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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
39 恋人の『特別』①
しおりを挟むその言葉は僕の中に甘く甘く響いた。
『恋人』
家族でもない。
幼馴染みでもない。
とても、とても、特別な、響き。
「ぼ、く」
なんて言えばいいんだろう。
僕、ディーのこともエルのこともとてもとても大好き。
今までずっと一緒にいてくれた2人。
僕が笑うときも、怒るときも、泣くときも、必ずそばにいてくれた2人。
幼馴染みの『特別』を教えてくれた2人。
どきどきを教えてくれた2人。
そばにいない寂しさを教えてくれた2人。
僕に、新しい『大好き』を気づかせてくれた2人。
幼馴染みの『特別』と、何が変わるんだろう。
わからない、けど。
でも、わかることもある。
『恋人の特別』って聞いて、僕の中がすごくすごく喜んでいること。
嬉しい。
僕は、2人の『恋人』になりたい。
2人にも、僕の『恋人』になって欲しい。
甘い響き。
大切な響き。
「こい、びとの、『特別』が、いい。ぼく、『恋人』が、いい」
いい、よね?
ディーもエルも、僕のこと、『好き』だ、って。『愛してる』って。そう、言ってくれる。『結婚してほしい』って。そう、言ってくれた。
「ぼく、ぼく………っ」
「ん」
ディーが僕を真正面からぎゅってしてくれた。
恐る恐る両手を背中にわす。
ディーの胸元からは、少し早い鼓動を感じた。
「……フィー」
「ディー…?」
「ごめん。狡い聞き方した」
「?」
「俺もエルも、お前を騙してた」
「……な、に?」
騙す……って、どういうこと?
わかんないよ、ディー。僕、何を騙されていたの?
突然のディーの告白の意味がわからなくて、ただじっとしていたら、ディーが少し体を離して、僕にキスしてくれた。
「ん……」
触れるだけじゃない、舌を絡める特別なキス。
「ん……んんぅ」
流れ込んでくるものは飲み込む。嫌じゃない。好き。僕だけのもの。
沢山絡めて、飲み込んで、唇が離れたときは、僕とディーの間で糸が繋がった。それが唾液の糸だってわかって、滅茶苦茶恥ずかしくなる。
「あのな」
「ん……」
「こんなキス、普通の幼馴染みはしないんだよ」
「……? だって、だから、『特別』だから、って……」
「幼馴染みの『特別』は、俺とエルがお前に触れたいための口実だったんだ」
「……こうじつ……?」
「そう。俺もエルも、お前のことただの幼馴染みだなんて思ってない。…最初から。ずっと、恋人のように接してきた」
頬を撫でられて、僕は呆然とディーを見てた。
「俺たちの中では、フィーを恋人にすることは決定事項だったんだよ。それくらい好きだった。…けど、フィーはまだ子供だし、…………色々言っても、伝わらなかったし…」
困ったような、照れたような、微妙な表情のディー。
…言っても伝わらなかった……って、もしかして。
『家族より大切に思ってる』
『特別な笑顔が好き』
『愛してるよ』
『三人で一緒に暮らそう』
『フィーがいればいい』
『お嫁さんになって』
そう、何度も言われてた。
でも、僕、なんて答えてた?
ずっとずっと、想われてた。
大切にされてきた。
「フィー…怒った?」
不安そうな、ディーの声。
とても大切な幼馴染みにする『特別』は、恋人にすることだった。
気持ちのいい舌を絡めるキスも、触られて気持ちよくなることも、「イく」って声に出すことも…?
全部、恋人の、特別、で。
急に、顔が熱くなっていく。
心臓も、おかしなくらい速く鳴ってる。
何故か、今のこの格好がすごく恥ずかしくなってくる。
でも、なんだかとてもふわふわしてて気持ちがいい。
恋人。
幼馴染みじゃなくて。
……いや、違う。
幼馴染みって関係がなくなるわけじゃない。
そこに、『恋人』っていう言葉がくっつくだけ。
それは、とても、暖かくて、嬉しい。
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