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幼馴染み二人と村から旅立ちます
8 幼馴染の苦悩③/D
しおりを挟む9歳のときに自覚したフィーへの恋心は、14歳になった今でも変わらず俺の中にあった。
エルとはその話はしたことがなかったけど、多分、俺と同じようにフィーのことを想ってると思う。
フィーははにかみ笑顔が可愛らしいけど、案外人見知りで、大勢の中に入るのは嫌がったし、俺とエルから離れようとしなかった。心を許してもらえてるこの状況は、俺にとってとても嬉しいことだった。
俺はよくフィーを抱きしめる。柔らかくて暖かくて何より照れた顔が可愛らしい。エルもフィーのことを抱きしめる。
「なんでぼくのことぎゅってするの?」
可愛いから、好きだから、したいから。
本当のことを言うのは躊躇われた。嫌がられたら立ち直れない。
「私達は幼馴染だから、家族と一緒なんだよ。お父さんやお母さんとは、ぎゅってするでしょ?」
「うん」
「だからね、私もディーも、フィーのことぎゅってするんだよ。可愛くて大切な大好きな幼馴染だから。『特別』なんだよ。フィーは、私達にとって、『特別』な幼馴染」
エル、すごい。
ちらりと俺を見た顔は、「どうだ。感謝しろや」と言っていた。はい。感謝します。しますとも。
俺のフィーに対して抱いている感情とか、エルなら気づくよな。うん。だよな。
「……ね?幼馴染って、ずっと一緒?」
……って、フィーが上目遣いで俺たちを見てきた。上目遣いも何も身長差があるからそうなるんだけど、その事実を取り去っても、俺達の服の裾を掴んだその仕草も相まって、可愛すぎて息が止まる。
「ずっと一緒だ」
今すぐ抱き締めて、キスして、服を脱がせて、体中を舐め回したい。そんな劣情を意思の力でしまい込み、フィーの頭をなでた。
「一緒にいるよ」
エルも頭を撫でると、ぱあっとフィーの顔に笑顔が浮かぶ。
……う。可愛い。
「よかった!嬉しい!!ぼく、ずっとふたりと一緒!」
左腕を取られて抱き込まれた。エルは右腕を。
あ、やばい。鼻血出そう。
あー、キスしたい。せめてぷにぷにのほっぺでいい。ちっちゃくて可愛い口に、なんて贅沢は言わない。
「フィー、『特別なこと』もうちょっとしてもいい?」
「うん!」
あ。
だめだ。
俺たちの天使、絶対悪いやつにひっかかるぞ、これ。
まあ、俺は『悪いやつ』じゃないから遠慮はしないけどな。
フィーの右のほっぺに、軽く唇を押し当てた。……案の定、ほっぺはぷにぷにで、気持ちがいい。
唇を離したら、フィーの顔が真っ赤になっていた。
「大切な幼馴染だけの、『特別』な挨拶だよ?俺達と、フィーだけの、『特別な挨拶』。秘密だよ」
「とくべつな、あいさつ……」
「じゃあ、私も」
エルも左のほっぺにちゅって音を立ててキスしていった。
フィーの顔は、また真っ赤。
恥ずかしいのか、顔を俯かせてもじもじしていたフィーが、顔を上げた。
それから、一生懸命背伸びをして、……諦めて、じわっと涙の浮かんだ瞳で俺とエルを睨む。可愛いけど。
「ふたりとも、座って!」
一体どうした。怒らせたか。キスが嫌だったか。って、色々考えたけど、座った直後に左の頬にふにっと柔らかい感触がして時間が止まった。
……え?
「お、幼馴染の『特別な挨拶』なら、ぼくだって、したいもん……!」
「「フィー」」
耳まで真っ赤。
エルも右の頬を抑えて真っ赤。
多分俺も。
俺たちの天使が可愛すぎて、俺の身体が持ちません……。
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