【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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閑話 ⑤

★お気に入り4000お礼★ 魔法はキスで解けるもの《前》

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「クリス、いってらっしゃい」
「ああ」

 クリスは今日、朝から国の重鎮さん方となんだかの会議があるらしい。
 流石に俺はでしゃばるわけにいかなくて、午前中は久しぶりに部屋でのんびりだ。

 きっちり制服を着たクリスに、背伸びをして唇を合わせる。
 くいっと腰にまわってくる腕にぴたりと体を寄せられる。
 俺も背中に腕を回して、少しの間の別れを惜しんでいたのだけど。

「みゃっ!!」

 マシロが俺たちの間に飛び込んできてキスの邪魔をする。
 ん、いつもどおり。微笑ましい。

「マシロ……」

 地を這うようなひっくいクリスの声に、焦るのはいつも俺だけ。マシロはつーんとクリスから視線を外して、ひたすら俺に甘えてくる。

「ほ、ほら、クリス、もう行かなきゃでしょ?」
「……ああ」
「あ、えっと、お昼は一緒に食べれる?それまでに会議終わる?」
「終わる。終わらせる」

 マシロが抗議の声を上げるのも無視して、クリスは俺の腰をまた抱き寄せて、ちゅって頬にキスをした。

「じゃあ、また昼に」
「うん」

 胸にマシロを抱いて、クリスに向かって手を振った。





 んー!!
 両腕を思い切り伸ばして背筋をしならせて、思い切り伸びをした。
 クリスを待ってる間、本を読んでいたはずなんだけど、俺はどうやら眠ってしまったらしい。多分、マシロと一緒に。
 だって、ね?
 本を開いたまま胸の上において、それはそれは気持ちよさそうに寝てる俺が目の前にいるから、疑いようもない事実で。

 ………ん?

 俺は声も出せずにその光景を見てた。
 ……目の前に俺がいる。え。なんで?
 しかも、超アップ。

「みゃ」

 なんで…って声を出そうとしたら、出てきたのはいつも聞いてるマシロの可愛い声だった。
 はっとして自分の手を見たら、ちいさなピンク色の肉球がついてる。
 もしやもしやと後ろを見たらふさふさの尻尾が揺れている。ゆらゆらしてるその尻尾にじゃれ付きたくなって、思わず追いかけたけど、追いつけるわけもなく、自分の尻尾を追いかけてその場でくるくる回るってのを自ら実践してしまった。

 うん。俺、マシロだ。
 じゃあ、マシロはどこ……って思って『俺』をみたとき、『俺』は気だるそうに目を開けて、それから俺を見てニコっと笑った。

 ……あ、マシロだ。間違いない。

 『俺』の中にはマシロがいる。
 マシロの中には俺がいる。

 なんでこんな入れ替わりが起きたんだろう。
 これ、いつ戻るの?

 うみゃーうみゃーと悩んでいたら、『俺』なマシロに抱き上げられて、ほっぺすりすりからの鼻先にちゅちゅとキスをされた。
 ……マシロ、なんか楽しそうで嬉しそう。
 自分にこうやって可愛がられてるってのは落ち着かないけど、体の小さなマシロからだとこう見えてるんだなぁって思うとちょっと楽しかった。

「にゃー」

 でも、マシロ。
 どうやったら戻れるかわかる?

 …って聞いても、『俺』は首を横に振る。
 そっかぁ。そりゃ、マシロにだってわかるわけないよな。

 更にうみゃーうみゃーって鳴きながら悩んでいたら、部屋にノックの音がした。
 メリダさんかな。
 いつもなら返事できるけど、『俺』はこてんと首を傾げたまま動かない。
 ああああ…………って思いながら『俺』の腕の中から飛び降りて、部屋のドアまで駆けた。
 やたらとでかいドアを見上げて、一生懸命カリカリとかっちゃいた。

「みゃあ」

 これでメリダさんが開けてくれればいいなぁ。

「あら、マシロちゃん?」

 よかった。メリダさんがドアを開けてくれた。
 俺はその隙間からさっと体を滑り込ませた。

「お出かけしたいの?」
「みゃ」
「アキラさんと一緒じゃなくていいの?」
「みゃ」

 頷いて見せれば、メリダさんは少し思案げだったけど、にこにこしてる『俺』を見て肯定と捉えてくれたみたい。

「遠くに行ってはだめよ」
「みゃ」

 居間のドアも開けてくれた。
 護衛に立っていた巨人なミルドさんと目があったけど、特に何も言われずに俺は部屋の外に出た。
 なんかね。せっかくだし。冒険に出てみたいなぁ、って、思っちゃったんだよね。





*****

 会議は思っていたより長引かなかった。
 昼の時間までさまだ少し余裕がある。アキを連れ出して庭でゆっくりするのもいいかもしれない。それとも、部屋で甘やかしていようか。
 何にしても早くアキに会えるのが楽しくて仕方ない。ほぼ一日中傍に居るようなものだが、それでも足りないと思うくらいなのだから、僅かに離れていただけでも寂しいと感じるのは仕方ないだろう。

 主室を横切りさっさと寝室に入る。
 アキはメリダが淹れた茶を飲んでいるところだった。
 にこにことした笑顔が酷く可愛い。

「アキ」

 近づき、手を伸ばしたところで、ぴたりと止めてしまった。
 アキは俺を見た途端、ふいっと視線をそらし、明らかに不機嫌な表情をする。

「アキラさん?」

 困惑したのはメリダの方だ。
 何度も俺とアキを見比べ、最終的に俺に「何をしたんだ」っていう目を向けてくる。
 俺たちが喧嘩でもしたのかと思ってるんだろう。
 俺は未だに不機嫌そうなアキから手を引いた。

「メリダ、マシロはどこにいる?」
「え?マシロちゃんでしたら、散歩に…」
「一人……いや、一匹で?」
「ええ」
「ん。わかったよ。探してくる。それまでアキの相手をしててくれるかな」
「ええ、わかりました、坊っちゃん」

 どこかホッとしたようなメリダと、俺にそっけないアキを寝室に残し、俺は部屋を出た。

「ミルド、マシロはどこに行った?」
「マシロ…ですか?マシロでしたら、さきほど向こうに歩いていきましたが」

 執務室のある方向だ。
 ……まっすぐそこに向かったとは考えにくいが。

「オットー、ミルド、大至急マシロを探せ。団員総出だ」
「……わかりました」

 訝しげな二人にそう指示を出し、俺自身もマシロを探すために部屋からはなれた。
 ……全く。
 一体何をやらかせばこんなことになるんだか。折角会議が早く終わったというのに、これじゃあ昼食だって一緒にとれるかどうかわからない。

「予想外なことばかりしでかすんだからな……」

 まずは執務室の方に行こうか…と歩き始めた。



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