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7話 ハンプティ・ダンプティ
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「はぁっ!?」
私は思わず声を出してしまい、ショータとは、それなりに距離があったけれど、聞こえたのか私に気づいたのか辺りの視線を気にする。
(やばい、やばい・・・)
私は敢えて隠れることをせず、ずらしていたサングラスを直して素知らぬ顔をして少し歩き、そしてスマホを見るふりをする。
ショータは建物に入っていく。
私は入っていった建物の看板を見る。
間違いない。
そこはエステだった。
「あいつ・・・私に隠れてエステなんて言ってたのか・・・」
若くて肌がもちもちで羨ましいなと思っていたけれど、まさかこんなところに言っていたなんて。
「ふふふっ、今度何かの時にイジってやろう」
少しほっとしている自分に気づく。
なんだかんだ何もないことを祈っていた私にとって、ショータの秘密がこのくらいのことだとわかって良かった。
エステの看板を見ると、どんなに短くても30分コースのようだ。
私はあたりを見渡すと、道路の向こう側にオシャレなカフェがあった。
そこで時間を潰そうと、軽い足でカフェに入った。
◇◇
「あっ、出てきた」
私はサングラスをかけて、ゴミを捨てて店を出る。
「こちら、005。再びターゲットの尾行を開始します」
別にピンマイクがあるわけではないけれど、服の襟に呟く私。
今日は、ショータの知らない一面を知る日としよう。
(いや、そろそろ飽きちゃったな。いい天気だし普通にデートしよっと)
「こちら、005。そろそろターゲットに話しかけて・・・っ」
一歩、二歩・・・三歩。
そんな陽気な気分でショータを尾行していた私はショータとの距離を近づける。
「・・・うそっ」
私は見間違いを信じて、サングラスを外す。
けれど、間違いない。
再び絶望に落とされた。
ショータが笑顔でマリコの元にと小走りで走っていったのだ。
どうやら、待ち合わせをしていた様子。
(どうして・・・)
浮気ではない。
そんなわけはない、と願って何もなく終わる日で会ってほしかったと心の底では思っていた私は悲しくなる。
さっきのエステもマリコに会うためだったのか・・・。
私から怒りは消えた。
何にもない。
血の気が引くのを感じだ。
強がりだった。
怒っていれば、この絶望という名の悲しみを忘れられたから私は怒っていたんだ。
雨?
私は空を見る。
憎たらしいくらい明るい空。
「あっ」
涙だ。
私は涙を拭く。
でも、拭いても、拭いても、どんどん溢れてくる。
(あぁ・・・そうか)
私はショータが大好きだったんだ。
ハンプティ・ダンプティ
割れたタマゴは戻らない。
流れた涙も元には戻らない。
敗れた想いは・・・。
仲良くショータとマリコはレストランに入っていく。
私を残して。
私は思わず声を出してしまい、ショータとは、それなりに距離があったけれど、聞こえたのか私に気づいたのか辺りの視線を気にする。
(やばい、やばい・・・)
私は敢えて隠れることをせず、ずらしていたサングラスを直して素知らぬ顔をして少し歩き、そしてスマホを見るふりをする。
ショータは建物に入っていく。
私は入っていった建物の看板を見る。
間違いない。
そこはエステだった。
「あいつ・・・私に隠れてエステなんて言ってたのか・・・」
若くて肌がもちもちで羨ましいなと思っていたけれど、まさかこんなところに言っていたなんて。
「ふふふっ、今度何かの時にイジってやろう」
少しほっとしている自分に気づく。
なんだかんだ何もないことを祈っていた私にとって、ショータの秘密がこのくらいのことだとわかって良かった。
エステの看板を見ると、どんなに短くても30分コースのようだ。
私はあたりを見渡すと、道路の向こう側にオシャレなカフェがあった。
そこで時間を潰そうと、軽い足でカフェに入った。
◇◇
「あっ、出てきた」
私はサングラスをかけて、ゴミを捨てて店を出る。
「こちら、005。再びターゲットの尾行を開始します」
別にピンマイクがあるわけではないけれど、服の襟に呟く私。
今日は、ショータの知らない一面を知る日としよう。
(いや、そろそろ飽きちゃったな。いい天気だし普通にデートしよっと)
「こちら、005。そろそろターゲットに話しかけて・・・っ」
一歩、二歩・・・三歩。
そんな陽気な気分でショータを尾行していた私はショータとの距離を近づける。
「・・・うそっ」
私は見間違いを信じて、サングラスを外す。
けれど、間違いない。
再び絶望に落とされた。
ショータが笑顔でマリコの元にと小走りで走っていったのだ。
どうやら、待ち合わせをしていた様子。
(どうして・・・)
浮気ではない。
そんなわけはない、と願って何もなく終わる日で会ってほしかったと心の底では思っていた私は悲しくなる。
さっきのエステもマリコに会うためだったのか・・・。
私から怒りは消えた。
何にもない。
血の気が引くのを感じだ。
強がりだった。
怒っていれば、この絶望という名の悲しみを忘れられたから私は怒っていたんだ。
雨?
私は空を見る。
憎たらしいくらい明るい空。
「あっ」
涙だ。
私は涙を拭く。
でも、拭いても、拭いても、どんどん溢れてくる。
(あぁ・・・そうか)
私はショータが大好きだったんだ。
ハンプティ・ダンプティ
割れたタマゴは戻らない。
流れた涙も元には戻らない。
敗れた想いは・・・。
仲良くショータとマリコはレストランに入っていく。
私を残して。
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