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俺が魔法師である意味
49 どんなときでも羞恥心は忘れずに……
しおりを挟む「正直さ、あんな花びらとかお菓子とか、なんの意味があるんだよ……って思ったんだ。けど、いつもなら一晩中リリの魔法が暴れてるのに、なんにも起こらなくてリリはすごく普通だし、いや、普通なんてものじゃなかった。薬飲んでもぐったりしてて、なんとか水を飲めるくらいだったのに、顔色もいいし、ご飯も食べてくれたし。今朝は薬飲まなかったけど、食欲もあるしずっとニコニコしてるんだ。これ、絶対、あのお菓子がすごいってことだよな!?あれ作ったのあんたなんだろ!?あんなことできるようになるんだったら、俺、あんたのところで学びたい…!!」
「『あんた』じゃないっ。『アキラ様』とお呼びしろっ」
「…いや、エアハルトさんは黙ってて」
収集つかないから。
大興奮のトビア君に迎えられた俺たち。
リリアちゃんに花びらクッキーは効果覿面だったようで、両親にまで涙ぐまれてしまった。
それで、昨日から今日にかけてトビア君と両親が話し合った結果、こんなことができる俺の所で魔法師として学ぶことができるなら、魔法師団に入団していいんじゃないかと結論づいたらしい。
正直、花びらは俺だけの力で出来てるわけでもないし、クッキーを焼いてくれたのも料理長だけど。
「家族が納得してるならいいよね?」
「いいんじゃないか」
何故か苦笑するクリス。
「えっと、手続きとかって、なんかある?」
エアハルトさんとアルフィオさんに関しては暫定的だし、話の流れ的な感じがあったけど、正式に入団ってなるとどうしたらいいのかわからないな。こんなに早く団員ができるとも思ってなかったし。
「入団申請書と、身分証明が必要だな」
「身分証明?」
「ああ。トビアの場合はここの村長が用意してくれるはずだ」
さらりと言ったクリスに、両親の顔が青ざめた。
「ですが、村長には――――」
「案ずることはない。間違いを正せばいいだけだ」
言い切るクリスが格好いい。
……なんて惚けてる場合じゃなかった。
「身分証明はすぐもらえる?」
「問題ないだろう」
「申請書はお城だよね?」
「そうだな」
「それなら、今日さっさと手続きしちゃっていいよね」
「お前がいいと言うならいいんじゃないか。誰も止めたりしないさ」
「ん」
笑ったクリスが額にキスをしてくる。それをなんの疑問も羞恥もなく普通に受けて、視線をトビア君の方に向けると、妙に真っ赤な顔で俺たちの方を見てた。
あまりにも日常的で気にしていないクリスからのキス。
あー……と思っても遅い。
俺の周りには慣れすぎててなんの反応もしてこない人ばかり。そんな環境に俺が慣れてしまってる。
「あー……、えーと」
「お噂通り仲睦まじいのですね」
両親からはそんな言葉をニコニコした笑顔でもらった。でもトビア君は真っ赤な顔で固まったまま。十五歳……俺と三歳しか違わないけど、気をつけないとだめだよね。
……俺も羞恥心忘れないようにしよう……。
◆side:マシロ
あきのおしごとは忙しい。
くりすのおしごとも忙しい。
ましろはいつもばあばといっしょ。
さみしくないけど、ちょっとだけさみしい。
だから、あきが「今日はいっしょ」っていってくれたのがすごくうれしかった。
あきがおでかけするってきいても、いっしょにいたいからくりすにしがみついてきた。
「あのね、ごうごうってなるの」
「ふぁ」
ましろよりちょっとおおきい子は、りりっていう。
あきとくりすはだいじなおしごとだから、ましろはりりといっしょにおうちの外のくさの上であそぶ。
ましろのそばには、ザイルとエアハルトがいる。
いるは、オットーと、いっしょ。
るとは、アルフィオと、いっしょ。
いるはやさしいから好き。
るとはときどきまりょくがぐわーってなるからちょっとこわい。
「ごうごうってなったら、おなかぐるぐるで、おにちゃがぎゅってしてくれるの」
「あぃ」
「あのね、でもね、おかしたべたら、ぐるぐるもなくなって、ごうごうもしなかった!」
「ましろ、あんまいの、しゅき」
「りりも、すき!」
りりといっしょにえへへってわらう。
あきのお花はとくべつ。
お花のおかしもとくべつ。
お花だけでも甘くておいしいけど、おかしはもっとおいしい。
「ましろは、ごうごうって、ならないの?」
「なんなぃ。あね」
あきにおしえてもらったまほう。
手をあわせて、お水が出るようにおいのりする。
「みじゅ…」
お水、お水、お水。
合わせた手のなかに、少しだけ、お水が出てくる。
「おみず!」
「できた!」
りりがよろこんでくれた。
「いる、ると」
「出来ましたね」
「発動が早くなりましたね」
そばにいたふたりも、わらってましろのあたまをなでてくれた。
できたよ!ってあきにも見てもらいたくて、手をそのままにたちあがったら、お水は手の中からこぼれて、なくなっちゃった。
「あ」
「…おみじゅ……、なくなった」
手はすぐかわいたけど。
「もういっかい?」
「はぅ……」
りりがわくわくしたかおをしてる。
してもいいのかな。
「マシロ」
「いる」
すわりこんだましろのとなりに、いるもすわった。
やさしい手があたまをなでてくれる。
「魔法の練習はアキラさんと一緒にする約束ではなかった?」
「はぅっ」
「さっきの一回はアキラさんには黙っててあげるから。二回目は駄目ですよ?」
「あぃ……」
やくそく、だいじなの。
「ごめちゃ…」
「なんで?まほう、だめ?」
りりのまゆがへにょりとなった。
「あね…」
ましろは、だめ、って。ひとりじゃ、だめ、って。
目があつくなる。
りりのおかおも、へにょりとなったまま。
「二人とも」
ましろを、いるがだっこした。
りりは、るとがだっこした。
「魔法を使うことは駄目なことじゃないですよ。アキラ様は常に使ってるじゃないですか」
「でも、やくそく」
「それは、マシロ殿がまだ子供だからです。魔法の使い方を正しく覚えていないから、アキラ様も殿下も心配されるんです。…リリア殿も同じですよ」
「……だめじゃない?」
「駄目じゃありません。この先ちゃんと使い方を覚えればいいんです。魔法は便利で楽しい力なんですよ」
あきも、りりに言ってた。
だめじゃない、わるくない、て。
「私は魔法に関しては全くわからないですけど、エアハルトの言うとおりですよ。だからマシロもリリアちゃんも泣かないで」
いるは困ったようにわらってた。ずっと、せなかをぽんぽんってしてくれる。
「――――えと、なんかあった?」
おうちから出てきたあきが、だっこされてるましろたちをみて目を大きくした。
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