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幼馴染み二人と西の森の事件に巻き込まれる
1 店主さんからの依頼
しおりを挟む春の月が進んでもうすぐ三の月になる頃には、僕も冒険者って仕事にだいぶ慣れてきた。うん、全部あの二人のおかげだけど。
「お前らちょっと中に来い」
って、店主さんから声をかけられたのは、三日ほど王都を離れる依頼から帰ってきたときだった。
何々と思いながら、僕たち三人は店主さんに手招きされるままに奥の私室に入る。
「戻ったばかりですまんな。依頼は?」
「問題ありません」
王都からほど近い場所にあるむらでの魔物討伐を終えて帰ってきたところ。
村長さんから依頼完了の書状を渡して一連の依頼は完了になる。
「買い取り分はなにかあるか?」
「あー、今回は村の方に渡してきました。比較的良質の皮が手に入ったので、村で使うかと思って」
「お前らならそういう選択するよな」
笑う店主さん。
ディーも苦笑する。
本当なら魔物から取れた素材は売るものなんだけど、村の人にあげちゃったんだよね。
「それで、私達をここに呼んだ理由は?早く帰ってフィーをお風呂に入れたいんだけど」
「相変わらずだな」
早く帰りたい理由が僕のお風呂って……。
「エル、駄目だよ。店主さんのお話、ちゃんと聞かなきゃ」
「大丈夫。ちゃんと聞くから」
ふふ…って笑ったエルが、僕の頬にちゅって音を立ててキスをした。
「あー、わかったわかった。さっさと本題に移るから」
笑ったギルマスは机の上にあった木彫りの箱を開けた。その中を僕たちが見えるように向けてくる。
「……ええっと?」
なんだろう。
多分どこかにつけるもの。
銀色のような白っぽいようなそんな金属に、何か小さな石が嵌め込まれてる。
「この宿に来る連中の中でお前らは腕も立つし信頼できる。それでな、これは俺からというよりも、リーデンベルグ魔法研究機関からの依頼になるんだが」
「……魔法研究」
「これを使ってみてくれねぇか。まだまだ改良の余地はあるんだが、使ってみなきゃわからないからな」
「魔導具ってことですか」
エルの問に店主さんが頷いた。
……魔導具?
「効果は『念話』っつーものらしい。離れていても声を届けることができる。ディオルグとエルフィードにつけてもらいたい。耳のここんとこに嵌めるんだ」
店主さんが自分の耳の淵をとんとんって叩いた。
「エルはともかく、俺には魔導具を扱えるほどの魔力はありませんが」
「問題ない。ディオルグの魔力量でも扱える。ただし、ディオルグからエルフィードに声を届けられるのは一度だけだ。魔力切れで動けなくなるからな」
「私からディーに送るときは?」
「それも合わせて調査してほしい。魔力がなくなる感覚はわかるだろ?」
……なんか、すごい依頼?
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