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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。
8 変わっても、変わらなくても
しおりを挟む「アキ、夕食は食べれそう?」
「あ、んー……?」
そういや俺、こっちに帰ってきてから食事らしい食事摂ってない。果実水と果物は食べてるけど、それだけで満足してた。
「食べれると思う」
寝てなければ。
だるさはないし、多分大丈夫。
「何が食べたい?」
「んー……、お粥、かな。お米の」
久しぶりのご飯だし、消化のいいものがいいよね。
「肉料理は食べれそうか?」
「うん。前のように食べれないものとかはないよ。
肉の塊も食べられる。生野菜も!…でも、食事は久しぶりな気がするから、消化のいいもののほうがいいのかな、って。
……あ、果物は食べてるんだから、普通の食事でも大丈夫なのかな?」
全く何も食べてないわけじゃないもんな。
うーん…って考えてたら、クリスとメリダさんが笑った。
「メリダ、アキの夕食に粥の用意を伝えてくれ。あと、アキが好んでいたものを少し」
「かしこまりました。一旦失礼いたしますね。何かあればすぐにお呼びください」
楽しそうに微笑んで、メリダさんは部屋を出ていった。
「アキ」
ふに…っと唇に触れられる。
押し当てられたのは、一口サイズにカットされた果物。
口に入れられて、甘酸っぱいそれを咀嚼してる間に、唇を食まれた。
「ん…ん…」
キス。
大好きな、甘いの。
ゆっくり舌が絡んで、飲み込んで。
性急さはなくて、大好きな、大好きな。
あ、そうだ。
今、二人きりなんだ。
こっちに帰ってきて、タリカで再会してから、周りにはクリス隊のみんながいて、肉体改造で寝たままで、今朝しっかり起きてからは、メリダさんがいたし、みんなと作戦会議もしていた。
だから、クリスと二人っきりで甘えられる時間は、帰ってきてからこれが初めて。
そう思ったら、なんか恥ずかしくなってくる。
ごくごく自然にクリスの膝の上に座って、果物食べながらキスしてるけど、これってどうなんだ、って。
俺、呆れられてないのかな。
図々しいとか、恥じらいもないのか、とか。
一度気にしてしまうと、どんどん気になっで落ち込んでいく。
メンタル面がまだ不安定なのかな。
きっとクリスは、気にしなくていいって、言ってくれるはずだけど。
「アキ?」
俺の頬を撫でながら、クリスの優しく細められた目が俺の顔を覗き込んできた。
「何考えてる?」
「ん……と」
言っていいのかわからない。
呆れられたら…辛い。
「アキ」
クリスの声は優しいけど。
夢じゃない、これは現実。
半年の間、俺を待ち続けてくれたのはクリスで。
俺もずっと想っていて。
前の俺は、俺だけど俺じゃない、仮の身体だった。
今の身体は本物の俺の身体。
クリスと過ごした五ヶ月の間のことを、何一つ残していない身体。
中身は俺だけど、クリスはどう思ってるんだろう。
……考えたら、きりが、ない。
「アキ」
クリスはもう一度俺を呼んで、抱き上げた。
直ぐ側のベッドに上がってベッドヘッドに背中を預けて座り、伸ばしたクリスの足の上に座らされた。
「で?何を考えすぎてる?」
「……別に」
「別に、ってことはないだろ?…俺と過ごすのが嫌?」
「そんなわけないしっ」
「じゃあ、なに?」
親指が、何度も何度も頬を撫でる。
「……俺の身体」
「うん」
「何も残ってなくて」
「うん」
「……クリス、どう思ってるのかな、とか」
「うん」
「俺、前と同じようにクリスに甘えてるけど、いいのかな、とか」
「うん」
「……そんなこと思ってたら、なんか、ぐるぐるして」
「うん」
「…………ごめんなさい」
顔を伏せたら、背中にクリスの腕が回ってきて、抱き寄せられた。
胸元から鼓動を感じて目を閉じる。
「口付けも初めてだったな」
「うん」
頭に、ちゅ…って、キス。
「アキ、俺はアキの身体を愛したわけじゃない。無垢な身体にまた俺を最初から教え込めるのは楽しいだけだし、赤みが残って動かしにくかった左肩が何の問題もなく動かせるなら、今の身体の方が良かったと思わないか?」
「クリス」
「まだ華奢すぎるが、食欲もありそうだし、歩いてもフラフラしていない。何より、魔法を使うたびに寝込むこともないだろうし、お前を失うかもしれない恐怖に怯えなくてもいいんだ。いい事尽くしじゃないか?」
思わずクリスを見上げた。
嘘付いてる顔してない。
本当に、心の底から、そう思ってる、って顔。
「……ほんとう、に?」
「ああ」
額に、唇が触れる。
「……不安に思ったことがあるなら、俺には隠すな」
「クリス」
「全部聞いてやるし、俺が不安なんて消してやるから」
「……俺、今のままでいい?」
「もちろん。……もし変わったとしても、俺がお前を愛することは変わらないがな」
「今のままでも、変わっても、クリスは俺の傍にいる?」
「当然だろ?」
「………そっか」
ぐるぐるしてたのが消えてく。
嬉しい。
「クリス」
「ん?」
「キス」
「いいよ」
すり寄って、体をくっつかせて。
触れるキスから、貪るようなキスに。
クリスの手が背中を何度も往復して、腰に落ちていく。
もっと抱き寄せられて、キスだけで反応し始めた俺の身体が、クリスにピタリと重なる。
吐息が熱い。
腰に降りていた手が、俺の尻に触れた。そんなほんのちょっとの刺激なのに、身体がビクビクしてしまう。
「は……ぅ」
「アキ」
「ん……な、に…?」
「俺に隠してることはない?」
「……クリスに?」
「そう。――――例えば、女神様に言われたこととか」
「……女神様?」
「魔力補充のことでなにか言われたことはなかったか?」
「……魔力……補充……」
そう聞いただけで、顔がどんどん熱くなってしまった。
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