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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
11 それは奇跡のような/神殿長
しおりを挟む礼拝堂に近づくと、今まで感じたことのない清々しい空気に包まれた。
一体どういうことだろう。
自分でも気づかないうちに緊張していたらしい指先を少し動かしてから、礼拝堂に続く扉を開けた。
「………これは」
その光景をどう表現すればよいのだろう。
天使の降臨……、いや、女神の降臨?
そんな馬鹿げた表現が浮かんでしまうほどに、礼拝堂には女神の気配が満ちていた。
その気配の中心には、溢れんばかりの浄化の光を発している一人の少年がいた。
彼の後ろに佇む二人は、かたや少年を見守り、かたや呆然と空を見ている。
…ああ、なるほど。銀髪の青年にもこの光り輝く光景が見えているのか。
光の中心で祈っているのは、それほど年端の行かない子供に見えた。
薄桃色の銀髪が、光に触れて時折ふわりと吹かない風に靡く。
あの髪色は、偶然か、必然か。
彼は何を思って祈りを捧げているのだろうか。
礼拝堂にいた祈りに来ていた人々は、彼の様子に気づく者、気づかずに話に興じる者、様々だ。
恐らく、今の彼には周囲のざわめきなど聞こえてはいまい。
彼の耳は何を聞いているだろうか。天使の歌声か、女神の囁きか。
そうやってしばらくの間、祈る少年を見守り続けてしまった。
そして、はたと、自分の役目を思い出し、一歩前に出る。
「随分と熱心に祈っているね。君がラルフィン君かな?」
突然声をかけられたことに驚いた少年は、弾かれたように私を見た。
それと同時に、礼拝堂に満ちていた光と気配が霧散していく。それを、少し残念に感じてしまった。
「君の祈りは素晴らしいね。それほど純粋なものは久しく見なかったよ」
少年はまだ呆然と私を見る。
「……え、と」
「ああ、すまないね。私はこの神殿を任されている神殿長のヒューベルト・オリバーだ。ラルフィン君」
名乗れば、少年の後ろの二人も、肩から力が抜けたように見えた。
守護者然とした二人の青年。
この少年を慈しみ、護る存在なのだろう。
「神殿長……さん」
「ああ。そうだよ。ここで話すのもなんだから、少し場所を変えよう。……君たちも一緒に来るといい」
少年よりも先に茶色の髪の青年が頷いた。
「よろしくお願いします」
折り目正しいお辞儀。
うん。好感が持てる子たちだ。
そして、もう一度少年を見た。
この長くはない人生の中で、出会えた二人目の奇跡のような『例外』。
果たして、この少年はどんな道を歩むのだろうか――――。
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