112 / 247
幼馴染み二人と僕の15歳の試練
19 朝ごはんに遅れたら、ご褒美がついていた。
しおりを挟むもーだめ!
って思って、礼拝堂に逃げた。
お部屋でもいいんだけど、女神さまの気配を一番強く感じる礼拝堂が、一番落ち着くから。
一心不乱に祈った。
好きって気持ちに蓋をしたいわけじゃないけど、なんか、なんか、二人にされるあれこれを止めどなく思い出していたたまれなくなっちゃうような、すごく、すごく、触れてほしくなるような、気持ちは、今は蓋をしたい。
女神さま、ごめんなさい。僕の心の中、なんかどろどろになってる。
でも許してください。二人のこと、本当に好きなんです。
ふと、女神さまを感じた。
しかも、苦笑いしてるような、そんな雰囲気の女神さまを。
「あううう……」
女神さまにまで呆れられた……。うう。
だって、だって、本当に好きなんだもん。
二人とも凄く格好良くて、何でもできて、……格好良くて。格好いいんだよ…。
祈りなのに、僕の好きな気持ちを曝け出してるだけになってた。恥ずかしい…。
それでも、少しずつ気分は落ち着いていったけど。
女神さまの手が、ふわりと僕の頭を撫でたとき、礼拝堂に誰か入ってきた。
「ラルフィン」
呼ばれて顔を上げたら、ディーリッヒさんが女神さまと同じような苦笑いの顔で立ってた。
「おはようございます、ディーリッヒさん!」
「おはよう」
僕は急いで立ち上がってディーリッヒさんの所まで歩いた。
「随分熱心に祈ってたね」
「えーと……、……へへ」
ホントのことを言うには恥ずかしいので、笑って誤魔化してみる。
「ディーリッヒさん、こんな早朝から珍しいですね。今日、なにかある日ですか?」
……って聞いたら、また、苦笑。
「ラルフィン」
「はい?」
「……もう二の鐘が鳴ってからだいぶ経つんだよ。君が祈りの間にも食堂にも姿を出さないから、探しに来たんだ」
「え!?」
「急がないと三の鐘が鳴るよ?」
「うそ……!」
まさか鐘の音を聞き逃すなんて…!
意識したら、お腹がぐーって鳴りました…。
大急ぎで食堂に向かった。
食堂の中はもう誰もいない。
……やってしまった。
厨房の料理人さんは、僕の顔を見て苦笑。
……僕、今日は皆から苦笑される日ですか?
「朝ごはんも忘れて何やってたんだい?」
お盆におかずを載せてくれる料理人の人。
「ちょっと祈りすぎてて……」
って言ったら、笑いながらおかずの横に何かぷるんとした物を追加してくれた。
「プリン。熱心なラルフィン君にご褒美だ。みんなには内緒な?」
「はわ…ありがとうございます!」
プリン、プリンだぁ!!
すごくすごく嬉しくて、にまにましてたら、お茶を受け取ってたディーリッヒさんが、ぷはって笑いだした。
「おこさ……」
「子供じゃないです!」
「ラルフィンはかわいい子供だなぁ」
ディーリッヒさんの言葉は止めたのに、料理人さんまで笑いながらからかってきた。
「むぅ」
「ほら、おこさまじゃないと主張するラルフィン?そろそろ鐘がなるよ?」
「!?」
やばい。
食べなきゃ!
一番近いテーブルについて、大急ぎで手を合わせて、大急ぎで食べ始めた。
…僕の大急ぎなんて、所詮、みんなの普通くらいだけど…。
僕なりの大急ぎで味わってご飯を食べて、最後にご褒美プリンを頬張って、にま~としながら食べてたら、やっぱり笑われた。
それでもプリンは美味しい。
堪能してスプーンをおいたとき、三の鐘がなった。
3
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】僕は、妹の身代わり
325号室の住人
BL
☆全3話
僕の双子の妹は、病弱な第3王子サーシュ殿下の婚約者。
でも、病でいつ儚くなってしまうかわからないサーシュ殿下よりも、未だ婚約者の居ない、健康体のサーシュ殿下の双子の兄である第2王子殿下の方が好きだと言って、今回もお見舞いに行かず、第2王子殿下のファンクラブに入っている。
妹の身代わりとして城内の殿下の部屋へ向かうのも、あと数ヶ月。
けれど、向かった先で殿下は言った。
「…………今日は、君の全てを暴きたい。
まずは…そうだな。君の本当の名前を教えて。
〜中略〜
ねぇ、君は誰?」
僕が本当は男の子だということを、殿下はとっくに気付いていたのだった。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる