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僕は死んだことがある。
原因は過労死。
痛みを感じることはなく、気を失っているうちに死んでいた。
でも、ギャルっぽい女神が力を使ってくれたからようだったので、普通の過労死はもっと苦しいかもしれない。あぁ見えて、あの女神、見た目や口ぶりは軽そうだったけれど優秀だったのかもしれない。まぁ、ギリシャ神話の様々な能力を持っている神々たちだって、性格は気性が激しく人間よりも人間味に溢れているのだから、案外厳格な神様の方が少ないのかもしれない。
死んだことは経験あるけれど、そんな感じだったから死についてはよくわかっていない。
だから、死が怖いかどうかと言われたら、過去形の言い方で申し訳ないけれど、そんなに怖くなかったと言うだろう。
でも、蜂は怖い、怖いんだ。
僕は心臓の高鳴りと共に、自分の感情が激しく揺れ、パニックになって、泡を吹いて、白目を向いて、とても勇者とは言えない情けない姿で直立しながら後ろへ倒れかかった、その時―――
―――スキル発動『明鏡止水』
あのギャルっぽい女神の声が聞こえた。
すると、僕は暗闇の中で、水面に立っていた。下の水面を見ると、濁りのない綺麗な水面はまるで鏡のようで、深淵を覗こうとする転生後の僕の顔が映っていた。その顔は冷静で、自信に満ち溢れていた。その顔は英傑の顔立ちで、勇者の顔だった。
僕は我に返る。
目の前にはこの森の中で、最速を争う僕の天敵のキラービーが数十匹。
けれど、勇者の器であり、類まれなる動体視力があるユーゴが負の感情で揺れる感情を抑え、集中すれば、キラービーたちはスローモーションに見えた。
まるで、FPSのチュートリアルのような状況。
圧倒的不安定な体制であったけれど、「死」はどこかへ行ってしまった。
(どっちにするかな?)
僕は剣の風圧でキラービーたちを吹き飛ばすか、それとも全てを一匹ずつ倒すか悩んだ。風圧の方が圧倒的にらくだけれど、ゲーム性は全くない。
(よし、やっぱり)
剣を掴み、抜刀のまま切り付けてもよかったけれど、いったん剣を抜いて、肘を引き剣先をキラービーたちに向ける。風圧を出さないようにしても瞬時に構えたせいで僕に向かってきたキラービーたちの速度が一気に遅くなり、0もしくはマイナスになって逆方向に進もうとしている。
(ぶっ飛ぶ前に、ぶっ刺しきるっ)
フェンシングのようなけんではないから扱いずらいけれど、僕は剣先でキラービーたちを刺していく。力は込めない。込めてしまえばしまえば、僕の身体は起き上がって、距離が近くなりすぎて刺しずらくなるからだ。身体は脱力し、腕だけの力で素早さ重視で。次々にキラービーを刺していく。圧倒的な攻撃力と機動力を持っていても、しょせんは虫。防御力がないので、簡単に絶命させていく。
「ラストっ」
メインディッシュのように一番楽な位置である真ん中のキラービーを刺した。
集中力が切れるとともにいつもどおりのスピードで僕は地面に倒れた。
空は曇り空だったけれど、まぁ、気分は晴れやかだった。
バタバタバタッ
「えっ」
満足していた僕だったけれど、当然のキラービーの死骸が僕の周りに落ちて来た。
ピトッ
そして、僕の鼻の頭にキラービーが落ちた。
「いっ、いやあああああああああああっ」
僕は制御せず、倒れたまま下段切りをしてしまい、その斬撃でハチの巣を含めた木々たちが切れて飛んでいき、その斬撃は天まで届き、雲を切り裂いた。眩しい光が僕を照らしていたけれど、明鏡止水のスキルの効果が切れて、再び白目で泡を吹いて倒れてしまった。
僕がハチへのトラウマを克服するのはもっと先の話のようだ。
僕は技『刺蜂(しほう)』を手に入れた。
僕はスキル『明鏡止水』の熟練度が1上がった。
原因は過労死。
痛みを感じることはなく、気を失っているうちに死んでいた。
でも、ギャルっぽい女神が力を使ってくれたからようだったので、普通の過労死はもっと苦しいかもしれない。あぁ見えて、あの女神、見た目や口ぶりは軽そうだったけれど優秀だったのかもしれない。まぁ、ギリシャ神話の様々な能力を持っている神々たちだって、性格は気性が激しく人間よりも人間味に溢れているのだから、案外厳格な神様の方が少ないのかもしれない。
死んだことは経験あるけれど、そんな感じだったから死についてはよくわかっていない。
だから、死が怖いかどうかと言われたら、過去形の言い方で申し訳ないけれど、そんなに怖くなかったと言うだろう。
でも、蜂は怖い、怖いんだ。
僕は心臓の高鳴りと共に、自分の感情が激しく揺れ、パニックになって、泡を吹いて、白目を向いて、とても勇者とは言えない情けない姿で直立しながら後ろへ倒れかかった、その時―――
―――スキル発動『明鏡止水』
あのギャルっぽい女神の声が聞こえた。
すると、僕は暗闇の中で、水面に立っていた。下の水面を見ると、濁りのない綺麗な水面はまるで鏡のようで、深淵を覗こうとする転生後の僕の顔が映っていた。その顔は冷静で、自信に満ち溢れていた。その顔は英傑の顔立ちで、勇者の顔だった。
僕は我に返る。
目の前にはこの森の中で、最速を争う僕の天敵のキラービーが数十匹。
けれど、勇者の器であり、類まれなる動体視力があるユーゴが負の感情で揺れる感情を抑え、集中すれば、キラービーたちはスローモーションに見えた。
まるで、FPSのチュートリアルのような状況。
圧倒的不安定な体制であったけれど、「死」はどこかへ行ってしまった。
(どっちにするかな?)
僕は剣の風圧でキラービーたちを吹き飛ばすか、それとも全てを一匹ずつ倒すか悩んだ。風圧の方が圧倒的にらくだけれど、ゲーム性は全くない。
(よし、やっぱり)
剣を掴み、抜刀のまま切り付けてもよかったけれど、いったん剣を抜いて、肘を引き剣先をキラービーたちに向ける。風圧を出さないようにしても瞬時に構えたせいで僕に向かってきたキラービーたちの速度が一気に遅くなり、0もしくはマイナスになって逆方向に進もうとしている。
(ぶっ飛ぶ前に、ぶっ刺しきるっ)
フェンシングのようなけんではないから扱いずらいけれど、僕は剣先でキラービーたちを刺していく。力は込めない。込めてしまえばしまえば、僕の身体は起き上がって、距離が近くなりすぎて刺しずらくなるからだ。身体は脱力し、腕だけの力で素早さ重視で。次々にキラービーを刺していく。圧倒的な攻撃力と機動力を持っていても、しょせんは虫。防御力がないので、簡単に絶命させていく。
「ラストっ」
メインディッシュのように一番楽な位置である真ん中のキラービーを刺した。
集中力が切れるとともにいつもどおりのスピードで僕は地面に倒れた。
空は曇り空だったけれど、まぁ、気分は晴れやかだった。
バタバタバタッ
「えっ」
満足していた僕だったけれど、当然のキラービーの死骸が僕の周りに落ちて来た。
ピトッ
そして、僕の鼻の頭にキラービーが落ちた。
「いっ、いやあああああああああああっ」
僕は制御せず、倒れたまま下段切りをしてしまい、その斬撃でハチの巣を含めた木々たちが切れて飛んでいき、その斬撃は天まで届き、雲を切り裂いた。眩しい光が僕を照らしていたけれど、明鏡止水のスキルの効果が切れて、再び白目で泡を吹いて倒れてしまった。
僕がハチへのトラウマを克服するのはもっと先の話のようだ。
僕は技『刺蜂(しほう)』を手に入れた。
僕はスキル『明鏡止水』の熟練度が1上がった。
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