも改まった空気に、ヴェルから手を離し、皆を見る。

「アキラ。無事のご帰還、嬉しく思います」
「ありがとうございます。やっと帰ってこれました。これからまたよろしくお願いします!」
「はい」
「あ、でも」

 アキは、ふふ…っと笑うと、皆を見てもう一度口を開いた。

「『様』じゃなくて、『さん』で!」

 アキの言葉にオットーが笑い出す。
 最初の頃を思い出したのか、ザイルもミルドも、目元を赤くして笑っていた。
 ただ一人、エアハルトだけが、はっとした様子で目を見開く。口元を手で押さえたまま。

「わ、わ、私も、アキラと!?」
「エアハルトさんはそのままで」
「何故に!?」

 不自然に口元を押さえていた手から、赤いものが見えた。
 ……ああ、なるほど。口元より鼻を押さえていたのか。

「それにしてもエアハルトさん、入隊したんだね」
「本人の自己主張が激しくてな」
「そうなんだ?」
「まあ、俺の鍛錬の相手にもなるから丁度いい」
「へぇ」

 アキはもう一度エアハルトを見て、笑顔になる。

「よかったですね、エアハルトさん」
「ぐは…っ」

 血でも吐いたのかと思うような声を上げ、エアハルトは蹲った。

「あ、いつもどおりのエアハルトさんだ。なんかほっとする」
「……本当に変わらないな」

 鼻血を出してる段階でいつもどおりだ。
 それからアキは、また、俺の服を引っ張る。
 ゆっくりと地面に下ろすと、真っ直ぐミルドの所へ歩いていく。

「ミルドさん」
「あ……」

 狼狽えるミルドを、アキが抱き締めた。

「っ」
「よかった」
「ア…キラ様」
「さん、だってば。でも、よかった。あの後、何もできなくて…気になってたから。変わらず隊員でいてくれたこと、すごく嬉しい…っ」
「あ……アキラ様が、命を、ですが、許せなくて、自害を、繰り返し、ですが、殿下、が」
「うん……うん……っ」
「あ………アキラ様……っ」
「ミルドさんが無事で良かった。俺にとって、クリス隊の皆も、大切な人たちなんだよ…っ」
「アキラ様……っ」
「『さん』!!」
「アキラさんっ」
「そ!」

 身体を離した二人は、泣きながら声を上げて笑った。
 不思議と嫉妬心は湧いてこなかった。
















*****
昨夜というか早朝と言うか、夜中の2時ころから頭痛に襲われまして。
一行書いては、アプリを閉じ…を、繰り返し、起き上がるのもままならず…。
日曜だから2回更新!と思っていたのに、こんな時間に……。
むしろ、書けたことが奇跡かもしれないと思いつつ、具合の悪さよりアキとクリスの絡みを書きたい私の願望が勝ってたと思いつつ…。
多分今日中にもう一話は難しそう…。


最近、お気に入り数が増えてビビりつつ嬉しくなってます。
読んでくださってる皆様、本当にありがとうございますm(_ _)m
感想もとても嬉しいです。
感想に返信しながら、明後日なこと書いてる気もしますが、自分、とぼけたやつなので大目に見てください……(笑)


それでは、もう少し、クリスの章、お付き合いくださいね。


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