【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

69 そわそわ

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 神殿から戻ってもまだお昼の時間ではなくて、明日のために少しでも執務を終わらせる…ってことで、直接執務室に来た。
 実際にどう動くのか…とか、当日の打ち合わせをしたことで、益々現実味を帯びてきたクリスとの結婚式。
 本当に、確実に、クリスと結婚……って思うと、また俺の中は転げ回りたいような落ち着かない状態になってしまって、マシロをギューギュー抱きしめてた。
 そんなことをクリスの膝の上でしてたけど、クリスは笑うばかり。足とかばたばたさせてるのに、一切動じず書類を確認して指示を出して、サインして……要は、いつもどおりに仕事をこなしてた。
 内心の大興奮を落ち着けるためにマシロのふわふわのお腹に額をくっつけて、ちょっと落ち着いたらクリスの匂いにまたしても興奮状態になって……繰り返し。
 マシロのぬくもりとふわふわが癒やしてくれるから、ギューギューしながらすりすりしてたら、流石のマシロも嫌になったらしく、頭に痛くはない猫パンチを食らってしまった。

「……マシロが冷たい」
「みゃぅ」
「まだ小さいんですから、そんなに締め付けたりしたら苦しいんだと思いますよ?」

 苦笑しながら言うのはザイルさん。
 そうなの?って意味を込めてマシロを見たら、小さくこくこく頷かれた。

「ごめん……マシロ」

 でも落ち着かないんだから仕方ないんだよ。

「はぁ……」

 そうだ。
 クリスの匂いに反応してるんだから、ソファに行けばいいんじゃね?…と妙案を思いつき、いそいそと膝から降りようとしたら、クリスの手がそれを阻んできた。

「どこ行くんだ」
「えっと……、ソファに……」
「駄目。アキはここにいろ」
「むぅ」
「なにか理由でもあるのか?」
「理由……」

 ……クリスの匂いにドキドキしすぎて落ち着かないので、少し離れたいだけです。

 なんてこと、オットーさんとザイルさんの前で言えるわけないじゃん!

「えっとぉ……」
「理由がないなら、ここ。アキの定位置だろ?」

 ぐいっと、腰を抱かれた。
 逃げられん。
 しかも、マシロは俺の頭の上に飛び乗って、いつものへばりつきスタイルになったから、ぎゅーってできなくなったし……。

 やばい。
 バクバクする。
 落ち着かない。
 軽い深呼吸してなんとなく視線を上に向けたら、クリスと目があって、「ん?」と、微笑まれた。
 それだけでまた俺の中身が『きゃー!!』って感じになって、心臓がバクバクうるさくなった。

「ク、リス」
「なに?」
「…ソファに行かせてください」
「だから、駄目だと」
「……俺も駄目……。死にそう……」

 心臓止まる。ほんとに止まる。

「まったく…」

 笑ったクリスが俺を抱き上げたまま、立ち上がった。
 ううう……。格好いい……。

「ザイル、すまない。茶を淹れてくれ」
「はい」

 ザイルさんの声も楽しそう。
 クリスは俺をソファに下ろすと、隣に腰掛けてきた。

「ク」

 顎を掴まれて、早業のキス。
 舌がにゅる…って入ってきて、俺の舌を舐める。そのたびにビクビク体が震えた。
 キス……好き、気持ちいい…、って浸っていたら、簡易キッチンの方から、ガシャンって何かが割れる音がした。
 なに…って見ようとしたら、クリスに顔の向きを直されて、深いキスが続いた。
 このキス、好きだけどダメなやつ。
 心臓はほんと止まりそうだし、体も熱くて困る。
 本気の本気でやばい、勃つ……って思ったときに、唇が離れていって、最後にリップ音を鳴らして唇に触れるだけのキスをされた。

「く、りす」
「少しは落ち着いたか?」
「……なんでこれで落ち着けると思うのさ……」
「そうか?」

 クリスはそれはそれは楽しそうな、機嫌が良さそうな笑顔で、俺の頬を撫でる。
 ……こんなにクリスを意識する俺がおかしいのかな……?

「どうぞ」

 柑橘系の香りの紅茶が、俺の前に置かれた。

「ありがとうございま、す?」

 お茶を用意してくれたザイルさんの顔が、ほんの少し赤い気がする。あー…、なんか割れた音がしたし、なんかあったのかな。
 まあいいや。

「いただきます」

 お茶を飲んで落ち着こう。
 そうだ。
 柑橘系の香りは爽やかで気分が落ち着くじゃん。
 手元が震えるけど、無視。
 すぐ傍でクリスが「飲ませてやろうか?」って言ってくるけど、それも無視!
 ……無視してたら、指が髪を弄び始めた。
 たったそれだけのことにドキドキそわそわしてしまって、落ち着けない。

 メリダさんが昼食を持ってきてくれて食べたときも、フォークは落とすし、指引っ掛けて果実水のグラスをひっくり返すし、もう散々。
 見かねたクリスが俺を膝の上に移動させて、「アキは口だけ開けて」って言ってきた。
 またクリスの匂いが近くなる。
 俺の場所。
 大好きな場所だけど、今の俺にとっては甘すぎる場所。
 一口一口、少なめに食べさせられる。

「美味いか?」
「……味がわかりません」

 素直に言ったら、みんなが笑った。
 なんで笑うかなぁ。

 素直に口だけ開けたり開いたりして、ひな鳥よろしく完全な餌付け状態の昼食を終えて、食後の紅茶もクリスがカップに手を添えるおまけ付きでなんとか飲んだ。
 ほっと一息ついていたら、またしてもクリスに抱き上げられた。

「クリス?」
「少し休め」
「や、大丈夫だし」
「ダンスの練習はその後だ」

 ……クリス、聞く耳持たない。
 抵抗してもおろしてもらえず、そのまんま仮眠室に連れ込まれた。
 ゆっくりベッドに降ろされて、すぐに唇が塞がれる。

「んっ」

 たっぷり舌を絡めて、流し込まれる唾液を飲み込む。
 クリスの魔力はすぐに身体中に回って、ポカポカと温かくなった。
 頭を撫でられて、マシロが頬を舐めて、クリスは唇を離すと濡れたそれを俺の耳元につけた。

「眠れ」
「っ」

 ぞわりと感じてしまった体。
 でも、俺の体に回ったクリスの魔力が反応して、俺を眠りの中に誘っていく。

「一眠りすれば少しは落ち着くだろ」

 っていうクリスの言葉に返事はできなかった。
 クリスの手を感じながら、俺は眠りに落ちた。



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