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アナザーストーリー フリーんリヒ公爵
手紙 フレーンリヒ公爵
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「よろしかったのですか?ラッセル様」
「あぁ、無理にお引止めするほど僕も無粋な人間じゃないさ」
フレーンリヒ家当主、フレーンリヒ・ド・ラッセル公爵は執事のツェペリと一緒にソフィアとルーク王子の二人の背中を見送る。
「それより、すまなかったね。代々執事として仕えている君に門番をさせるなんて。暑かっただろう?」
「わたくしのことなどお気になさらずにくださいフレーンリヒ様。それより・・・5年もお待ちになったのに、そのことをお話されればよかったのでは?」
フレーンリヒ公爵はふふっと笑う。
「こうして、また出会えたのだからいいのさ。僕も昔よりも今の方が彼女に相応しい男になれたと思っているからね」
フレーンリヒ公爵は5年前に建国祭でソフィアを見つけた。
その当時、尊敬していた父が亡くなったフレーンリヒ公爵は、悲しみに浸りながらも、父の跡を継ぎ、改めて偉大なる父の存在を痛感し、その大きな穴を埋めるために、心も身体も疲弊していた。
建国祭の時も、多くの貴族や商人と顔合わせに奔走していた彼だったが、ソフィアの舞が目に留まると、思わず立ち止まって見惚れてしまった。
彼にとって、華やかなに舞うソフィアは天女のようで、見惚れてしまった。
周りの町人たちが彼女も若くして父親が亡くなったと耳にしたフレーンリヒ公爵は、辛いのは自分だけでなく、こうやって輝けるんだと勇気を貰った。
そして、彼に朗報が入る。
ソフィアがお見合い相手を募集するというのだ。
「僕より、二つも若いんだ」
22歳のフレーンリヒ公爵は忙しいながらも、自分の心を支えてくれるのなら彼女のような女性がいいと思った。もちろん、支えてもらうのは心だけでいい。きっと、早くして親を亡くした者同士、お互いの痛みを理解して、支えられるに違いない、とフレーンリヒ公爵は思った。
フレーンリヒ公爵はお見合いを受けようとしていた。
しかし、ソフィアは急遽お見合いの話を引っ込めてしまった。
ショックではあったが、他にいい男が見つかったのだろうと諦め、繁忙な仕事がフレーンリヒ公爵の悲しみを忘れさせてくれた。
「でも・・・良かった。本当に・・・」
4、5時間とかなり長い時間だったが、フレーンリヒ公爵にはあっという間に感じた。そうして、胸に手を当てながら至福の時間を心の中で反芻する。客人に対して気配りができるフレーンリヒ公爵は話に夢中になり過ぎてソフィアのお腹が鳴るまで話し込んでしまった。
「手紙を書こうかな」
「えぇ、それはよろしいのではないでしょうか?」
この暖かい気持ちを形にしたいと思ったフレーンリヒ公爵は手紙を書くのを決めた。
『親愛なるソフィア様、先日はありがとうございました。ソフィアさんとお話させていただいたひと時は私の人生の中で最も至福の時間でした。貴重なお時間をいただけて本当に嬉しい限りです。ソフィアさんはどうでしたか?私はまだまだ未熟者で夢を叶えるには道半ばで忙しく家を空ける時も多々ありますが、休日はあんな風にソフィアさんと過ごす人生を歩みたいと思いました。ソフィアさんがよろしければ、今回の話、前向きに検討をお願いします。あと、そうだ。ぜひ今度、ソフィアさんが興味を持たれたユニニャン湖に一緒に行きしょう』
「ふぅ」
フレーンリヒ公爵は羽ペンを置き、コーヒーカップを持ち、香りを楽しでから、コーヒーを口に含む。吐息を漏らし、カップを置き、封をする。
自分の想いを十分に詰め込めた手紙、次の日ツェペリに渡して届けるように伝えた。
◇◇
待っている時間も恋する時間。
そうわかっていても、手紙が来ればソフィアからの物はないかと探してしまう自分はまだまだ幼いなと思うフレーンリヒ公爵。
「来ましたよ、ラッセル様」
ツェペリがきれいな便箋を持ってくる。
ソフィアからの手紙だ。
フレーンリヒ公爵ははやる気持ちを抑えながら、封を丁寧に開けて、変な皺が付かないように手紙を取り出し、読みだす。
「ふふっ」
「どうされました、ラッセル様」
「彼女は想い人がいるそうだ」
「それでは・・・」
笑顔のフレーンリヒ公爵とは対照的にツェペリが悲しそうな顔をする。
「勘違いするな。彼女は来る」
フレーンリヒ公爵の言葉にツェペリが首を傾げる。
「先に言っておく。僕はこの結果に満足している。ツェペリであっても不満を漏らすことは許さないからね?いいかい?」
「はい、かしこまりました。ラッセル様」
ツェペリが深々と頭を下げる。
「彼女は想い人がいるけれど、叶わぬ恋。僕さえよければ、差し出がましいけれど、忘れるために、僕が彼女を過大評価していないかも含めて、少しの間、暮らしてみたいだってさ」
「・・・左様でございましたか」
「ほら、そんな顔して。シワがふえちゃうぞ。ツェペリ」
ツェペリは顔に手をやると、自分の眉間にしわがあったのに気づき、もう一度頭を下げる。
「彼女にはこの屋敷で安心して過ごせるように配慮するようにみんなに伝えてくれるかい。僕はみんなのことが大好きだし、信じている。変な気を回すようなことがあったら・・・僕は悲しいよ」
フレーンリヒ公爵は自分のために尽くしてくれるみんなが好きだった。それに応える振る舞いを、感謝を込めて行ってきた。しかしながら、自分のことを想ってソフィアのことを快く思えない従者も何人か心当たりがあった。
でも、この恋が成就するためにベストを尽くせないならば・・・もしかしたら、その従者に対して怒りをぶつけてしまいそうな自分が怖かった。
「かしこまりました。では、さっそく・・・。失礼します」
扉の外で中にいるフレーンリヒ公爵に一礼して出ていくツェペリ。
「想い人か・・・」
フレーンリヒ公爵は目を閉じ、ルーク王子を思い浮かべる。
「僕は僕のやるべきことをやりましょう。勝っても負けても、いい関係でいたいものですね。ルーク王子」
フレーンリヒ公爵は窓の外を見つめた。
この後、ソフィアはフレーンリヒ公爵の元で数か月暮らしたが、それでも長年一緒に暮らしていたルークと離れることになったことで、より一層ルークへの想いが強くなり、年が明けてルークを選ぶことになった。
ルークとソフィアはフレーンリヒ公爵に謝罪したが、フレーンリヒ公爵は寛大で二人とも今後とも仲良くしたいと良き友人となった。
その後、ルークが王になる際に有力な後ろ盾する貴族として名を連ね、ソルドレイド王国の発展と平和に大きく寄与したのはまた別の話。
「あぁ、無理にお引止めするほど僕も無粋な人間じゃないさ」
フレーンリヒ家当主、フレーンリヒ・ド・ラッセル公爵は執事のツェペリと一緒にソフィアとルーク王子の二人の背中を見送る。
「それより、すまなかったね。代々執事として仕えている君に門番をさせるなんて。暑かっただろう?」
「わたくしのことなどお気になさらずにくださいフレーンリヒ様。それより・・・5年もお待ちになったのに、そのことをお話されればよかったのでは?」
フレーンリヒ公爵はふふっと笑う。
「こうして、また出会えたのだからいいのさ。僕も昔よりも今の方が彼女に相応しい男になれたと思っているからね」
フレーンリヒ公爵は5年前に建国祭でソフィアを見つけた。
その当時、尊敬していた父が亡くなったフレーンリヒ公爵は、悲しみに浸りながらも、父の跡を継ぎ、改めて偉大なる父の存在を痛感し、その大きな穴を埋めるために、心も身体も疲弊していた。
建国祭の時も、多くの貴族や商人と顔合わせに奔走していた彼だったが、ソフィアの舞が目に留まると、思わず立ち止まって見惚れてしまった。
彼にとって、華やかなに舞うソフィアは天女のようで、見惚れてしまった。
周りの町人たちが彼女も若くして父親が亡くなったと耳にしたフレーンリヒ公爵は、辛いのは自分だけでなく、こうやって輝けるんだと勇気を貰った。
そして、彼に朗報が入る。
ソフィアがお見合い相手を募集するというのだ。
「僕より、二つも若いんだ」
22歳のフレーンリヒ公爵は忙しいながらも、自分の心を支えてくれるのなら彼女のような女性がいいと思った。もちろん、支えてもらうのは心だけでいい。きっと、早くして親を亡くした者同士、お互いの痛みを理解して、支えられるに違いない、とフレーンリヒ公爵は思った。
フレーンリヒ公爵はお見合いを受けようとしていた。
しかし、ソフィアは急遽お見合いの話を引っ込めてしまった。
ショックではあったが、他にいい男が見つかったのだろうと諦め、繁忙な仕事がフレーンリヒ公爵の悲しみを忘れさせてくれた。
「でも・・・良かった。本当に・・・」
4、5時間とかなり長い時間だったが、フレーンリヒ公爵にはあっという間に感じた。そうして、胸に手を当てながら至福の時間を心の中で反芻する。客人に対して気配りができるフレーンリヒ公爵は話に夢中になり過ぎてソフィアのお腹が鳴るまで話し込んでしまった。
「手紙を書こうかな」
「えぇ、それはよろしいのではないでしょうか?」
この暖かい気持ちを形にしたいと思ったフレーンリヒ公爵は手紙を書くのを決めた。
『親愛なるソフィア様、先日はありがとうございました。ソフィアさんとお話させていただいたひと時は私の人生の中で最も至福の時間でした。貴重なお時間をいただけて本当に嬉しい限りです。ソフィアさんはどうでしたか?私はまだまだ未熟者で夢を叶えるには道半ばで忙しく家を空ける時も多々ありますが、休日はあんな風にソフィアさんと過ごす人生を歩みたいと思いました。ソフィアさんがよろしければ、今回の話、前向きに検討をお願いします。あと、そうだ。ぜひ今度、ソフィアさんが興味を持たれたユニニャン湖に一緒に行きしょう』
「ふぅ」
フレーンリヒ公爵は羽ペンを置き、コーヒーカップを持ち、香りを楽しでから、コーヒーを口に含む。吐息を漏らし、カップを置き、封をする。
自分の想いを十分に詰め込めた手紙、次の日ツェペリに渡して届けるように伝えた。
◇◇
待っている時間も恋する時間。
そうわかっていても、手紙が来ればソフィアからの物はないかと探してしまう自分はまだまだ幼いなと思うフレーンリヒ公爵。
「来ましたよ、ラッセル様」
ツェペリがきれいな便箋を持ってくる。
ソフィアからの手紙だ。
フレーンリヒ公爵ははやる気持ちを抑えながら、封を丁寧に開けて、変な皺が付かないように手紙を取り出し、読みだす。
「ふふっ」
「どうされました、ラッセル様」
「彼女は想い人がいるそうだ」
「それでは・・・」
笑顔のフレーンリヒ公爵とは対照的にツェペリが悲しそうな顔をする。
「勘違いするな。彼女は来る」
フレーンリヒ公爵の言葉にツェペリが首を傾げる。
「先に言っておく。僕はこの結果に満足している。ツェペリであっても不満を漏らすことは許さないからね?いいかい?」
「はい、かしこまりました。ラッセル様」
ツェペリが深々と頭を下げる。
「彼女は想い人がいるけれど、叶わぬ恋。僕さえよければ、差し出がましいけれど、忘れるために、僕が彼女を過大評価していないかも含めて、少しの間、暮らしてみたいだってさ」
「・・・左様でございましたか」
「ほら、そんな顔して。シワがふえちゃうぞ。ツェペリ」
ツェペリは顔に手をやると、自分の眉間にしわがあったのに気づき、もう一度頭を下げる。
「彼女にはこの屋敷で安心して過ごせるように配慮するようにみんなに伝えてくれるかい。僕はみんなのことが大好きだし、信じている。変な気を回すようなことがあったら・・・僕は悲しいよ」
フレーンリヒ公爵は自分のために尽くしてくれるみんなが好きだった。それに応える振る舞いを、感謝を込めて行ってきた。しかしながら、自分のことを想ってソフィアのことを快く思えない従者も何人か心当たりがあった。
でも、この恋が成就するためにベストを尽くせないならば・・・もしかしたら、その従者に対して怒りをぶつけてしまいそうな自分が怖かった。
「かしこまりました。では、さっそく・・・。失礼します」
扉の外で中にいるフレーンリヒ公爵に一礼して出ていくツェペリ。
「想い人か・・・」
フレーンリヒ公爵は目を閉じ、ルーク王子を思い浮かべる。
「僕は僕のやるべきことをやりましょう。勝っても負けても、いい関係でいたいものですね。ルーク王子」
フレーンリヒ公爵は窓の外を見つめた。
この後、ソフィアはフレーンリヒ公爵の元で数か月暮らしたが、それでも長年一緒に暮らしていたルークと離れることになったことで、より一層ルークへの想いが強くなり、年が明けてルークを選ぶことになった。
ルークとソフィアはフレーンリヒ公爵に謝罪したが、フレーンリヒ公爵は寛大で二人とも今後とも仲良くしたいと良き友人となった。
その後、ルークが王になる際に有力な後ろ盾する貴族として名を連ね、ソルドレイド王国の発展と平和に大きく寄与したのはまた別の話。
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