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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。
73 俺が悪い
しおりを挟むクリスとキスを繰り返して。
じゃれてくるマシロと遊んで。
じゃれるクリスとマシロを眺めて。
今日が本当に結婚式の日なのかちょっと疑問に思ってしまうほど、ゆったりとしていて、のんびりとしていて、穏やかな午前中だった。
時折、無言で微笑みながら俺の髪を弄ってくるクリスが、やたら格好良く見えて、見惚れてしまう。気づいたらクリスを見つめてて、慌ててマシロのお腹を撫でたり。
お兄さんとティーナさんの結婚式のときは、午前中の式だったから、朝起きたときから大忙しだったんだって。でもそれが普通。
午前中に式を挙げて、昼餐会を挟んで、王都に結婚を伝えるパレードみたいなものに行って、帰城してからは改めて他国の使者の人との会談。一息ついたら、次は夜会。そこでも貴族や他国の人からお祝いの言葉が贈られて、ダンス披露。
翌日も帰国する使者の人たちの見送りとか、もう色々。
すごく大変。
それら全てを笑顔でこなすのが……王太子と王太子妃の役割、なんだそうで。
気力も体力もすごいね…。
んで、今日の俺たちの式は、そんな朝からどうこうするようなものじゃなくて、午後から。なんなら、三時頃から。
昼餐会、パレードは無し。
他国への招待状は出していないので、基本会談も無し。貴族はそれなりに出席するだろうけど、貴族たちとの挨拶は夜会のときに少しくらい。
……という、かなり簡略版。
クリス的に、自分は臣籍に下る身だから、他国との繋がりは必要ないんだとか。むしろ、姫を、王子を……と、紹介される可能性があるから、最初からその煩わしさは排除したんだとか。
結婚したその日の夜に、自分の旦那様(って表現するのは滅茶苦茶恥ずかしいな!?)に別の人を勧められると、俺の精神がゴリゴリ削られそうだし、笑ってスルーなんてできなくてキレまくる自分しか想像できないから、良かったと思う。うん。
他国には、後で書状でのみ報告するそうだ。
繋がりを持ちたい国が後で勝手に接触してくるのは、まあ仕方ないから内容を吟味して対応するんだって。
臣籍に下ると言っても、一国の王子。本当にそんな対応でいいのかちょっと疑問に思う。もしかしたら、クリスにそう判断させたのは俺のせいじゃないのかな、とか。余計なことを考えてしまう。
あまりにも違うから。なんか別の意図があるんじゃないかと勘ぐってしまうんだ。
俺、女神様に認められたと言っても異世界人だし。教養なんて学んでないただの高校生だったし、外交とかにもノータッチだし、容姿だって特別優れてるわけじゃない。
他国の人との歓迎がどうこう言う前に、この国の貴族の人からも嫌われてたり疎んじられてたりするし。
……マイナス要素しか出てこない。
だから、クリスは、陛下は、お兄さんは、俺が他人とあまり接触しないような予定を組んだのかな、と。恥にならないし、と。
あー……。
そっか。そうだよな。結局そういうことだよな。
王籍から離れる予定であっても、王族は王族。第二王子の相手が、こんな教養もなにもない俺じゃ……見劣りするというか、釣り合わないんだ。
周りは優しい人たちばかりだから、俺に対して面と向かっては言わないけど、多分、きっと。
……当日の昼になって、思い至ることじゃない。遅すぎでしょ、俺。
そしてこんなタイミングでそんなこと考えてしまうから、少ない食事がなおさら喉を通らなくなるし、手まで震えてくる。
クリスと結婚できる、って浮かれてたけど。でも。
俺じゃ、駄目なんだ。
「アキ?」
……いやだ。こんなの、やだな。
なんか、変だ。
いつもなら考えないようなことを考えてる。
考えて考えて、涙が止まらなくなる。
「アキ」
クリスが呼んでくれるのに、応えられない。
どうしよう。
胸が苦しくて、痛い。
「アキラさん…」
「大丈夫だから。メリダ、何か温かくて甘い飲み物を用意してくれるかな」
「はい。すぐに」
メリダさんが慌てて部屋を出ていってから、クリスが俺の体の向きを変えた。
クリスと向かい合うように座らされる。
「どうした?」
目元を指先で拭われた。
肩に飛び乗ってきたマシロは、頬に流れてる涙を舐め始める。
「……わか、んない…っ」
悔しいのか、悲しいのか。
それとも、別な感情なのか。
クリスが俺に向けてくれる愛情を疑ってるわけじゃない。疑いようもなく、クリスは真っ直ぐちゃんと言葉で、態度で、示してくれている。
なのに、俺は、駄目で――――
「アキが今何を思っているのか…話してくれないか?」
「………でも」
「アキは俺が泣いていたとしても、気にならない?」
「………気になる」
「なら、俺も同じだとわかるだろ?」
「………うん」
クリスが泣く状況なんて、レア過ぎてアタマ真っ白になりそうだけど。
「………俺が、悪いんだ」
「ん?」
「俺が、何も、しないから。できないから」
俺が悪い。
他の誰でもなくて。
俺が。
クリスの胸元に額を押し付けて、少しずつ、ゆっくり、思いを口にした。
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