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本編
友兄の視線に胸が締め付けられる
しおりを挟む「理玖」
「ん…」
額に、冷たい手があたる。
それからすぐ、冷たい……冷たすぎるやつが貼られた。
「うひゃっ」
「暴れない」
友兄は俺の額に冷却シートを貼ると、薄い肌掛けをかけてくれた。
……やさしい。
やっぱり、やさしい。
「今飲み物を準備してくるから」
「うん…」
……肌掛けからも、友兄の匂いがする。
かなり大きなもので、体がすっぽり包まれてしまうから、なんか、友兄に抱きしめられてるみたいで、すごく……嬉しい。
それから、初めて入った友兄の部屋の中をキョロキョロ見てしまった。
結構贅沢な部類に入るんじゃないかと思う間取り。
居間にはテレビとソファと小さな書棚が置いてあって、書棚の上に……伏せた写真立てがあった。
「珍しいものでもあった?」
キッチンから戻ってきた友兄の手には、マグカップと、氷の入ったグラスが一つずつ。
「……初めてだから」
起き上がって、差し出されたグラスを受け取ってグビグビ飲み干してしまった。氷が入ってよく冷えたスポドリ。あー……沁みる。
はー…って息をついたら、今度はマグカップを渡された。中身は、氷の浮いたココアで。
「小さいとき好きだったよね?」
「うん」
今も好きだけど。
というか、友兄が俺のために用意してくれるものは、全部、好き。
両手でマグカップを持って飲んでいたら、友兄の大きな手が俺の頭をなでてきた。
手元から顔をあげたら、友兄の優しい顔に会う。
本当に、いつもの、優しい顔。
「友兄…」
「それを飲んだら送るから」
「え」
「外はもう暗いし…、母さんが心配する」
「友兄のところに来ること、ちゃんと連絡してある」
「理玖」
「俺……友兄とちゃんと話しがしたい」
友兄がため息をついた。
どうしよう。心がくじけそうだ。
「駄目」
冷たい言葉に情けないが肩が震えた。
「さ、早く飲んで。急げば夕飯に間に合うだろうし」
「……友兄、やっぱり、俺のこと、邪魔、なんだ」
「理玖」
「さっきの女の人……………恋人、なんだよな。……俺、知らなくて……邪魔、した」
「違う」
また、ため息。
違うって、何が違うんだよ。
あんなに親しそうに腕を絡めて、住んでるところに来るなんて、恋人以外ありえないじゃないか。
「彼女は恋人でもなんでない。……同じサークルメンバーってだけで」
「でもっ」
「彼女が勝手に押しかけて来ただけだから。…俺には恋人なんていないんだよ。もうずっと……想い続けてる人はいるけど」
友兄は目を細めて俺を見る。
その表情に…胸を締め付けられるような想いがした。
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