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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
59 夢の中で
しおりを挟む違うと言われたときには悲しかったけど、その後ほっこりした気持ちになって、ディーリッヒさんが甘いミルクを用意してくれて、それを飲んだらすぐ眠れた。
恋人のディーとエルはとっても大事。
けど、神殿にいる皆も大事。
もちろん、ユファにいる、僕達の両親のことも。とても大事。
大事な人が増えていく。
大好きな人が増えていく。
なんだかそれは、とても大切な宝物のように思えて、僕はとっても幸せな気持ちになった。
『貴方は私達と違うのね』
『どうして?』
『僕達にはわからないからだよ』
『何がわからないの?』
『愛しい、とか、好き、とか』
『大切とか、宝物みたいだ、とか』
不思議。
夢だとわかる夢。
僕によく似た、双子のような男の子と女の子が、僕のことをじーっと見てくる。
『お母様が、愛されてほしいって言っていたけど』
『お母様が、愛してほしいって言っていたけど』
『私にはわからなかったわ』
『僕にもわからなかった』
でも僕は、愛される喜びを知ってる。
誰かを愛する喜びを知っている。
『心の中がね、ふわっとあったかくなるんだよ』
『どうして?』
『心の中にその人が住むから』
『え、小人?』
『違うよ。心の中にね、ずっとずっとその人がいるの。笑った顔も、怒った顔も、悲しい顔も、喜んだ顔も、全部全部覚えてるの』
『怒った顔も、悲しい顔も覚えてるの?辛くない?』
『辛くなんてないよ。だって、全部、その人だから。その人のこと。自分の好きな人のことは、全部全部知っておきたいから』
僕の好きな人。
愛しい人。
大切な人。
見せてあげたい。
僕の目の前の双子のような二人は、お互いに顔を見合わせてため息をついた。
『私も愛されたかった』
『僕も愛したかった』
二人の手が、僕の手を包み込んだ。
『ラルフィンが羨ましいわ』
『ラルフィンが羨ましいね』
声は柔らかくて優しい。
手から伝わるぬくもりは、まるで女神様のもの。
『大切にして』
『大事にして』
『うん。絶対、大切にする。大事にする』
僕と同じくらい小さな手をギュッと握ったら、二人は嬉しそうに微笑む。
だんだん、霞がかかるようにぼやけていく輪郭。
『またいつか』
『その日に』
『うん。またいつか、その日に、会えるね』
霞が濃くなる。
もう、二人の姿は見えない。
大丈夫。
心配しないで。
僕はたくさんの大切な人を見つけたから。
たくさんの大事なことに気づいたから。
とてもとても好きでたまらない二人を見つけたから。
「幸せだよ」
声にして、はたっと目が覚める。
まだほんの少し暗い。
体に染み付いた起床時間。
二人と一緒に過ごしていたときは、余裕で寝過ごしていたのに。神殿に戻ってきた途端、染み付いた習慣が蘇ってくる。
夢を見ていたはずだけど。
思い出せない。
けど、心の中はとても温かい。
「…ディーとエルは、今日何をするんだろ」
そういえば聞いてなかった。
まだ王都にいるんだろうけど。
「好き」
ベッドの上で両膝を抱えて座って、言葉にしてみる。
そしたら、さっきよりもぽかぽかしてくる。
「大好き」
答えてくれる声はないはずだけど。
『俺も好きだよ』
『私も大好き』
って声が、聞こえたような気がした。
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