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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。
62 子猫あらため
しおりを挟む「………」
「………」
「みゃ」
俺とクリス、只今絶賛頭悩ませ中です。
日本式エイプリルフールな日に保護した子猫は、どうやら子猫ではなかったようです。
あ、うん。
エイプリルフールだから「嘘だったんだよねー!最初から魔物の子って知ってたさ!てへ」なんてことを言うつもりはさらさらありません……。
ふりふりと可愛らしくゆれる二つの尻尾に唖然としつつ、いち早くショック状態から立ち直ったクリスが、俺に服を着せて、自分の身支度も終えて、ベッドの上に座り直した。
…で、俺達の間には、二つの尻尾をふりふりさせながら、前足で顔をかくマシロがいる。
「…………あの」
「ん?」
「実は…………」
視線をマシロからクリスに向けた。
クリスは特に怒ったりはしてない。それはわかる。
「マシロの……名前をつけたとき」
「うん」
「……ちょっと……、魔力が抜けた、気がして」
「………」
……あ。
クリスの視線がちょっと痛い。
なんで言わなかったんだ的な。
「………どう、しよう?」
マシロはわかっているのかいないのか、首をちょっとだけ傾げて、クリスをじっと見上げてた。
そんなマシロと俺を見比べて、クリスは溜息をついて眉間をもみほぐす。
「……同じ仕草をするな」
言われれば確かに、マシロ、俺と同じ動きだった。
「恐らく、名付けが『契約』になったんだ」
「血、じゃなくて?」
「俺も魔物の使役に関して全てを把握してるわけじゃないが、血を与えることで一種の『契約』にはなるらしい。だから、闇市で商人が話した内容は、決して間違いというわけではないんだ」
「でも、血を与えるだけで契約になるなら、戦ったりして噛まれたりしたら、その人の血が魔物に与えられたことになるよね?」
「そうならないのは、魔物が成体だからだな」
「大人だと契約にならない?」
「ならないわけではないが、難しいだろうな。自我が強すぎる。魔物使いとして活動している者たちが使役する魔物は、ほとんどが幼体で捕獲され、契約者の血を与えられながら育てられているはずだ。且つ、魔力なり体力なり、何かを制限する魔導具がつけられることもある」
目からウロコがぽろぽろ落ちそうだった。
すごいな、この世界の魔物使いの人…!
魔物と遭遇した事自体、俺自身はまだそんなに数が多いわけではなくて、目にしたのは成体ばかりで、幼体なんてみたこともない。そもそも、幼体がいるのかすら、魔物がどうやって増えていくのかも疑問なのに。
「魔獣と呼ばれるような魔物は、生態は動物に近い。巣が時々見つかる。あとは、比較的知能の高い魔物が巣を作る。…それもわかっているのはごく一部だが」
声に出してないのに、知りたい事を教えてくれる。
「でも、だったら、動物と魔物の違いが曖昧になりそうだけど…」
「基本的には、人に対して攻撃的か、そうではないかで区別されてる」
「あー……、敵対か中立か、みたいな感じ?」
「そうだな。あとは、魔力を有しているか、いないか。普通の動物は基本的には魔力を持たない。……だから、アキが『魔力を感じない』と言った時点で、その可能性は消したんだ」
「……重ね重ねすみません……」
面目なくて深々と頭を下げた。
ちらっとマシロを見たら、マシロも『伏せ』みたいに、ベッドに突っ伏してた。……こんな状況だけど、真似するマシロが可愛すぎて顔がニヤける……。
「でも、本当に魔力感じなかったんだけど」
「これも恐らくだが、魔力枯渇状態だったんだろう。魔力枯渇で死ぬのは、人ばかりじゃないんだ。魔力を持つ魔物も、魔力が枯渇すれば死ぬ」
「あー……」
「だが、魔力を持つアキが助けた。僅かに漏れ出るアキの魔力をマシロが食べたんだ」
「……俺、食べられた覚えないんですけど……」
「ミルクを指で舐めさせたりしてただろ」
「あー……、した」
「舐めることで魔力を食べたんだろう。生命維持ができる程度の魔力を摂取して、なんとか動けるようになった」
そういえば、指を舐めたあと、お皿に手を突っ込むくらいには動けるようになってたもんな…。
「そして決定的なのが」
「名付け?」
「そう。名を与えることで、アキとマシロの間に魔力的な繋がりが出来たんだと…思う」
「魔力の繋がり…」
マシロの体は小さい。
俺の片手に載せられるくらいに小さい。
こんなに小さいマシロと俺が、魔力でつながる、って。
「……マシロ、大丈夫なのかな」
「ん?」
「俺の魔力……多いんだよね?そんなのに繋がったら……、マシロが辛くない?マシロ、こんなに小さいのに…」
「心配するのはそこなんだな…。問題ないだろ。今のマシロが、辛そうに見えるか?」
きょとんと俺を見て、顎の下を指でくすぐったら気持ちよさそうな顔をするマシロ。
「……見えない」
「だろ?」
クリスは笑って俺の頭を撫でた。
……もしかしてこの流れって、魔物とわかったマシロはお城に置いておけないとか、そういうんじゃ、ない……?
「マシロ、尻尾を一本にすることはできるか?」
クリスがマシロに話しかけた。
実に自然に。
マシロは真面目な顔のクリスに、いつものような猫パンチを繰り出さず、じっと顔を見てる。
それから何かを理解したのか、俺に顔を向けてきた。
「できる?」
マシロは首を自分の体の後ろに向けながら、ゆれる尻尾を見た。
「あ」
その時、初めてマシロから魔力を感じた。
いつも綺麗な赤い瞳にキラッとひかりのような物が浮かんで、魔力が僅かに高まる。
それから、二つ揺れていた尻尾は、魔力が落ち着くと元の一つのふさふさな尻尾になっていた。
「おお……凄い!凄いよ、マシロ!」
「み」
手放しで褒めてたら、マシロは「褒めて褒めて」とでも言うみたいに、すりすりと俺に頭をつけてきた。
「偉いよマシロ!大好き!!」
「みゅぅ」
抱き上げて小さな顔にすりすりしたら、嬉しそうな声がして、俺の頬をペロペロ舐めてくる。
尻尾も音がしそうなくらい振られてるけど、それは犬の仕草では?……猫(魔物)もするのか……?
「構いすぎ。舐めすぎ」
クリスがいきなりマシロをつまみ上げた。
マシロは一瞬呆けたけど、すぐ尻尾でクリスの手を攻撃し始める。
「とにかく、とりあえずはこれでいいだろう。マシロは人前では絶対に猫で通すんだ。そうしなければ、大好きなアキの傍にいられなくなるからな?」
クリスの言葉に、マシロは尻尾を止めた。
首の後ろを掴まれてる状態で、顔を後ろに向けてクリスを見て、弱々しく鳴いた。
「魔法も魔力も禁止。わかったな?」
……こくんこくんと頷いてるように見える。
「あと、アキ」
「はい」
「甘やかすな」
「はい?」
「お前はマシロに構いすぎだ。自重しろ」
「えー……。だってこんなに可愛いんだよ…?」
「可愛くてもなんでも、だ。……もう直、俺の伴侶になること自覚してるか?」
「してるし……!」
「なら、マシロより俺を構え」
「へ」
笑ったクリスが、マシロをベッドの上に置いて、俺にキスをしてきた。
え、え。
クリスが、マシロに嫉妬?敵対心?なにそれ。可愛すぎない!?
ベッドに押し倒されて、キスをたくさん。
俺の手をベッドに縫い付けてるクリスの手に、一心不乱にマシロが猫パンチしてるのが、なんとなく目を開けたとき視界に入った。
うーん。
どっちも可愛いな!!
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