あの日、あの場所、君に出逢えた奇跡

ゆずは

文字の大きさ
5 / 23
あの日、あの場所

4 さよなら

しおりを挟む



「……シエル」
「ただのシエル。ここの…管理人」
「管理人?」
「そう。ここは秘密の花園。俺は、その管理人」
「悪魔ではないのか」

 ごく真面目にそう言葉にすると、少年――――シエルは、楽しそうに笑い出す。

「悪魔じゃないよ。別に、人を見境なく誘惑して堕落させることもしないし。こんなふうに誰かを助けることも……ない」
「なら、何故俺を助けた?」
「気まぐれ。あんたの魔力が美味しそうだったし、たまには人助けしてもいいかなってさ」
「俺は特別か?シエル」

 名を呼ぶと、シエルの身体が震えた。
 シエルを真っ直ぐ見つめ続ければ、ふと視線を外してしまう。

「……特別だよ」

 俺のことを特別だと言うのに、目元にはなんの感情も浮かばない。
 シエルはゆっくりと俺に視線を戻した。

「特別だけど、二度目はない」

 微笑みながら。
 その微笑みは、諦めや後悔ではない。
 既に決められていることを、淡々と表しているものだ。

「俺の傍に来いと言っても?」
「行かない。そもそも、行けない」
「お前を愛してしまったと言っても?」
「アル…アルフレッド、それは違う。お前は悪い夢だったと気づく。俺の想いとお前の想いが重なることはない」

 今何を言っても、彼を手に入れることはできないのだと、短く嘆息する。

「シエル」

 名を呼び、唇を奪う。

 やはり彼は悪魔なのだ。出会ってすぐに心を奪われるなど、ありえない。
 それでも。
 それでも俺は、シエルがほしい。

「シエル……っ、シエルっ」
「ふぁ……っ!!」

 シエルの太腿に手をかけ胸に向かって押し曲げた。
 限界まで口を広げ俺の物を呑み込んでいる後孔と、反り返り先端から体液を零すシエルのものが眼前に顕になり、酷く興奮する。

「アル……アルぅ…っ」

 愛しい。
 甘い声で俺を呼ぶシエル。

 共にこないと言うなら、首を縦に振るまで通えばいい。
 気の迷いでも、悪い夢でもない。
 俺は、真実、シエルを求めているのだから。

「シエル…愛してるっ」
「っ!!」

 シエルは驚き、泣き笑いの顔を見せ、首にしがみついてきた。

 そうして幾度となくシエルを抱いた後、急激な眠気に襲われた。

「魔力もらいすぎたから。ごめん。俺がもうちょっとコントロールすべきだった」
「……シエル」
「俺はどこにも行かないよ。…どこにも」

 沈む意識の中で、額に暖かな唇の柔らかさを感じていた。

「おやすみ、アルフレッド。それから、さよなら。お前のおかげでもう少し生きれそうだ」

 シエルのその言葉が何を意味するのかわからないまま、意識を手放した。






「アルフレッド…!!」
「…ん?」

 比較的耳元で名を叫ばれ、意識が浮上した。
 森の中には日差しが差し込み、夜が明けたのだ知れる。
 俺は大きな樹の幹にもたれかかるように寝ていたらしい。

「なんでこんなところで寝てるんだ…!崖から落ちただろ!?怪我は!?」
「あ、いや、怪我は、ない」

 状況が把握できていない。
 自分は青い花園にいたはずだ。
 そこでシエルに出会い、シエルに生を与えられた。

「…シエル?」

 思わず周りを見る。
 けれど、花園などどこにも見当たらない。あるのは、普通の森の木々と、自分を心配する仲間騎士たちの顔だけだった。





 王都に帰り着いてからも、俺は度々あの森に出向いた。
 けれど、どんなに探しても花園は見つからない。

「シエル……っ」





『さよなら。お前のおかげでもう少し生きれそうだ』





 その言葉が何度も頭の中で繰り返される。
 シエルの、儚げな微笑みとともに。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。

月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」 幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。 「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」 何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。 「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」 そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。 僕、殿下に嫌われちゃったの? 実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...