【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

53 第○○回御前試合②

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 御前試合に出ることができるのは、エルスターの国民なら誰でも。条件としては成人してること。なので、男性ばかりでなく女性も出場できるし、貴族ばかりでなく平民の方も出場できる。なんなら、騎士団に所属してる人も、王族の人も。
 ただ、例外があって、クリスは成人前に出て三年連続優勝して出禁、オットーさんは一歩も動かず=強すぎて出禁、結果、クリス隊に所属した場合は、出場権がなくなることになったらしい。
 騎士団には騎士団のルールみたいなものがあって、この御前試合に出れるのは基本一人。希望者同士で模擬戦をして、勝ち残った人が出場できるんだって。そうじゃないと、希望者多数で警備が手薄になってしまうからだとか。

 出場者は、数日前から決まってる。事前申込制。ただ当日の飛び込み参加もあるそうだ。

「参加希望者は?」
「まあ、例年と変わりないくらいかと」

 演習場の、お城と反対側の普段あまり使われていない出入り口が、臨時の受付になっているんだとか。
 受付に立つのは騎士団の人。濃緑色の制服を着てる。
 そして、その受付には……結構な列ができていた。

「すごいね……」
「アキも出てみる?」
「………俺の周りに落とし穴掘って、その上の水攻めでいいなら………」

 大真面目に言ったら、二人に笑われた。
 わかってるもん。
 武器なんて持てないしっ。

「クリスがふった話だからね!」
「わかってる」

 くく…って、まだ笑うクリス。
 そのまんまぐいっと腰を抱かれて、額にキスをされた。

「そもそも、お前に剣が向けられたら俺が黙っていられないからな。元々無理な話だった」
「ほんとにさぁ。俺、刃物なんて包丁くらいしか使ったことないんだから…」

 それだって母さんがハラハラしてたのに。不器用すぎて…。

 御前試合の規定の中に『魔法使用は禁止する』って文言はない。
 けど、暗黙の了解みたいに、みんな武器で戦う。
 それは、『魔法が使える』魔水晶持ちの人は、軍属になることが一応の決まりごとだから。魔法使えるのになぜ申請出してないんだーってことになっちゃうからね。
 そのシステム自体に問題あるんだよ…とは思うものの、現状ではまだ何も変えられてないから、何も言わない。

 受付に使われてる出入り口とは別の扉から、俺たちは演習場の中に入った。
 受付を終えた人が、ロープで区切られた観客席側にいる。貴族側はまだだれもいないし、早い時間だから閑散とした演習場。結構広いな。

「アキ、何か気になるものは?」
「んと」

 クリスが聞きたいことがわかって、クリスの手を握りながら目を閉じる。
 ……相変わらずクリスの魔力は安定してるなぁ……って思ってから、いやいやそうじゃないと自分にツッコミを入れた。
 感知の範囲を少し広げる。
 演習場周囲まで網羅できるように。
 少し離れたところにエアハルトさんの魔力があった。
 それから、僅かな、魔力のゆらぎ。

「あ、れ?」
「アキ?」

 そのゆらぎはすぐわからなくなった。
 消えてしまった。

「どうした?」
「ん……、特別何かあったわけじゃないんだけど、なんか、ゆらっとした魔力を感じた気がしたんだけど、すぐ、消えちゃって。もうわかんなくなった」
「……消えた?」
「うん」

 魔法師がいるとか、魔法が使われたとか、そんなんじゃないんだよね。

「あー……、あれっぽい。えーと、『残留思念』?」
「………あれか」

 クリスがちょっと渋い顔をした。
 エーデル領に行ったときからこんな顔するよね。

「どのあたり?」
「多分……、並んでる人の辺りか……、中に入ってる人……。参加者さんだと思う。でももう何も感じないし、本当に弱いものだったし」
「ん。わかったよ。オットー、念の為、団員に注意しておくよう伝えてくれ」
「ええ。わかりました」

 なにもないと思うけどね。

「他には?」
「特になかった。えっと…、時々感知したほうがいいのかな」
「ああ。頼めるか?」
「いいよ。クリス傍にいるんでしょ?」
「もちろん」

 なら、怖いものなし。
 握ってた手に力を入れたら、いつものように片腕に抱き上げられた。





 予選は大体九時頃から開始になった。
 人数が多いので、広い演習場をいくつにも区切って、組を作る。
 一組が五人くらい。その中で勝ち残った人が、本戦に出るんだそうだ。
 組み合わせは、貴族も平民も関係ないくじ引き制を提案して採用された。出場者が引くんじゃなくて、各組の審判が引いてく形。名前を呼ばれたら、その組に移動する。
 平民の方々の中にも、ずば抜けて強い人はいるんだよね。オットーさんのように。強くならなきゃならない事情がある…っていうのをよく理解できたから、とても複雑な心境ではあるんだけど。
 日本じゃ必死に強くならなきゃ…なんて考えたこともなかったし、こっちでもなんだかんだ守られてるから。……なんかちょっとね。申し訳ないような、そんな、複雑な気持ちになる。
 でもオットーさんは俺に対して厭味みたいなことを言わない。優しい。それから、俺のことをちゃんと認めてくれる。
 だから、余計、俺は俺ができることを頑張ろう…って、気合を入れることができるんだ。

 予選が始まったら、クリス隊の面々は、外回りの警備。
 オットーさんとザイルさんは、クリスの近くで演習場内の警備と監視についてる。
 予選だけど、観客も増えた。
 演習場内を見渡したときに、わっと歓声があがり、どうしたのかと思ったら、王族の席に陛下とお兄さんが出てきていた。
 陛下はみんなに向かって手を振ったあと、用意されていた椅子に腰掛け、会場内を見渡している。
 ……午後からは俺もクリスとあそこに行くのか……。なんか恥ずかしいな……。

 予選試合は進んでいく。
 組によっては一時間程度で本戦出場者が決まったところもあった。

「今年はどうですか」
「難しいな」
「……そうですね」

 クリスとオットーさんは、お互いに視線を合わせることなくそんな会話をしていた。
 なんのことだろう。
 首を傾げたら、不意に魔力のゆらぎを感じた。

「アキ?」

 比較的、陛下のいる王族席に近い組。
 ゆらぎはまたすぐに消えた――――けど。

「クリス」
「ああ」

 俺の視線の先に気づいたのか、クリスは俺を抱き上げるとその場に向かった。
 オットーさんとザイルさんも動く。

 ゆらぎのもとにいたのは、一人の男性出場者だった。
 騎士の人たちは何も気づいていない。
 細身の少し短い片手剣を構えている。
 その男性は、ちらちらと何度も王族席の方を見ながら、じりじりとそちらに近づいていた。

「オットー」
「はっ」

 オットーさんが組と組の合間を縫うように駆け出した。
 目的はあの男性だ。あの人の目は、もう陛下しか見ていない。

「ザイル、陛下のところに」
「御意!」

 俺たちの動きに気づいた出場者の人たちの視線を感じる。
 その直後。
 陛下に向かって投げられた武器をオットーさんが剣で弾き落とす音が、演習場内に響いた。



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