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「ふふふっ」
白川桜はトートバックを大事そうに胸に抱えながら、独り笑ってしまう。
「あぁ、約束された勝利・・・早く帰ってやらねば」
桜はバックをぎゅっとして、歩く足を速める。
彼女が大事そうに抱えているバックの中には今日発売の乙女ゲーム「吟遊詩女」が入っている。
キャッチフレーズは「動物好き必見。モンスター達とモフモフしながら旅に出よう」
ゲーム制作会社は前作で桜を号泣させた「キャリーフラワー」。その会社の新作でモンスター育成要素まであれば、動物好きの桜は買わないという選択肢は無かった。
桜が天を仰ぐと、青空に雀たちが飛び立つ。気分が高揚した桜には白いハトに見えて、自分の新たな人生のスタートを祝福しているように感じた。
「あっ、わんちゃんだ」
桜は飼い主のお姉さんには一切目もくれず、リードで繋がれたかわいいダックスフンドに近寄り、しゃがんでダックスフンドの頭を撫でる。
「ここか、ここがええんかぁ?」
今度はダックスフンドの首のあたりをくすぐると、ダックスフンドの気持ちよさそうな顔をしたのを見逃さなかった桜は重点的にその場所を擦る。すると、次第にダックスフンドは仰向けになり服従のポーズを取って、もっと撫でて欲しいとアピールする。
「あらあら、この子がこんな風になるなんて初めて見たわ」
飼い主のお姉さんが少し驚いて声を漏らすが、桜はそんな言葉は耳に入らず、
「こちょこちょこちょこちょ・・・・っ」
両手でお腹を擦っていくと、
「クゥーーーンッ」
ダックスフンドが切ない顔をして、パタッと倒れた。
「ふぅ・・・っ。また、きゃわいい子を愛でてしまった・・・」
桜も達成感を感じながら、額を拭った。
「チョコちゃんっ!!!?」
飼い主はダックスフンドに声を掛けながら揺らすと、疲れ果てたダックスフンドは舌を出しながら、息を荒くしていた。
「さらばっ!!!」
そう言って、桜は走り出す。お姉さんは動揺していたけれど、飼い犬の方が心配でそれどころじゃなかった。
桜にとって、動物は可愛くて仕方ないけれど、現実世界の学校はつまらなかったし、キャリーフラワーの創り出す世界はとても綺麗で、モンスターも大好きな桜は早く物語の世界に行きたくて仕方がなかった。
「あぁ、早くペガサスに乗って王子様とデートしたい・・・なっ・・・」
桜は足を止める。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
体育でときどき馬鹿にされるくらい運動神経がない桜はまだ5分も経っていないのに、疲れて電柱に寄りかかる。日頃、乙女ゲームをやり込んだり、動画サイトで犬や猫はもちろん数多くの動物動画を見ながらゴロゴロしているのを少し反省しつつも桜はなんとか顔をあげる。
「にゃあっ」
「あっ、オスのミケネコたんだっ!!!」
脇道からひょいっと出てきた茶色と白と黒の毛をした猫。その顔を見て瞬時に桜は指さして興奮して声を出す。腐女子だと陰で噂されている彼女だって、一瞬でその猫の性器に目が行ったわけではなく、動画も含めて数千万匹の猫を見て来た経験則でその猫の顔を見ただけでオスだとわかったのだ。そして、なぜわざわざオスだと叫んだかというと、知っての通りミケネコのオスはとても希少で、3万分の1の確率とも言われており、動物好きな桜も実物を初めて拝むことができたので、嬉しさのあまりそう叫んでしまったのだ。
ミケネコは桜のその態度を見て、びっくりして、道路へと逃げようとした。
「あっ、待ってっ!!!」
道路に逃げていくミケネコを見送りつつも、仕方ないと諦めた桜だったけれど、向こうから法定速度を到底守っているとは思えないスピードの車高の低いスポーツカーが向かってきていた。普段なら運動神経の悪い桜だったけれど、動物がらみになるととんでもない反射神経が生まれる。
「ミケタンっ!!!」
桜は猫よりも早いスピードで猫を引っ張り歩道へ投げた。桜のおかげで猫は歩道へと飛んでいき、桜は安心したようにほっとした顔をした。けれど、スポーツカーは激しいブレーキ音を立ててブレーキがかかりつつも、吸い込まれるように桜に向かっていき・・・吹っ飛ばした。
白川桜はトートバックを大事そうに胸に抱えながら、独り笑ってしまう。
「あぁ、約束された勝利・・・早く帰ってやらねば」
桜はバックをぎゅっとして、歩く足を速める。
彼女が大事そうに抱えているバックの中には今日発売の乙女ゲーム「吟遊詩女」が入っている。
キャッチフレーズは「動物好き必見。モンスター達とモフモフしながら旅に出よう」
ゲーム制作会社は前作で桜を号泣させた「キャリーフラワー」。その会社の新作でモンスター育成要素まであれば、動物好きの桜は買わないという選択肢は無かった。
桜が天を仰ぐと、青空に雀たちが飛び立つ。気分が高揚した桜には白いハトに見えて、自分の新たな人生のスタートを祝福しているように感じた。
「あっ、わんちゃんだ」
桜は飼い主のお姉さんには一切目もくれず、リードで繋がれたかわいいダックスフンドに近寄り、しゃがんでダックスフンドの頭を撫でる。
「ここか、ここがええんかぁ?」
今度はダックスフンドの首のあたりをくすぐると、ダックスフンドの気持ちよさそうな顔をしたのを見逃さなかった桜は重点的にその場所を擦る。すると、次第にダックスフンドは仰向けになり服従のポーズを取って、もっと撫でて欲しいとアピールする。
「あらあら、この子がこんな風になるなんて初めて見たわ」
飼い主のお姉さんが少し驚いて声を漏らすが、桜はそんな言葉は耳に入らず、
「こちょこちょこちょこちょ・・・・っ」
両手でお腹を擦っていくと、
「クゥーーーンッ」
ダックスフンドが切ない顔をして、パタッと倒れた。
「ふぅ・・・っ。また、きゃわいい子を愛でてしまった・・・」
桜も達成感を感じながら、額を拭った。
「チョコちゃんっ!!!?」
飼い主はダックスフンドに声を掛けながら揺らすと、疲れ果てたダックスフンドは舌を出しながら、息を荒くしていた。
「さらばっ!!!」
そう言って、桜は走り出す。お姉さんは動揺していたけれど、飼い犬の方が心配でそれどころじゃなかった。
桜にとって、動物は可愛くて仕方ないけれど、現実世界の学校はつまらなかったし、キャリーフラワーの創り出す世界はとても綺麗で、モンスターも大好きな桜は早く物語の世界に行きたくて仕方がなかった。
「あぁ、早くペガサスに乗って王子様とデートしたい・・・なっ・・・」
桜は足を止める。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
体育でときどき馬鹿にされるくらい運動神経がない桜はまだ5分も経っていないのに、疲れて電柱に寄りかかる。日頃、乙女ゲームをやり込んだり、動画サイトで犬や猫はもちろん数多くの動物動画を見ながらゴロゴロしているのを少し反省しつつも桜はなんとか顔をあげる。
「にゃあっ」
「あっ、オスのミケネコたんだっ!!!」
脇道からひょいっと出てきた茶色と白と黒の毛をした猫。その顔を見て瞬時に桜は指さして興奮して声を出す。腐女子だと陰で噂されている彼女だって、一瞬でその猫の性器に目が行ったわけではなく、動画も含めて数千万匹の猫を見て来た経験則でその猫の顔を見ただけでオスだとわかったのだ。そして、なぜわざわざオスだと叫んだかというと、知っての通りミケネコのオスはとても希少で、3万分の1の確率とも言われており、動物好きな桜も実物を初めて拝むことができたので、嬉しさのあまりそう叫んでしまったのだ。
ミケネコは桜のその態度を見て、びっくりして、道路へと逃げようとした。
「あっ、待ってっ!!!」
道路に逃げていくミケネコを見送りつつも、仕方ないと諦めた桜だったけれど、向こうから法定速度を到底守っているとは思えないスピードの車高の低いスポーツカーが向かってきていた。普段なら運動神経の悪い桜だったけれど、動物がらみになるととんでもない反射神経が生まれる。
「ミケタンっ!!!」
桜は猫よりも早いスピードで猫を引っ張り歩道へ投げた。桜のおかげで猫は歩道へと飛んでいき、桜は安心したようにほっとした顔をした。けれど、スポーツカーは激しいブレーキ音を立ててブレーキがかかりつつも、吸い込まれるように桜に向かっていき・・・吹っ飛ばした。
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