幼馴染二人と冒険者になりました!

ゆずは

文字の大きさ
22 / 247
幼馴染み二人と村から旅立ちます

10 幼馴染の苦悩⑤/D

しおりを挟む



 フィーが12歳になった日。どうしても伝えたかったことがあった。
 お祝いのためにフィーの家に来ていた俺とエルは、フィーを連れ出し、家の近くの丘の上まで足を運んだ。
 正直、伝えていいものか悩む。けど、先延ばししていいことでもないし、なにより、フィーに思いを伝えたい。きっと、きっと、フィーならわかってくれる、了承してくれると、信じて。



「こんなこと、まだ12歳のフィーに言うことじゃない、って、わかってはいるけど、でも、言わせてほしい」
「ディー……?」
「フィーのことが、誰よりも大切なんだ。家族よりも誰よりも、大切で仕方ない。ずっと傍にいたい。心から、愛しているんだ」



 ……ああ。もっと格好つけた言葉をいろいろ考えていたのに。いざ口に出そうとすれば、やはり緊張からか、思っていたことの半分も伝えられなかった。

 でもフィーはわかってくれたのかもしれない。ただじっと、潤んだ熱を帯びた瞳で俺を見てくれる。
 ああ、フィー。
 可愛くて、愛しいフィー。

 それ以上の我慢などできるはずもなく、今まで頬にしかしなかったキスを、フィーの唇に落とした。軽く触れるだけのキスだったが、フィーの唇は想像以上に柔らかくて、あたたかかった。

 唇を離すと、さっきよりもぼーっとした瞳で俺のことを見るフィー。頬はほんのり色づいている。

 今日この告白をしようと思っていたのは俺だけじゃない。エルと二人で決めたことだ。
 だから、次はエルの番。
 俺より余程口の回るエル。
 エルの言葉を聞きながら、少し悔しくなる。俺の言葉より、フィーは聞き入ってるし、エルの想いがよく伝わる。これならエルの、俺達の想いがフィーに届くはず。

 だけど、予想外のことをエルがしでかした。
 俺は触れるだけだったフィーの唇を、あいつはぺろりと舐めやがった。
 その時のフィーの顔!気持ちよさそうにうっとりとしたその表情に、なんとも言えない衝動がこみ上げ、エルが唇を離した直後、フィーの頭を抑え込んで深い口づけをしてしまった。
 うっすら開いた唇の隙間から、舌をねじ込み、フィーの舌をべろりと舐める。何度かしていれば、フィーの舌も動き始めた。そのうち、短い切なげな吐息が、フィーから漏れてくる。
 ああ、いい。
 抵抗されない。応えてくれる。
 思う存分フィーの舌を味わい、じとっとこちらを睨みつけてくる視線を感じながら、唇を離した。赤く濡れた唇に目が惹きつけられる。下腹部に熱が溜まってきたのを感じながら、艶めいた表情をするフィーを、しっかり抱きしめた。

「俺たちの気持ち…わかっただろ?」
「え……?……う、ん?」

 少しぽやっとした返事だったけど、エルからも、ほっとした雰囲気が伝わってきた。
 冒険者になって稼いで、三人で一緒に住むこと。正式な結婚はできないかもしれないけど、事実婚なのだからそれはどうでもいいこと。フィーが傍にいてくれるだけで癒やされるから。だから、その生活を手に入れるために、俺とエルは、18になったら村を出る。
 少しの間、フィーの傍から離れるのは、すごく、つらいけど。

「……僕が、成人するのって……、ディーたちが行っちゃってからまだ4年もあるよ……?」

 寂しさをにじませて、さっきまでの艶めいた顔は消えてしまった。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

【完結】僕は、妹の身代わり

325号室の住人
BL
☆全3話  僕の双子の妹は、病弱な第3王子サーシュ殿下の婚約者。 でも、病でいつ儚くなってしまうかわからないサーシュ殿下よりも、未だ婚約者の居ない、健康体のサーシュ殿下の双子の兄である第2王子殿下の方が好きだと言って、今回もお見舞いに行かず、第2王子殿下のファンクラブに入っている。 妹の身代わりとして城内の殿下の部屋へ向かうのも、あと数ヶ月。 けれど、向かった先で殿下は言った。 「…………今日は、君の全てを暴きたい。 まずは…そうだな。君の本当の名前を教えて。 〜中略〜 ねぇ、君は誰?」 僕が本当は男の子だということを、殿下はとっくに気付いていたのだった。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...