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俺は死ぬ気で働いた。
病気の父ちゃんや母ちゃん。弟や妹のため。
そして、俺を待っている仲間や、お客様のため。
「おいっ、及川っ!!! まだ、できんのかぁっ!!?」
怒号で俺を待ってくれている上司。期待は大きい。
なんなら、俺がいなくなったら、この会社はつぶれてしまう。そうしたら、仲間やその家族が路頭に迷ってしまう。俺は、身体が悲鳴を上げたのも無視して働き続けた。
(くっ・・・・・・っ、持ってくれ。俺の腕・・・・・・」
キーボードを叩く手は腱鞘炎なんてすでに超えていた。腱鞘炎を超えると、嘘みたいに手が軽くなり、痛みもなくなっていくのだが、それを過ぎると地獄のような痛み、そして、最後にはパンパンに腫れて、自分の腕じゃないようになる。
パンッ!!!!
「よしっ、できましたっ!!!」
送信ボタンを押して、上司を見る。
「誤字あるやろが、やり直せっ!!!」
「はいっ!!」
土日は日が落ちる前に帰らせてもらっていて、週七日労働。まっ、当然。だって、俺はヒーローの中のヒーロー。みんなが寝静まった夜に働くだけのヒーローや、日曜の朝だけ働くヒーローとはわけが違う。もう、連勤で徹夜三昧でどれくらい時間が経ったのかわからない。
「今度こそ、できましたっ!!!」
もう一度文章を再チェックするのだが、目がちかちかして、文字が文字に見えなくなりそうになったり、ピントが合わない。けれど、俺はヒーローだ。意識も持っていかれそうになったが、もう一度送信ボタンを押す。
「よしっ!!! 今日は帰っていいぞ。ちゃんと、定時出勤しろよっ!?」
時計を見ると、深夜2時。終電だってもうない。
「はいっ!!」
上司が帰るのを見送って、俺は机に思いっきり、椅子に寄りかかると、そのまま床に倒れた。
「ふぃーーーーっ。やったぜ」
痛みなんかない。まぁ、痛かったとしても、サヨナラ満塁ホームランを打って手洗い祝福を受けているようなものだから。全然痛くない。
「さてと・・・・・・寝ますか」
本当は風呂も入りたいし、今日はタクシーを使ってもいいと思った。だけど、今寝るのが、すんげぇ気持ちいいのは間違いない。
「・・・おやすみ」
俺の至福の時間。
それは睡眠。
(あぁ・・・・・・幸せ・・・・・・)
寝る瞬間、どっと疲れを感じたけれど、睡眠に入るとその疲れから解放されて行くのが溜まらなかった。
けれど、この眠りがこの世でする最後の睡眠になるとはこの時の俺は想像もしていなかったし、「自分、そうなるで?」なんて言われても全く信じる余裕も体力も無かった。
病気の父ちゃんや母ちゃん。弟や妹のため。
そして、俺を待っている仲間や、お客様のため。
「おいっ、及川っ!!! まだ、できんのかぁっ!!?」
怒号で俺を待ってくれている上司。期待は大きい。
なんなら、俺がいなくなったら、この会社はつぶれてしまう。そうしたら、仲間やその家族が路頭に迷ってしまう。俺は、身体が悲鳴を上げたのも無視して働き続けた。
(くっ・・・・・・っ、持ってくれ。俺の腕・・・・・・」
キーボードを叩く手は腱鞘炎なんてすでに超えていた。腱鞘炎を超えると、嘘みたいに手が軽くなり、痛みもなくなっていくのだが、それを過ぎると地獄のような痛み、そして、最後にはパンパンに腫れて、自分の腕じゃないようになる。
パンッ!!!!
「よしっ、できましたっ!!!」
送信ボタンを押して、上司を見る。
「誤字あるやろが、やり直せっ!!!」
「はいっ!!」
土日は日が落ちる前に帰らせてもらっていて、週七日労働。まっ、当然。だって、俺はヒーローの中のヒーロー。みんなが寝静まった夜に働くだけのヒーローや、日曜の朝だけ働くヒーローとはわけが違う。もう、連勤で徹夜三昧でどれくらい時間が経ったのかわからない。
「今度こそ、できましたっ!!!」
もう一度文章を再チェックするのだが、目がちかちかして、文字が文字に見えなくなりそうになったり、ピントが合わない。けれど、俺はヒーローだ。意識も持っていかれそうになったが、もう一度送信ボタンを押す。
「よしっ!!! 今日は帰っていいぞ。ちゃんと、定時出勤しろよっ!?」
時計を見ると、深夜2時。終電だってもうない。
「はいっ!!」
上司が帰るのを見送って、俺は机に思いっきり、椅子に寄りかかると、そのまま床に倒れた。
「ふぃーーーーっ。やったぜ」
痛みなんかない。まぁ、痛かったとしても、サヨナラ満塁ホームランを打って手洗い祝福を受けているようなものだから。全然痛くない。
「さてと・・・・・・寝ますか」
本当は風呂も入りたいし、今日はタクシーを使ってもいいと思った。だけど、今寝るのが、すんげぇ気持ちいいのは間違いない。
「・・・おやすみ」
俺の至福の時間。
それは睡眠。
(あぁ・・・・・・幸せ・・・・・・)
寝る瞬間、どっと疲れを感じたけれど、睡眠に入るとその疲れから解放されて行くのが溜まらなかった。
けれど、この眠りがこの世でする最後の睡眠になるとはこの時の俺は想像もしていなかったし、「自分、そうなるで?」なんて言われても全く信じる余裕も体力も無かった。
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