【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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if番外編:聖夜は異世界(日本)で

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 ゆっくりベッドに降ろされた。
 あれほど眠かったのに、ベッドの冷たさを感じると少し目が覚めるのはなんでだろう。
 クリスは静かにキスをくれた。
 啄むように触れて、それから唇を舐められる。
 少し唇を開いたら、すぐに舌が入り込んだ。
 お酒の匂いに頭の中がくらりとする。
 セーターの下に手が入り込んだ。極端に冷たいわけじゃないのに、触れられてゾクリと震える。

「……お風呂、入ってない」
「問題ない」

 促されるままにセーターの袖から腕を抜いたら、すぽんと頭から脱がされた。

「驚くものばかりだったよ」
「うん」

 首筋のとこに、息がかかる。くすぐったくて、気持ちがいい。

「平和な場所だということも理解できた。……けどな、やはり剣がないのは落ち着かない」
「そうだよね」
「ゲームは面白かった」
「クリス強かった」
「テレビは無理でも、ボードゲーム、と言うんだったか。あれは国で広めてもいいな」
「サイコロ作らなきゃね」

 首筋に、チクリと痛みのようなものが走る。舐めて吸われて、痕がついたのはわかったけど、別にいっか……って気になってて、されるがままになってた。
 ジーンズのベルトが引き抜かれる。
 ボタンも外されて、ファスナーも下げられて、普段着てるズボンよりも硬い生地だけど、するすると脱がされた。

「ん……っ」

 乳首をかすめた指が、身体の線を辿りながら、例の下着にたどり着く。

「クリス……お風呂……っ」

 ここまで脱がされて今更かもしれないけど、今日結構歩いたんだよ。汗だく、ってわけじゃないけど、それなりに汗はかいたはず。
 お城ならすぐお風呂に連れて行ってもらえたのに。
 だから、このまま抱かれることには抵抗感しかない。喘がされて前後不覚になってしまえば、そんなこと気にならなくなるんだろうけど、ここはお城じゃない。父さんも母さんも、そう遠くはない部屋にいて、しかも、客間に長野がいる。

 正直、抱かれたい。
 帰宅前のあれやこれやでふわふわと昂ってた気持ちが、全部消えたわけじゃない。
 キスをされて触れられれば、左手の薬指の指輪を見ていれば、すぐに身体が熱くなっていく。
 けど、現実的に考えて、無理だ、って思ってしまう。
 家族や友人に知られてしまうのが恥ずかしすぎる。……いや、結婚した、って堂々と宣言してるから、清い関係だなんて思われてないと、思うけど。
 でも、それとこれとはまた話は別。

 そうやって俺が悶々と考えてる間に、クリスは枕元に放置してあったポーチの中から、見慣れたものを取り出した。

「え」

 クリスが小型のナイフで指先をほんの少し傷つけ、取り出したそれに、紅い雫を垂らす。
 たったそれだけで、慣れ親しんだ魔法が俺たちの体を包み込んだ。

「え、なんで」
「備えあれば憂いなし、だったか?」

 ニヤリと笑ったクリスは、もう一つの道具を取り出して、そこにも紅い雫を垂らした。

 ――――洗浄魔導具と、遮音魔導具。

 持ってきてたなんて、知らなかった。

「これで、気になることはなくなっただろ?」

 クリスはそう言いながら、俺にキスをして、紐を解いた。

「や、電気、けして…っ」
「このままでいい」
「やだ……っ」

 魔力がなくなってないことは、昨日の段階で確認してた。だから、あの魔導具を持ち込んでたこと自体は、まあ、いい。抱かれたくなってた俺にとっては、必要なものだから。
 けど、明かりは別!
 そりゃ、クリスをしっかり目に焼き付けることができるのは嬉しいけど、ここではやだ。
 部屋には鍵もかけられないのに。
 万が一誰かが部屋に入ってきたとき、暗かったらそれなりに隠せるけど、ここまで明るいと何も隠せないんだよ。

「クリス………でんき………」

 眉が寄ってると思う。
 役者のように涙も浮かべられたら完璧なんだろうけど、そこまでは無理。
 けど、クリスは俺のその表情だけで、落ちてくれる。

「仕方ないな」

 リモコンで部屋の明かりを落としてくれた。
 真っ暗じゃないけど、落ち着く暗さまで。
 やっと、俺の体から力が抜けた。

「クリス」

 この暗さなら、甘えられる。
 身体も綺麗になった。
 音も漏れない。
 ……家で我慢できなくなってごめんなさいって、心の中で謝りつつ、セーターを脱ぎ捨てたクリスの首に腕を回した。

 お互いの舌を舐めて、熱も唾液も絡め合う。
 ジーンズを下着ごと脱いだクリスが、俺に腰を押し付けるようにしながら抱きしめてくれる。
 ぬちぬちするのが、気持ちいい。
 上も下も、とろとろに溶かされてく。

 クリスマスは、むこうの世界にはない。なのに、こんな風に、クリスとクリスマスを過ごせるなんて思ってなかった。

「クリス」

 ほんの少しだけ唇を離して、頬を両手で包み込んだ。

「ん?」

 目を細めて俺を見てくれるクリス。

「忘れてた。――――Merry Christmas。聖夜を祝う言葉だよ」

 そしたらクリスも、俺の頬を撫でて、

「メリークリスマス」

 って、微笑みながら言ってくれた。



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