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if番外編:聖夜は異世界(日本)で
⑧
しおりを挟むゆっくりベッドに降ろされた。
あれほど眠かったのに、ベッドの冷たさを感じると少し目が覚めるのはなんでだろう。
クリスは静かにキスをくれた。
啄むように触れて、それから唇を舐められる。
少し唇を開いたら、すぐに舌が入り込んだ。
お酒の匂いに頭の中がくらりとする。
セーターの下に手が入り込んだ。極端に冷たいわけじゃないのに、触れられてゾクリと震える。
「……お風呂、入ってない」
「問題ない」
促されるままにセーターの袖から腕を抜いたら、すぽんと頭から脱がされた。
「驚くものばかりだったよ」
「うん」
首筋のとこに、息がかかる。くすぐったくて、気持ちがいい。
「平和な場所だということも理解できた。……けどな、やはり剣がないのは落ち着かない」
「そうだよね」
「ゲームは面白かった」
「クリス強かった」
「テレビは無理でも、ボードゲーム、と言うんだったか。あれは国で広めてもいいな」
「サイコロ作らなきゃね」
首筋に、チクリと痛みのようなものが走る。舐めて吸われて、痕がついたのはわかったけど、別にいっか……って気になってて、されるがままになってた。
ジーンズのベルトが引き抜かれる。
ボタンも外されて、ファスナーも下げられて、普段着てるズボンよりも硬い生地だけど、するすると脱がされた。
「ん……っ」
乳首をかすめた指が、身体の線を辿りながら、例の下着にたどり着く。
「クリス……お風呂……っ」
ここまで脱がされて今更かもしれないけど、今日結構歩いたんだよ。汗だく、ってわけじゃないけど、それなりに汗はかいたはず。
お城ならすぐお風呂に連れて行ってもらえたのに。
だから、このまま抱かれることには抵抗感しかない。喘がされて前後不覚になってしまえば、そんなこと気にならなくなるんだろうけど、ここはお城じゃない。父さんも母さんも、そう遠くはない部屋にいて、しかも、客間に長野がいる。
正直、抱かれたい。
帰宅前のあれやこれやでふわふわと昂ってた気持ちが、全部消えたわけじゃない。
キスをされて触れられれば、左手の薬指の指輪を見ていれば、すぐに身体が熱くなっていく。
けど、現実的に考えて、無理だ、って思ってしまう。
家族や友人に知られてしまうのが恥ずかしすぎる。……いや、結婚した、って堂々と宣言してるから、清い関係だなんて思われてないと、思うけど。
でも、それとこれとはまた話は別。
そうやって俺が悶々と考えてる間に、クリスは枕元に放置してあったポーチの中から、見慣れたものを取り出した。
「え」
クリスが小型のナイフで指先をほんの少し傷つけ、取り出したそれに、紅い雫を垂らす。
たったそれだけで、慣れ親しんだ魔法が俺たちの体を包み込んだ。
「え、なんで」
「備えあれば憂いなし、だったか?」
ニヤリと笑ったクリスは、もう一つの道具を取り出して、そこにも紅い雫を垂らした。
――――洗浄魔導具と、遮音魔導具。
持ってきてたなんて、知らなかった。
「これで、気になることはなくなっただろ?」
クリスはそう言いながら、俺にキスをして、紐を解いた。
「や、電気、けして…っ」
「このままでいい」
「やだ……っ」
魔力がなくなってないことは、昨日の段階で確認してた。だから、あの魔導具を持ち込んでたこと自体は、まあ、いい。抱かれたくなってた俺にとっては、必要なものだから。
けど、明かりは別!
そりゃ、クリスをしっかり目に焼き付けることができるのは嬉しいけど、ここではやだ。
部屋には鍵もかけられないのに。
万が一誰かが部屋に入ってきたとき、暗かったらそれなりに隠せるけど、ここまで明るいと何も隠せないんだよ。
「クリス………でんき………」
眉が寄ってると思う。
役者のように涙も浮かべられたら完璧なんだろうけど、そこまでは無理。
けど、クリスは俺のその表情だけで、落ちてくれる。
「仕方ないな」
リモコンで部屋の明かりを落としてくれた。
真っ暗じゃないけど、落ち着く暗さまで。
やっと、俺の体から力が抜けた。
「クリス」
この暗さなら、甘えられる。
身体も綺麗になった。
音も漏れない。
……家で我慢できなくなってごめんなさいって、心の中で謝りつつ、セーターを脱ぎ捨てたクリスの首に腕を回した。
お互いの舌を舐めて、熱も唾液も絡め合う。
ジーンズを下着ごと脱いだクリスが、俺に腰を押し付けるようにしながら抱きしめてくれる。
ぬちぬちするのが、気持ちいい。
上も下も、とろとろに溶かされてく。
クリスマスは、むこうの世界にはない。なのに、こんな風に、クリスとクリスマスを過ごせるなんて思ってなかった。
「クリス」
ほんの少しだけ唇を離して、頬を両手で包み込んだ。
「ん?」
目を細めて俺を見てくれるクリス。
「忘れてた。――――Merry Christmas。聖夜を祝う言葉だよ」
そしたらクリスも、俺の頬を撫でて、
「メリークリスマス」
って、微笑みながら言ってくれた。
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