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「メリッサ、この苗はどこに持っていけばいい?」

「あぁ、それはこちらにお願いします。シーザーさん」

 アーノルド様は珍しく実行が早く手際が良くて、私が好きに使っていい、全てではないけれどガーデンスペースを用意してくれて、たくさんの花の苗や種が王家のガーデンに届いた。私は庭師の方々にも手伝ってもらって、ガーデンを整備始めた。

(アーノルド様もこの調子でいつも働いてくれれば良いのに)

 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけアーノルド様のことを尊敬・・・・・・はまぁ、主だから当然として、カッコイイと思った。

「そりゃ、メリッサ。愛の力よ、愛の」

 お花の苗を植えながらアリスが話しかけてきた。親友というのもあるけれど、アリスもお花が好きだから、時々手伝いに来てくれているのだ。私たちは談笑しながら、花が咲くのを楽しみにしながら作業していた。

(まぁ、メイドとしての人生に加えて、女としての人生も捧げるんだから・・・・・・当然よね!?)

「赤くなってるじゃない、メリッサ」

「・・・・・・アリスは愛したり、愛されたことがあるの?」

「うっさいわよっ、バーカ」

 私をからかってきたアリスも頬を赤くなり、肘鉄砲を私に撃ってきた。

「ちょっ・・・」

 転びそうになって、うさぎ跳びのようにポンポンっと右に飛ぶと、アリスは「ごめん、ごめん」と言って笑っていた。

「あーあ、私も誰かに見初められないかしら?」

「メイドとしては私の方が優秀だけど、女としてはアリスの方が優れているからすぐに見つかるわよ」

「なんなら、オレっちが彼氏になってもいいぜ?」

「「きゃっ」」

 私たちは男の声にびっくりして一緒に振り返ると、シーザーさんがいた。

「なっ、なんだよ」

「乙女の話を聞くんじゃないわよっ!」

「うわっ、土を投げんだ、土をっ」

 そう言って、シーザーさんは遠くに行ってしまった。

「まったく・・・・・・」

「アリス、まんざらでもなさそう」

「はぁ!? いやよ、あんなやつ」

「いいと思うけどなーーー」

「私だって、王族とか貴族がいいなーーー。キリル様とか私のことを見つけてくれないかなーーー」

(キリル様・・・・・・)

「ん? どうかした、メリッサ」

「・・・・・・ううん、なんでもないわ」

「そっ」

 私が笑顔で答えると、興味無さそうにアリスが答えた。アリスが私がキリル様にもプロポーズされたんじゃないかと探りを入れてきたんじゃないかと不安になって、私はチラッチラッとアリスの顔を見るけれど、そんな様子は微塵もなくて、ホッとした。
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