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あの日、あの場所
4 さよなら
しおりを挟む「……シエル」
「ただのシエル。ここの…管理人」
「管理人?」
「そう。ここは秘密の花園。俺は、その管理人」
「悪魔ではないのか」
ごく真面目にそう言葉にすると、少年――――シエルは、楽しそうに笑い出す。
「悪魔じゃないよ。別に、人を見境なく誘惑して堕落させることもしないし。こんなふうに誰かを助けることも……ない」
「なら、何故俺を助けた?」
「気まぐれ。あんたの魔力が美味しそうだったし、たまには人助けしてもいいかなってさ」
「俺は特別か?シエル」
名を呼ぶと、シエルの身体が震えた。
シエルを真っ直ぐ見つめ続ければ、ふと視線を外してしまう。
「……特別だよ」
俺のことを特別だと言うのに、目元にはなんの感情も浮かばない。
シエルはゆっくりと俺に視線を戻した。
「特別だけど、二度目はない」
微笑みながら。
その微笑みは、諦めや後悔ではない。
既に決められていることを、淡々と表しているものだ。
「俺の傍に来いと言っても?」
「行かない。そもそも、行けない」
「お前を愛してしまったと言っても?」
「アル…アルフレッド、それは違う。お前は悪い夢だったと気づく。俺の想いとお前の想いが重なることはない」
今何を言っても、彼を手に入れることはできないのだと、短く嘆息する。
「シエル」
名を呼び、唇を奪う。
やはり彼は悪魔なのだ。出会ってすぐに心を奪われるなど、ありえない。
それでも。
それでも俺は、シエルがほしい。
「シエル……っ、シエルっ」
「ふぁ……っ!!」
シエルの太腿に手をかけ胸に向かって押し曲げた。
限界まで口を広げ俺の物を呑み込んでいる後孔と、反り返り先端から体液を零すシエルのものが眼前に顕になり、酷く興奮する。
「アル……アルぅ…っ」
愛しい。
甘い声で俺を呼ぶシエル。
共にこないと言うなら、首を縦に振るまで通えばいい。
気の迷いでも、悪い夢でもない。
俺は、真実、シエルを求めているのだから。
「シエル…愛してるっ」
「っ!!」
シエルは驚き、泣き笑いの顔を見せ、首にしがみついてきた。
そうして幾度となくシエルを抱いた後、急激な眠気に襲われた。
「魔力もらいすぎたから。ごめん。俺がもうちょっとコントロールすべきだった」
「……シエル」
「俺はどこにも行かないよ。…どこにも」
沈む意識の中で、額に暖かな唇の柔らかさを感じていた。
「おやすみ、アルフレッド。それから、さよなら。お前のおかげでもう少し生きれそうだ」
シエルのその言葉が何を意味するのかわからないまま、意識を手放した。
「アルフレッド…!!」
「…ん?」
比較的耳元で名を叫ばれ、意識が浮上した。
森の中には日差しが差し込み、夜が明けたのだ知れる。
俺は大きな樹の幹にもたれかかるように寝ていたらしい。
「なんでこんなところで寝てるんだ…!崖から落ちただろ!?怪我は!?」
「あ、いや、怪我は、ない」
状況が把握できていない。
自分は青い花園にいたはずだ。
そこでシエルに出会い、シエルに生を与えられた。
「…シエル?」
思わず周りを見る。
けれど、花園などどこにも見当たらない。あるのは、普通の森の木々と、自分を心配する仲間騎士たちの顔だけだった。
王都に帰り着いてからも、俺は度々あの森に出向いた。
けれど、どんなに探しても花園は見つからない。
「シエル……っ」
『さよなら。お前のおかげでもう少し生きれそうだ』
その言葉が何度も頭の中で繰り返される。
シエルの、儚げな微笑みとともに。
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