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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
17 神殿の一日②
しおりを挟む朝食の後は部屋で少し休んで、三の鐘が鳴ったら勉強する部屋に行く。
それまでの小休止の間、特にすることもないので渡されたとても厚い本を手に取った。
読書は嫌いじゃない。絶対必要だから、って、ディーとエルが共通語はしっかりと教えてくれたから。それに、これは、僕が知らなかった女神さまの事が書かれてる。…楽しくないわけがない。
そうしていれば、時間なんてあっという間に過ぎてしまう。
三の鐘が鳴ったのを聞いて、その本を閉じてから両手で持ち上げ、部屋を出る。比較的すぐに片手に同じ本を持ったキリル君と合流して、勉強の部屋に向かう。
中には結構な人数。年齢は様々。どうやら僕は最年少らしく、18歳未満は、僕とキリル君の他には二人しかいないらしい。
でも、大人の人たちは、みんな優しいから怖くない。
ここにいるのは、本が読める人たち。
共通語の読み書きができない人のために、別の部屋では言葉の勉強をしているらしい。
席は特に決まっていないので、何となくキリル君の隣の席に落ち着いて、本を開いた。
そして少しすると、担当してくれる神官さんが入ってくる。担当さんは高位神官さん。毎日違う人。
覚えることは女神さまの意に沿うということ。どんな意味があって、どんな効果があるのか。いろいろな場面での力の使い方。力を使う、つまり、女神さまの御力を代行者として使うことが、どういうことなのか。毎日同じ内容なのに、同じではない不思議な勉強。
本を開いて指定されたページの黙読と、指名されたら音読。
「今日は――――ああ、ラルフィン、いるかい?」
「あ、はい」
指名されたので立ち上がる。
昨日も指名されたよ。
「238ページの女神様への祈りの項を」
「はい」
指定されたページを開いて、祈りの項目を読み上げる。
…この本も、不思議。
読んでいると祈っているときのような気分になる。
だから、今も、そう。
「――――はい、そこまで」
「はい」
今日の担当神官さんは、周囲に視線を向けてから、僕に目を合わせた。
「確かに話に聞いていたとおりだ。ラルフィン、君はどこで覚えたのかな?」
「えっと…、村、で?幼馴染から」
字を教えてもらいました。
そう言ったら、神官さんに苦笑された。なんで?
「わかった。ありがとう。それじゃ、続きを隣の席のキリル、読んでくれるかな?」
「はい」
僕は座って、今度はキリル君の番になった。
その後も、神官さんは何人かを指名して音読させる。
今日の勉強はそんな感じで進んで、四の鐘が鳴るのと同時に終わる。
一旦部屋に戻って本を置いたら、昼食に向かう。
朝と同じように食べれる分を持ってテーブルについた。
キリル君と少し話をしながら食べていたら、
「ラルフィン君はいる?」
って、呼ばれた。
「あ、はい」
返事をして立ち上がったら、女性神官さんが僕の方に来た。
「これ。お届け物ね。イースさんはいる?」
「ここですー」
…と、その人は次の人を探して食堂の間を歩き回っていた。
僕は手渡されたものを見て、少し手が震えてしまった。
「ラルフィン?」
口元が変に震える。
とてもとても『にまぁ』としそうで、引き締めるのに必死。
「なに、ほんとにどうしたの」
「…なんでもないよ。早く食べよう!」
「お?おう…」
朝とは段違いの速さで食べ終わって、食器を下げて、部屋にこもった。
ドキドキする心臓を自覚しながら、手の中の封筒を何度も見た。
表書きには神殿と、僕の名前。
裏書きには、冒険者宿の名前と、ディーとエルの名前。
「手紙……きた……!」
飛び上がりそうなほど嬉しい。
ベッドに寝転がってそっと封筒を開いた。
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