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幼馴染み二人と村から旅立ちます
2 お嫁さんにはなれないよ
しおりを挟むディーの背中で寝て起きたら、お昼時になっていて、大きな木の下に座らされました。
ディーは「ちょっとトイレ」と言って離れていって、エルはその間にお昼ごはんの準備をしてくれたよ。
「フィー、飲んで」
「はーい」
手渡されたのは、僕が愛用してる陶器のコップ。14歳の誕生日のときに、ディーとエルからプレゼントしてもらったの。僕の、大事なものの一つ。
中に入ってたのは、柑橘系の香りのする果実水で、うん、さっぱりしてて美味しい。エルの作り置きだ。
「んー、美味しい」
「よかった」
クピクピ飲んでたら、お手洗いに行ってたディーが、ハンカチで手を拭きながら戻ってきた。
「エル、俺にも」
「はいはい」
すっと差し出された手に、エルはもう用意してあったらしい、僕と色違いの陶器のコップをディーに手渡した。
それを受け取りながら僕の右隣に座ったディーが、果実水を一気に飲み干すと、すぐにエルがコップに足していく。
「………ディーとエル、なんか……夫婦みたい」
ぼそっとつぶやいた僕に、ディーが盛大にむせて、エルの手から果実水が入っている水袋がポトリと落ちた。
「「はあ!?」」
うわ。耳がきーんてなるよ…声大きすぎ!
「な、なんでそういうことになるんだよ!?よりによってエルと…!?」
「そうだよ…!!なんで私がディーなんかと……!」
「え?だって、今のやり取り、お父さんとお母さんそっくりだったよ?なんか、普段だって、二人で通じ合っちゃってるし……」
……あれ?なんだろう。言ってて悲しくなってきた。
ぐす……って鼻をすすったら、ディーに捕まった。おでことおでこがくっついて、しばらく僕のこと見てたと思ったら、ため息をつかれた。
「あのなぁ……フィー……、俺とエルはどう転んでも夫婦にはなんねえよ」
「そ……なの?でも……」
「嫁もらうなら、お前がいいな。可愛いし、可愛いし、可愛いし」
「僕……?」
「そ。だから、俺のとこに嫁に来いよ。幸せにしてやるから」
「あ、ディー!!何抜け駆けしてるのさ!」
くっつけてたおでこが離された。
そしたら、今度はエルがぎゅってしてくれる。
「私もフィーがいい。ね?私達のところにお嫁においでよ。絶対幸せになるよ?」
「二人のお嫁さんになったら、幸せになれるの?」
「「なれる」」
エルが僕から手を離して、二人並んでまっすぐ僕を見てくれる。でも、僕は、悲しくて……。
「僕………二人のお嫁さんになれないよ……?」
「「え!?」」
「だ……、だって、僕、男の子だもん……。お嫁さん、って、女の子のことでしょ……?」
「「あ」」
「だから、僕……幸せにしてもらえないけど、でも、今すごく幸せだから……きっと、我慢できるから」
「「あー………」」
二人ともがっくり項垂れた。ごめんね。僕男の子で。
「……まあ……いいわ。また今度にしよう。ちょっと俺も性急すぎた、っていうか、まあ……言葉としちゃ正しいよな………」
「わかっては……いたけど、うーん……。ああ、ほら、フィー、そんな顔しないで。他の誰かをお嫁にもらう話じゃないからね?というか、私達、女の子のお嫁さんはいらないからね?三人で暮らせるのが一番幸せだからね?」
「そ……なの?」
「そうだな。俺もいらない。フィーがいてくれるだけで、幸せになれるよ。フィーは?俺達といたら幸せになれない?」
「ううん!!ディーとエルがいてくれてら、僕、いつでも幸せになれるよ!」
「だよな?」
「いい子だね、フィー」
「うん」
お嫁さん、いいのか。
よかった。
僕のディーとエルが取られちゃうのかと思った!
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