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「おねえさま、おねえさまっ」
けたたましい声が遠くから聞こえてくると、妹のメアリーがいた。
「なぁに、メアリー?」
「聞いて、聞いて。おねえさまっ。あっ、そのブローチきれい・・・」
これだけ騒がしくしていれば、とても重要なことなのだろうけれど、メアリーにとっては日常茶飯事。
現に、どうしても聞いて欲しそうな顔をしていたのに、今は私の胸元で輝く赤いブローチに目を奪われている。
「いいな、いいな」
「ふふっ、そうでしょ。これはハンス王子からもらったの」
「じゃあ、もらいっとっ!!」
「いたっ」
私の服から無理やりブローチをむしり取るメアリー。
私のことなんて、眼中にない様子で、ブローチに太陽の光を当てて楽しんでいる。
「ちょっと、メアリー返しなさい。それは大切な物なのよ」
「そんなの、私に関係ないし、知らない」
(いやいや、関係ないって・・・今あなたが手に持っている物の話をしているのよ?)
「だーめっ、返しなさい」
「いやよ、いやっ!!!おねえさまっ、放して、放して!!!」
私が軽く触れたのに、メアリ―はまるで今奪い取ったばかりの赤いブローチがさも、誰にも触れさせずに長年愛用していた大切なブローチであるかのように激しく拒んで叫び出す。
「どうされました?メアリー様」
すると、近くにいたのであろう、執事やメイド、兵士たちが集まって来た。
(はぁ・・・)
「みんな、聞いて。アリスおねえさまったら、私のブローチを奪おうとするのよっ!!!ひどいでしょ、ねぇ、ひどいって言ってっ!!!」
みんなが私とメアリーを見る。
まぁ、一目瞭然だろう。
私の胸元が破れているのを見れば。
「あははは・・・」
みんなが苦笑いして私に労いの視線を向ける。
「ねぇ、ひどいでしょっ!!!ねぇってば、ねぇっ!!!」
近くにいた一番気弱そうなメイドの袖を千切ってしまうんじゃないかってくらい思いっきり揺らすメアリー。
「おっ、お嬢様おやめください・・・お嬢様、お嬢様の言う通りですので・・・」
私に気を遣う視線を向けながら、メイドさんはメアリーにそう告げる。
「何が、私の言う通りなの?はっきり、言ってごらんなさい」
勝ち誇った笑みで私を見てくるメアリー。
いやいや、あなたに大義は全くないから。
「そのブローチは・・・」
私を見つめるメイドさん。
「・・・いたっ」
ぎゅっと、袖を絞るメアリー。
「いいわ、それはあなたのブローチよ。メアリー」
呆れた私がそう告げると、ぱっとメイドさんの袖を放したメアリー。
「そうでしょ、そうでしょ」
みんなが呆れた顔をするのにも気づかず大層満足そうなメアリー。
「それで、メアリー。何を聞かせたかったのかしら?」
「あっ、そうよ、そう。おねえさま。ハンス王子と私がけっこんするわっ!!!」
「「「「はっ?」」」」
私以外のみなさんが一応は雇い主の娘と言うことで偉いはずのメアリーを馬鹿にしたような顔をして見たけれど、メアリーはそんなこと全く気付いていなかった。
けたたましい声が遠くから聞こえてくると、妹のメアリーがいた。
「なぁに、メアリー?」
「聞いて、聞いて。おねえさまっ。あっ、そのブローチきれい・・・」
これだけ騒がしくしていれば、とても重要なことなのだろうけれど、メアリーにとっては日常茶飯事。
現に、どうしても聞いて欲しそうな顔をしていたのに、今は私の胸元で輝く赤いブローチに目を奪われている。
「いいな、いいな」
「ふふっ、そうでしょ。これはハンス王子からもらったの」
「じゃあ、もらいっとっ!!」
「いたっ」
私の服から無理やりブローチをむしり取るメアリー。
私のことなんて、眼中にない様子で、ブローチに太陽の光を当てて楽しんでいる。
「ちょっと、メアリー返しなさい。それは大切な物なのよ」
「そんなの、私に関係ないし、知らない」
(いやいや、関係ないって・・・今あなたが手に持っている物の話をしているのよ?)
「だーめっ、返しなさい」
「いやよ、いやっ!!!おねえさまっ、放して、放して!!!」
私が軽く触れたのに、メアリ―はまるで今奪い取ったばかりの赤いブローチがさも、誰にも触れさせずに長年愛用していた大切なブローチであるかのように激しく拒んで叫び出す。
「どうされました?メアリー様」
すると、近くにいたのであろう、執事やメイド、兵士たちが集まって来た。
(はぁ・・・)
「みんな、聞いて。アリスおねえさまったら、私のブローチを奪おうとするのよっ!!!ひどいでしょ、ねぇ、ひどいって言ってっ!!!」
みんなが私とメアリーを見る。
まぁ、一目瞭然だろう。
私の胸元が破れているのを見れば。
「あははは・・・」
みんなが苦笑いして私に労いの視線を向ける。
「ねぇ、ひどいでしょっ!!!ねぇってば、ねぇっ!!!」
近くにいた一番気弱そうなメイドの袖を千切ってしまうんじゃないかってくらい思いっきり揺らすメアリー。
「おっ、お嬢様おやめください・・・お嬢様、お嬢様の言う通りですので・・・」
私に気を遣う視線を向けながら、メイドさんはメアリーにそう告げる。
「何が、私の言う通りなの?はっきり、言ってごらんなさい」
勝ち誇った笑みで私を見てくるメアリー。
いやいや、あなたに大義は全くないから。
「そのブローチは・・・」
私を見つめるメイドさん。
「・・・いたっ」
ぎゅっと、袖を絞るメアリー。
「いいわ、それはあなたのブローチよ。メアリー」
呆れた私がそう告げると、ぱっとメイドさんの袖を放したメアリー。
「そうでしょ、そうでしょ」
みんなが呆れた顔をするのにも気づかず大層満足そうなメアリー。
「それで、メアリー。何を聞かせたかったのかしら?」
「あっ、そうよ、そう。おねえさま。ハンス王子と私がけっこんするわっ!!!」
「「「「はっ?」」」」
私以外のみなさんが一応は雇い主の娘と言うことで偉いはずのメアリーを馬鹿にしたような顔をして見たけれど、メアリーはそんなこと全く気付いていなかった。
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