【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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閑話 ⑤

短冊に願いを込めた《前》

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*4章やりなおしお茶会に入る前あたりのお話です。







 少しだけ歩けるようになった。
 左肩はやっぱり痛くて、まだ自力で動かすことはできないけど、指はほんの少しだけ動くようになったし、続いてるリハビリでも前のような激痛は感じなくなっていた。
 動いてるからか、食事も食べれる量が増えた。何より何より。

 窓から入ってくる日差しが強くなったように感じていたから、季節が変わったんだなぁ…とは思っていたけど、メリダさんから夏のニの月に入ったと言われて、ちょっとショックだった。
 春の三の月、夏の一の月――――五月、六月中、俺ってばベッドの住人だったわけか。そんなに経っていたなんて、改めて聞かされると本当に死にかけてたんだな……ってちょっと怖くもなった。

「クリス」
「ん?」
「外…まだ出たら駄目?」
「もう少しな」

 肩を抱き寄せられて、こめかみにキスをされる。
 外…まだ駄目かぁ。
 部屋の中ちょっと歩けるようになったくらいだもんね。スタスタ歩けるとは思ってなかったけど、クリスに抱っこされた状態なら、出てもいいかな…って思ったんだけど。

「……アキ」
「なに?」

 退屈とかではないんだけど、なんだかこのまま取り残されそうで、少し、不安とか。
 でも仕方ない。
 クリスに心配をかけないのが一番だから。
 仕方ない仕方ない……って心のなかで繰り返していたら、クリスにヒョイと抱き上げられた。

「え」
「外には出せないが」

 クリスは俺を抱えたまま窓際まで行くと、滅多に開けない窓を開けてくれた。

「わ……」

 今まで意識したことなかったけど、クリスのこの部屋は一階にあって、窓の外には背の低い木とか花が植えられた庭になってた。
 流れる風は少し暑い。
 室内は過ごしやすい室温なのに、窓の外はしっかり暑い夏だった。

「俺、動けるようになったら窓から出てみたい」
「却下」
「なんでっ」
「まるっきり不審者だろ」
「むう。やってみたいのに……」

 二階なら、シーツを繋いで窓から垂らしてこっそりお出かけとか。やってみたいんだけどなぁ。運動神経ないけど。
 呆れたように笑うクリスは放っておいて、夏の空を見上げた。
 …この空は変わらない。日本と同じ。太陽が二つなことを除いて。
 夏。
 夏だなぁ。
 夏って何してたかな。
 プール…とかは行かなかった。外行くくらいなら、エアコンガンガン効かせた部屋でゲームしたり、シナリオ考えたりしてたかも。

「クリス、今日って何日?」
「七の日だ」
「……七……」

 つまり七月七日。
 ……七夕じゃん。

「クリス」
「ん?」
「七夕しよう!」
「……ん??」

 思い立ったが吉日、ってね。

 まあ、でも、思い立ったのはいいけど、何をしたらいいのかわからない。
 とりあえず短冊。浴衣は諦める。特別な料理……何かあったっけ?お団子はお月見だったよね?
 竹……は、ない気がする。

「クリス、竹……って、ある?背の低めのやつ」
「たけ…?聞いたことがないが……」
「あー……そっか」

 だめじゃーん……。
 どうしよう。

 色画用紙もすぐあるとは思えない。まあ、ちょっと厚い紙でそれはいいとして……、どうせ雰囲気だけなら、窓の外にある背の低い木でもいいかと思い直した。
 じゃあ、短冊はあの背の低い木につけさせてもらおう。
 昼間は暑いから夜に眺めたい。天の川……も、ないけど、雰囲気だ、雰囲気!

「アキ……何を考えてる?」
「あのね」

 七夕のこと、クリスに説明した。
 クリスは相槌を打ちながら、聞いてくれた。
 それからの行動は俺より早かった。
 ちょっと席を外すと部屋を出ていったクリスは、戻ってきたときには手に紙を持っていて、メリダさんも一緒に来ていた。

「面白い風習があるんですね」
「すっかり忘れてたけど」

 メリダさん、笑って短冊に何か書き込んでる。
 縦長の短冊だけど、横に向けて横書き。うんうん。別にいい。
 お願いごとは盗み見たら駄目だよね。
 サラサラと書いたメリダさんは、すぐそれをクリスに渡していて、「料理長様に何か特別なものを用意してもらえるように伝えてきますね」って部屋を出ていった。

 俺もテーブルに移動して短冊に羽根ペンをあてた。
 …怪我したのが左で良かった……というか。
 紙が動かないように抑えるのが大変……と思ってたら、クリスが抑えてくれて、なんとか書くことができた。

「………っ」

 ……俺の手元を見て笑うクリス。
 言いたいことはわかりますぅ!へったな字でごめんなさいね!?
 仕方ないじゃん。
 結局練習なんてほとんどできてないんだからっ。

「クリス、見たら駄目っ」
「そうなのか?」
「そうなの!」
「……けどもう見たからなぁ」
「これ以上見ないでっ」
「はいはい」

 もうもうって怒りながら、その実あまり怒ってはいないんだけど、こちらの言葉で書いた願い事。

 はやく治りますように。
 クリスと手を繋いで外に出たい。

 そんな内容。
 それから、もう一枚を手にとって、それには別の願い事を日本語で書いた。

「……これは、アキの世界の言葉?」
「うん」
「なんて書いてるんだ?」
「秘密」
「後で教えてくれるだろ?」
「後でね」

 絶対叶えたい願いだから。
 ……クリスがいないと叶わない願いだから。

 クリスも短冊に横書きでサラサラと書いてた。覗き込もうとしたらキスされて阻止された。
 ……自分は俺の見たくせにっ。もうっ。














*****
うっかり次話1500文字消してしもた……。
次話できるだけ早く書き直します……><
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