【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

84 婚姻式⑥

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遅くなりました(T_T)


***** *****





 礼拝堂の中は静かだった。
 クリスは俺の肩を抱いたままだから、俺は胸の前で両手を組んだ。クリスとか兵士さんたちがする片手を胸に当てるスタイルは、とても格好良くて見惚れる(見惚れるのはクリス限定)けど、自分にはしっくりこないんだよね。神棚とか仏壇に手を合わせるってのに慣れ親しんでたから、両手を重ねたり組んだりしたくなる。こっちのほうが落ち着くし。
 お祈りの姿勢は決められたものがないって言うから、俺は俺、で、いいんだと思う。



『私は神官として、王族として』

「私は魔法師として」

『「この国が正しき道を歩むように、より善き方へ向かうように、礎としての役割を果たします」』



 僅かに、息を呑む音が聞こえる。
 陛下とお兄さん、かな。
 ……別に、国のために犠牲になるよって宣言じゃないんだ。
 大切な人たちが沢山いるこの国を守っていきたいんだ。
 それだってどちらか一人が背負うんじゃなくて、俺たち二人で。二人なら、きっと何も怖くない。

 クリスと額を重ねたまま視線を合わせて、微笑み合う。
 二人なら。
 お互いを守り合えるから。



『「互いが欠けることなく、互いを認め、互いを支え合いながら、この先へ進み続けます」』

『「これから起こりうる全ての苦難に、私達は二人で向き合い、乗り越えていきます」』



 俺にとっては宣誓。
 クリスにとっては祈り。
 これは、俺たちが国を思う未来を約束する言葉。
 体の内側が熱くなる。
 視界の中で光がふわふわと舞っている。
 


 ――――それから。



『私――――クリストフは、アキラを生涯の伴侶とし、愛し、慈しみます』

「私――――アキラは、クリストフの伴侶として、誰よりも愛し、共に歩みます」



 不思議。
 好き、愛してる、って、いつも言う言葉で、いつも聞く言葉なのに、今この場で口にしていると、いつもと違う響きになる。
 なんて表現したらいいんだろう。
 いつもより、もっともっと心の奥深くに染み込んでくるような、突き刺さっていくような。

 間近にあるクリスの碧い瞳の中に、キラキラと金色の光がちらつく。
 重ねていた額を離した。
 俺の肩を抱いていたクリスの手も離れて、ヴェールの下に入り込んで俺の頬に触れてくる。



「愛してる」
「うん。俺も」
「アキ…俺の半身。女神様の御下に還るときは共に」
「クリスは俺の世界そのものだから。共に生きて、共に還るのは、俺の望みでもあるから」



 互いに『うん』と頷き、向き合っていた体を神殿長さんの方に向け、差し出されたクリスの左手に、俺は右手を重ねる。
 神殿長さんは静かに微笑みながら俺たちを見守っていた。
 クリスの言葉が祈りの言葉になっているからか、俺が無意識に魔力を使っているからか、礼拝堂の中にはもうずっと光が舞い続けている。



『「私達が共に女神様の御下に還るまで」』



 死が二人を分かつ理由にはならない。
 死ぬときは一緒に。
 どちらかが欠けた世界で生き続けるのは無理だから。
 女神様の御下に還るときは一緒に。互いを、連れて行く。
 もう絶対に、一人にはしない。

 俺たちの言葉を聞き終えた神殿長さんは、静かに頷いてから俺たちの頭に指で触れた。

「貴方方の強い想い、女神様に届いたことでしょう。その言葉を違えることなく、お二人の想いのままにこの地を光で満たしてください」
「「はい」」

 祈りと誓いは終わった。
 クリスに重ねていた手をギュッと握られ、先に立ち上がったクリスが俺に立つよう目だけで促してくる。

「婚姻の証を」

 俺も立ち上がって姿勢を正すと、神殿長さんがそう言った。
 そういえば俺、お揃いの装身具…のこと、何も聞いてない。
 何を用意してくれたんだろう…と思いながらドキドキして待っていたら、神官さんが黒い布の台座を運んできた。大きくはなくて、両手で収まるくらいのもの。
 それが俺たちの目の前に運ばれてきて、肝心の装身具を見たとき、思わずクリスとその装身具を交互に見てしまった。

「クリス」
「アキ、左手を」

 黒い布張りの台座の上には、大きさの異なる白金の細い造りで、小さな石が三つずつあしらわれた指輪。
 小さい方には黒い石を一つとそれを挟むように碧い石が二つ。大きい方にはそれとは逆で碧い石を挟む黒い石。

「クリス、これ」

 クリスは特に何も答えず俺の左手を取り、甲に唇を軽く押し当ててから薬指に小さい方の指輪を滑らせた。
 それは俺のサイズにピッタリで、違和感なんて何もなかった。

「アキ」

 ドキドキしながらもう一つの指輪を手に取った。
 何気なく内側を見たとき、『A to C』って文字が目に入った。
 思わずリアさんの方を見たら、滅茶苦茶いい笑顔で手を振られた。彼女の膝の上で大人しくしてるはずのマシロは、ふさふさの尻尾をかなり揺らしてた。……それが二本に見えるのは、俺の見間違い……だと思いたい。

「アキ」

 もう一度優しく呼ばれて、クリスに視線を戻した。

「……クリス、俺、驚きすぎて心臓止まる」
「止まらないから」

 くすくす笑うクリスの左手を取って、同じように薬指に滑り込ませた。
 ……別に、結婚に憧れを持っていたわけじゃない。女の子のように、ドレスが指輪が、なんてこだわりを持っていたわけじゃない。
 だけどこうして俺とクリスの指に同じ指輪が嵌っているのを見ると、妙な嬉しさがこみ上げてくる。
 俺とクリスの色の石が嵌め込まれた指輪が、左手の薬指に。こちらにはそんな習慣はないのに。
 しかも、内側にはこちらにはないアルファベットで刻まれた俺とクリスの頭文字。
 俺からクリスへ。
 じゃあ、俺の指輪にはクリスから俺へと、刻まれているんだろうか。
 見たい。けど、多分ここで外すのは駄目だ。
 どう考えてもリアさんだよね。
 きっとクリスが、リアさんに聞いたんだ。俺たちの世界での結婚について。
 俺のために、用意してくれた。
 俺たちの世界の文字まで刻んで。

 ――――こんなの、嬉しくないわけ、ないよね?

 俺、幸せすぎるよ、



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